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転生しても私は私  作者: 柳銀竜
ラピス編
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ラピス怒る!

 

 会議室を出ていた宰相が戻って来る。


 戻って来た宰相は、人間ヒューマンの少女一人と男性二人。ユリナとシュエとグレルを連れて来た。


 彼らの後ろには、気の弱そうな白い髪に白眼をした少女と、スラリとして切り裂かれそうな美しさを持つ、青い髪に青い目をした少年。その後ろには軍人風の引き締まった体躯をもつ、赤い髪に赤い目をした少年が続いていた。


 ユリナ達は会議室に入ると、ペコリと頭を下げてから口を開いた。


「初めまして。私は ユリナ・ウイング。

 ラピスの契約者です」


「私はシュエ・メチェーリ。アルジェントの契約者です」


「俺はグレル・アルシル。オールの契約者です」


 次々に自己紹介をするユリナ達を、長達はジロジロ見る。


 視線がユリナに止まる。すると長達の目が鋭くなった・・初っぱなから嫌われてる様である。


「・・噂は聞いていますよ・・二人も恋人がいると・・」


「お前も売女か・・」


 地の族長は、軽蔑するような視線をユリナに送り、火の長はユリナを売女扱いだ・・しかも・・


「お前らは・・殺気を押さえろ!」


 長達が殺気を放つモノだから、シュエとグレルが臨戦態勢になっている。長達は負けはしないだろうが、他国の上位者を殺害しては不味い。


 竜王が止めるが、皆不満そうだ・・


 そんな長達の中で、水の長だけは真っ直ぐラピスを睨み付ける水の長は、瞳が金に光っていて、かなりご立腹のようだった。


「ラピス。我らの宝を奪うのですか?

 アルジェントは、我が娘と婚姻し長を族長を次ぐべき者なのです。貴女ごときが、独占して良い者ではありません」


 水の長に非難されたラピスは、押し黙る。自分が彼等に釣り合わない事ぐらい分かっている。それに・・自分は二人を独占したくてしているわけではない。


 ムッとするラピスの後ろにいたアルジェントが、ラピスを守るように前に出た。そして、水の族長に向かって語りかける。


「私は水の長の姫と、婚姻するつもりはありません。私はラピス以外・・愛せない」


 アルジェントはそう言って、ラピスを見る。そんなアルジェントをラピスは冷めた目で見た。


欠片も嬉しくない。


アルジェントの気持ちを聞いた火の長は、オールを凝視する。そして意を決して口を開いた。


「オールもか?お前は騙され・・」


「俺もラピスを愛してる!ラピス以外と結婚なんかしない!」


 火の長が騙されてる!と言おうとしたが(騙してない!!)オールは全く聞いていない。


 二人が宣言すると、族長達はラピスを睨む。


散々侮辱され睨まれたラピスは、ついに怒りが爆発した。


「・・あんた達のせいだ!!」


 ラピスはユラリと、幽鬼のように生気のない顔で、アルジェントとオールの前に出る。


 そしてラピスは、クルリと振り向くとアルジェントとオールを見た。


彼女の目は金色に光っている。


「あんた達のせいで私は!!皆にハブられて虐められて、親にも親族にも見捨てられ・・悪女なんて言われる・・

 ねぇ・・水の長?貴方が進めてきた縁談の男性。皆恋人が要るんだよ?」


 それを聞いた水の長は、怒りに任せてあり得ないと叫んだ。


「皆 誇り高き水の一族の上位竜種だそ!妾なんて・・そんな恥知らずな事をするはずがない!」


 恋人と結婚出来ないからと、形だけの 妻を貰い、恋人を妾として囲う者もいるにはいるが、あまり誉められた状況ではない・・


 それにこの場合。高い確率で妻は殺され良くて下働き、悪くて他国に奴隷とし売られる。


 同族を売り飛ばすなど、誇り高い竜種がする事ではない。


「じゃあ知ってるんですか?上位竜種に嫁いだ中位竜種が、どんな扱いを受けるか知ってるんですか?奴隷よ!いや。性奴隷かしら・・一生家から出られずに、夫の本命の女から虐められて生きていくのよ!」


 ・・そんな事は言われずとも知っている!!

 しかし・・


「!あの者達は・・」


 彼等はラピスと結婚する事に一切嫌な顔をせず、笑顔で受け入れていた。


 悪し様に扱うわけがない!


「貴方には良い顔してただけよ!

 私は出ていく!アルジェントとオールは貴方が説得して!私は関係ない!!」


 ラピスは怒鳴りながら叫ぶ。


 実際。アルジェントとオールがラピスから離れても、ラピスは笑顔で見送るだろう・・寧ろ喜ばしい。


 それくらい、ラピスは二人に嫌悪感を抱いている。


 ラピスはハアハア息を切らせて言葉を切る。


 大人しく気の弱いラピスは、人にここまで怒鳴ったのは初めてだ。怒鳴った事実が怖くて泣きそうになっている。


 ユリナはそんなラピスに近づき、宥めるような手つきで頭を撫でてから、シュエ達の前に出る。


 そして、炎華を真っ直ぐ見て口を開いた。


「・・陛下・・発言宜しいですか?」


「許可する」


 炎華がコクリと頷くと、ユリナは長達の方を見て話始めた。


「族長様方。貴方方はラピスの気持ちなんて・・欠片も分からないでしょう?

 貴殿方に何を言っても、結局。悪いのはラピスと言う結論に達するだけですよね?

 ですから陛下。前に小人族の町で、私にした記憶を覗く魔術を使ってはどうでしょう?

 あの魔術はどういう術ですか?」


 炎華はうーんと考え込み、暫くして術について説明した。

何となく、使える感じの魔術は口で説明するのが難しい。


「対象に魔力を流し入れて、記憶を探って見る。というやつだ」


 炎華はユリナに簡単に説明する。


 その説明を聞いて、ユリナはニコリと頷いた。


「なら。対象にながした魔力を回収する時に、その魔力の中に記憶を写すって事ですよね」


「ああ。概ねそんな感じだ」


 炎華が頷く。


 するとユリナは、ラピスの手を引き竜王の前までくると、炎華にラピスを差し出した。

ラピスはなされるがままに、炎華の前に立ち尽くす。


 状況が理解出来ない!


「じゃあ・・陛下。ラピスの記憶を写してください」


「え?・・分かった」


 ユリナにそう言われた炎華は、困惑しながらラピス頭を掴み、彼女の記憶を魔力に写す。


「記憶を写しました?」


「ああ。今な」


 少し時間を置いて、ユリナが炎華に聞くと炎華は頷いた。

 それを確認してから、ユリナは炎華にニコリと笑って・・・・・


「ならその魔力を、ここに出して下さい」


 ユリナは風の魔術で、直径一メートル位の球体を作り出し、そこに記憶入りの魔力を入れてくれと炎華に言う。

モノや人に注ぐのではなく、他人の魔術に魔力を注いだ事などない。正直・・どうすれば出来るか分からない。


「出来ないんですか?」


 一向に魔力を注がない炎華に、ユリナが訪ねる。

すると炎華は、やけくそ気味にユリナに叫んだ。


「!!出来るさ!・・くっ・・よし!出来たぞ」


 竜はプライドが高い。しかも彼は竜種を束ねる竜王だ!


 口が裂けても、出来ないなんて言えない・・


 ガムシャラにやってみたが・・出来てしまった。


 ちょっと自分の才能が怖い。


「うわっおっ!本当に出来た!」


「おい!」


 炎華が魔力を注ぐのに成功すると、ユリナも驚いていた。彼女は適度に言ってみただけらしい・・くそっ!!


 炎華が心の中で憤っているのに、全く気づかないユリナは、予想外に上手く事が進んでいる事に喜び皆に笑いかけた。


「じゃあ 皆さん。これに触って下さい」


 ユリナはそう言うと。球体をに手を置く。

 そしてシュエ、グレル、アルジェント、オールの順で手を置いていき、炎華もそれにならう。


 ラピスは、自分の記憶を見る必要はないので、ユリナの手を握りしめて一歩後ろに下がっていた。まだ怖いらしい。


 竜王炎華が、ユリナの魔術に手を置いてユリナの指示に従っているのに、格下の自分達が従わない分けにはいかない。


 地の長と水の長。それから火の長が無言で球体に触れる。


 しかし、約一命動かない者がいた・・


 爆睡している風の長だ!こんなに騒いでいるのに気持ちよさげに寝ている・・


「おい!!起きろよ風の長!!」


 火の長がボカッと片手で、風の長を殴る。殴られてやっと目を覚ました風の長は、大きなアクビをして火の長を見た。


「ふあくっ・・会議終わっうわっ!」


 火の長は、のんびりした声を出す風の長をグイッ引っ張り球体に手を置かせた。 風の長は状況を理解できないのか、回りを見渡している。


 何だか分からないが・・まあいいか・・

 風の長は、大人しく火の長に従った。


「準備出来たぞ。どうするんだ」


「こうするんですよ」


 リーガルがユリナに問いかけると、ユリナは球体の魔力を増幅させて球体に触れた者達の体に送り込む。


この球体は、増幅魔術だったらしい・・・


 そして・・ユリナ達の眼前に、ラピスの記憶が流れ始めた・・・



ラピスの怒りでした。

次はラピスちゃんの記憶をみます!

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