竜王陛下
此処で待っているのは、竜王・・という事は・・・
「・・あんた・・竜王だったんですか!」
目の前の青年は、椅子に座ったままユリナ達に向かってニヒルに笑う。
そして、可笑しそうに口を開いた。
「ああ。俺は当代竜王で名は炎華と言う・・所で・・・ああ・・やはりお前か・・・・・ラピス」
竜種の青年・・竜王炎華はユリナの腕の中に居るラピスを見て呟いた・・え?
「やはり?」
何故分かったのだろうか・・・
ユリナが不思議に思っていると、炎華が苦笑いしながらユリナに答えた。
「・・中位竜は、大体。人間となぞ契約しない。
よほどヒューマンが凄い奴か、竜種の領域から出たい竜だけだ」
・・と言う事は・・
ラピスは、竜王を見ながら口を開いた。
「私を知ってるんですか!?」
ラピスがそう言うと、炎華は苦虫を噛み潰した様な目でラピスを見る。
「知らん訳 無いだろう?上位竜種の間じゃあ有名だぞ?男二人をたぶらかす悪女ってな」
・・悪女・・
ラピスはブルブル震えだし、ユリナにしがみつきながら悲鳴を上げる。
「・・陛下!早く許可下さい!私・・死にたくない!」
ユリナは、ラピスの取り乱し様に驚いた・・・え?
「・・そんなに差し迫ってるの?」
ユリナが、懐で丸まっているラピスを見る。すると、ラピスは泣きそうな顔でユリナにすがり付いて叫んだ。
「差し迫ってるよ!悪女って殺しても罪にならないんだよ!私・・女達に殺される!」
ユリナはラピスの台詞に驚愕した・・・罪にならなのかよ!
「?!罪にならないの!マジ!」
「マジだよ!陛下!!貴方に慈悲があるなら今すぐ許可を下さい!今すぐ!」
ラピスは竜王に叫ぶ・・直ぐに逃げないと殺される!!
竜王はそんな取り乱すラピスを、炎華は申し訳なさそうに見ながら頬をかいて口を開いた。
「いやな・・お前の許可は簡単に出せるんだが・・」
竜王は、チラリとシュエとグレルの後ろで成り行きを見ている、青年竜種達を見て息を吐いた。
ラピスの許可は出せるが、青い青年。アルジェントと、赤い青年。オールの許可は簡単に出せない。
竜王の気持ちを察したアルジェントが、強い口調で叫ぶ。
「ラピスが出ていくなら、俺も出ていく!」
「俺もだ!」
アルジェントが叫ぶと、オールも叫ぶ。
意思はかたいらしい・・
・・ならば・・
「・・族長会議するか・・・」
竜王が疲れたように呟くと、すぐ横で控えていた側近。宰相が慌てて止めようとする。族長会議は滅多に開かれない。
ラピスごときに、開いて良いモノではない。
「陛下!族長会議ですか!そんな事をしなくても説得して・・」
「出来るのか?」
宰相は竜王に問われて、うっと言葉に詰まる。
「お前に、二人を説得出来るのか?」
竜王が、アルジェントとオールを指差して宰相に問いかける・・
自分より強い彼らに、命令など出来ない・・
「くっ・・無理です・・」
宰相は悔しそうに歯噛みする。
竜王は、そんな宰相を哀れんだ目で見ながら呟いた。
「無理だろう?」
・・そもそも・・
竜王の言葉すら聞かない二人を、自分が説得するのは無理がある。
ここは、族長達の知恵を借りるしかない。
宰相は部屋を横切り、部屋の扉を開けてから竜王に頭を下げて疲れたように言葉を吐いた。
「・・族長達に伝令を出してきます・・・・」
バタン・・扉が閉まると、竜王はユリナ達を見ながら口を開いた。
「さて・・お前達は・・」
竜王が最後まで話終わらない内に、ラピスが半泣きで竜王に叫ぶ。
「・・そうだ!牢屋!!私を牢屋に入れてください!牢屋なら殺されずにすみます!お願いです!」
・・かなり追い詰められている様だ・・・
「落ち着け!護ってやるから・・お前らは殺気を抑えろ!」
竜王がラピスを撫でて慰めていると、アルジェントとオールが激しい殺気を放ちながら、竜王に叫ぶ。
「陛下は・・ラピスが好きなのか」
「ラピスは陛下には渡さない!」
・・欠片も興味はねぇよ!!
竜王はそう心の中で叫びながら二人を宥める・・めんどくせぇ!!
竜王陛下でした!
次は個性豊かな族長達です!




