ケントルム王の決意
小人族の女性。ミミルの結婚式が無事終わり、ユリナ達はケントルム城に戻って来た。
本来の目的。国宝を返却するためだ。
ユリナ達は謁見を申し出て、それは受理されたのだが・・
「・・ケントルム王陛下・・疲れてますね」
ユリナ達が王の執務室に行くと、目に隈を作ったケントルム王が、書類を片手に持ちながら座っていた。
「誰のせいだと思っている!」
ケントルム王は、ユリナをギロリと睨みながら怒鳴る。
しかし・・怒鳴られたユリナは、まったく動じず(怒ったタンペット先生の方が怖い)ニコニコ笑って口を開いた。
「陛下のせいですね」
「はあ?!」
何言ってんだこいつ!!
ケントルム王は、ジロリとユリナを睨む。
どう考えても・・自分が睡眠時間さえ削られているのは、ユリナが流した噂話のせいだ!!
しかし・・ユリナはニコニコ笑って・・
「だって。ケントルム王陛下が、被害が出る前に対策をしていれば・・これ程苦情は出なかったはずですよ?」
「くっ!」
ケントルム王は、悔しそうに歯噛みしながらユリナを睨む。その通りなので反論出来ない。
ケントルム王が腹立たしげにユリナを見ると、ユリナニコニコ笑ってケントルム王に話しかけた。
さっさと用事を終わらせるために。
「そうそう・・今日は国宝。
オリハルコンの剣を返却に参りました。私達は、そのあと直ぐに国を出ます」
ユリナがニコニコ笑って言うと、ケントルム王はちょっと待て!とばかりにユリナに向かって口を開いた。
「直ぐにか?舞踏・・」
「国を出ます!!」
ケントルム王が離し終わらない内に、ユリナがズイッと前に出て力強く言い切った。
「・・舞踏会・・嫌なのか?」
ケントルム王が恐る恐る(ユリナの背後にいる二人が、殺気を放ち睨んでいる)ユリナに聞くと、ユリナは真っ直ぐケントルム王を見つめて口を開いた。
「・・もし過去に行けるなら・・舞踏会の文化を潰します」
・・存在すら消したい程嫌いらしい・・余程。舞踏会で嫌な目にあった事があるようだ・・
背後の二人が身分や顔共に極上なので、多分貴族令嬢達に嫌がらせでもされたのだろう。ユリナの背後の殺気が膨れ上がる・・これ以上・・ユリナを怒らせると命が危ない。
ケントルム王は、恐怖の中。ユリナにコクリと頷いてから口を開いた。
「・・そうか・・謁見の間を使えるように準備するから少し待て」
国の大事な国宝を、執務室ごときで返却してもらう訳にはいかない。
ユリナは不満顔だが、こればかりは譲れない。
ケントルム王が立ち上がると、王の横で立っていたケントルム国の宰相が、ユリナに近付いてきた。
「ユリナ様。ドレスに着替えて来てください・・下女の制服ではさわりがありますので」
ユリナは今、ケントルム国の下女の制服を着ている・・・・・馴染みすぎて・・・・着替えるのを忘れていた。
「あ!そうですね・・ん?私は平民なので、様はいりませんよ?」
ユリナが宰相にそう言う。
すると、宰相はなんとも言えない顔をしながら首を振った。
「・・いえ・・貴女を呼び捨てするなど恐ろしいですので・・」
宰相は、チラリとユリナの背後をみる。
ユリナの背後で、ずっと自分達を睨み付けているシュエとグレルは、執務室に入った瞬間から常に臨戦体制だ・・正直早く帰ってほしい。
「え?恐ろしい?」
ユリナは、目を丸くして背後を振り返った。
ユリナが振り返ると、二人は殺気を引っ込める。しかし・・再びユリナが前を向くと、此方を睨み付けてきた。
ユリナ第一主義者らしい・・
「いえ・・何でもありません」
余計な事を言えば命が危うい。
宰相は二人に対して、何も言わずに頭を下げた・・怖すぎて二人を直視出来ないからだ。
そしてシュエとグレルは、用はすんだとばかりにユリナの手を引いて、着替えるために別室に向かった。
数分後。
マッハで、謁見の間を使用できる状態に整え(侍女や女官達は涙目だった)国宝を恭しく掲げたユリナが口を開く。
「長らくお借りしていた国宝をお返しいたします」
「確かに」
ケントルム王がそう言うと、宰相が宝剣を受けとる。これで返却の儀式は終わりだ。
ケントルム王は王らしい、威厳に満ちた声でユリナ達にいい放った。
「退室を許可する」
「「「はっ!」」」
ユリナ達は一礼すると、謁見の間を後にした。
そして更に数時間後。
無事。濡れ衣を晴らしたユリナ達は馬車に乗り込んでいた。
その馬車の前で、ケントルム王と宰相が立っている。
ユリナ達を見送るためだ。
「では!皆様お世話になりました」
「ああ」
ユリナが馬車の中から、ケントルム王に向かって笑うとケントルム王も儚げに笑う。
・・大分お疲れなようだ。ならばもっと疲れさせてやろう・・
ユリナは、楽しそうにニヤリと笑ってから、ケントルム王に向かって話しかけた。
「陛下!そう言えば貴族の中に、上位竜種の奴隷を持っている方がいるらしいですよ?」
「!?何!下位なら分かるが上位竜種が!何故だ!」
ユリナの台詞に、ケントルム王は飛び上がる。
竜種はこの国では、かなりの影響力を持つ種族だ・・本気で不味い。
「まだ幼子らしいです」
竜種の幼子が、領地から出てくる訳がない!!
拐ったのかもしれない・・本気で不味い。
「誰だ!」
ケントルム王が、ユリナに詰めより犯人を教えろと叫ぶ。
・・早くしないと竜種に攻め込まれる!
「・・団長の息子さんです」
・・又もや・・あのバカの一族か!!
「クッソ!早く言え!宰相行くぞ!」
「はい!」
ケントルム王はユリナに悪態をついてから、宰相と一緒に城へ駆けていった。
その後ろ姿を見ながら、ユリナはニコリと笑いながら真剣な目をしなかがら呟く・・
「頑張ってくださいね陛下。国を保つ為に」
数日後・・・
団長の一族は、財産や爵位の全てを王に取り上げられ王都を追放に処された。
竜種の幼子は無事。親元に返り、犯人を教えると、竜種の親は追放された一族を連れていった。
その後。団長の一族がどうなったかは竜種しか知らない・・・
それから一月後。
ケントルム王は国中の貴族に向けて宣言する。
゛亜種族゛と言う言葉を使用禁にすると、亜種族は人間と外の種族を分ける言葉。人間が上位だと言っている様なものだ。
我が国は多種族国家。全ての種族に王がいる。それを忘れるなとケントルム王は宣言した。
この演説の効果が出るまでには、数十年はかかるだろう・・
気長に待てば、いつの日か・・・
ケントルム王の決意でした・・・・・
ケントルム王の行動が・・・・・実を結ぶのは彼の子供の治世になってからです・・・・・




