小人族の結婚式
ユリナが、ミミルの結婚式のためにビクビクしながら国境の町に来ると、町の小人族達が総出で待ち構えていた。
「ユリナさん!!すまねぇ!」
「石を投げて御免なさい!!」
「御免なさい!」
「ごめんなさい!」
「ごめんなさい!」
小人族達は、次々に謝罪の言葉を口にしながらユリナに頭を下げる。ミミルから全てを聞いた小人族達は、心底自分達の過ちを恥じた・・
何故。可笑しいと思わなかったのか・・・・・・
ミミルが、ヒューマンに言い寄られて迷惑しているから注意してくれ!と言っても無反応だったのにも関わらず、何故通報する前に、あの場に兵士達がいたのか・・
店の客はユリナ達しかいないのに、何故わざわざ厨房で殺されたのか・・
兵士達は一撃で斬り殺されているのに、何故夫妻は殴られた後が有るのか・・・
これだけ不審な状況で、何故兵士達を信じてしまったのだろうか・・
多分・・ユリナ達が外国人だったのが大きかった・・
言い訳にもならないが、彼らが出来るのは謝罪とおもてなし位だ・・だから・・・
「どんどん食ってくれ!」
「おかわりも沢山あるわよ!」
「この宝石どう?」
ユリナは怒涛の勢いで接待された。
・・しかし・・死ぬほど鬱陶しい・・
ユリナは、うんざりしながら食事を口に掻き込む。一人が大好きなユリナは、集団に囲まれてチヤホヤされるのが死ぬほど嫌いなのだ。
放置され・・ボッチになる方がありがたい。
「ありがとうございます・・でも・・もう寝ますね。お休みなさい・・」
まだ眠くは無いが、若干胃痛がする。
ユリナは早く此処から出たくて、小人族達にそう言うと寝室に向かい扉を閉めた。
ガチャンと、寝室の鍵が閉まると・・小人族達は狼狽えた。
何か粗相をしたのだろうか・・
そんな小人族達に、グレルはユリナの性格を教えてやり、只こういう場が苦手なだけだと慰めた。
シュエはホロー等せずに、無言でユリナについていっている。彼はマダ小人族を許していないみたいだ。
翌朝。
結婚式の当日に、昨日は悪かったと(小人族達は悪くない)小人族達が詫びの品を持って来た。
空のように棲んだ・・透けるように青い石に、美しい鳥の細工を施した髪飾り。海よりも深い青い石に、フェザードラゴン(鳥とドラゴンを混ぜたような生き物)の細工が施され、銀の鎖をつけたペンダント・・ガチでユリナ好みの品だった。
「綺麗だ・・いいのですか?貰ってしまって・・」
かなり値が張りそうな品だ。花嫁を差し置いて、自分が貰って良いのだろうか・・・
「ああ。ミミルを含む町人からの詫びの品だ!ユリナさんは、宴会のもてなしより・・・こっちの方が良いだろ?」
ユリナ心底嬉しそうに、小人族達に晴れやかに笑った。
「ありがとうございます!!」
それを見た小人族達は、やっとおもてなしが出来たと嬉しそうに笑った。
そして・・・・・
結婚式の会場(町の広場)にいくと、美しく着飾ったミミルが、少し照れ臭そうにはにかんでいた。
小人族の婚礼衣装は白らしく。まるで・・地上に舞い降りた天使みたいだった。
結婚式はシンプルで、御神体(金属で出来た小人族の仙人みたいな人形)に祈りを捧げて、卵形の白い石を二つに割り(後で鋭い所をヤスリで削り、ケガをしないようにするらしい)一つずつ手に取った。
例え離れていても、二人は一つという意味があるらしい・・
しかし・・
「綺麗だね・・夫婦そろって」
ミミルも美しいが、旦那も美形だ。
そして結婚式が無事終わり、祝いと言う名の飲み会が始まると・・
「ユリナ様!」
「あっ!走ると転ぶ!」
可愛いミミルが、トテトテとユリナに駆け寄ってきた。
ユリナ思わず叫ぶが、ミミルは全く聞いていなかった。
「来てくださったんですね・・良かった・・あっ!それも身につけてくださったんですね!」
ミミルはユリナの胸を見て嬉しそうに笑う。
ユリナの胸には、昨日。シュエ達に渡されたペンダントが光っていた。
ユリナはこれが、結構気に入っている・・
「ありがとうございます。大事にしますね」
ユリナがデレデレしながらミミルに笑う(シュエとグレルは若干・・不機嫌だ)
するとミミルは、涙ぐみながらユリナを見上げた。
「こちらこそ・ありがとうございます!
貴女方がいなければ、私は今頃。凌辱され・・下手をすれば殺されていましたから」
ユリナは涙ぐむミミルを優しく撫でながら、優しい口調で語りかけた。
「やっぱり・・私の情報に誤りはなかったみたいですね・・大丈夫です。
私は武力も知力もないけど、無駄に書物を読みアサリ、過去の偉人達の悪意に対する対応を熟知しています!
これからは、このような事がおきぬよう・・王が目を光らせるでしょう」
ユリナはニヤリと真っ黒い顔で笑う。
ミミルは、何故。たかが小人族の小娘の事件で、王が神経を尖らせるのか分からない・・・・・
「え?何故ですか?」
ミミルがユリナに聞くと、ユリナは楽しげに笑う・・・・・
「だって、今。死ぬほど大変な目にあっているでしょうからね」
ミミルは、ユリナの瞳の奥にある暗い光に、ブルリと震えた・・何か怖い。
「・・何をしたんですか?」
ミミルが不審げにユリナを見上げる。見るからに録な事はしてなさそうだ・・・
そんなミミルに、ユリナは悪戯っぽく笑った。
「秘密です!」
ミミルのような、純粋な女性には話せない。
ユリナとミミルが楽しく(楽しいのはユリナだけ)話していると・・・・・
「・・国中に噂をばら蒔いたのはお前か?娘」
豪奢な服(中国の民族衣装みたいな服)を着た。二十代位の男性が、ユリナとミミルに近づきながら話しかけてくる。
シュエとグレルは、男を刺激しないようにゆっくり近づいた。
そして、ユリナに寄り添い警戒しながら剣に手を添えた・・・・・
小人族の結婚式でした!
次は謎の男性が・・・・・




