断罪
ケントルム王の前で、小人族のミミルはひざまづきながら口を開いた。
「お初にお目にかかります!
私はミミルと申す者でこざいます。
食堂を経営していたルシュとカラグの娘です。
私は、両親が殺された場所に居ました・・・
母が戸棚に隠してくれたので・・・私は助かりましたが・・両親は・・」
ミミルはそう言うと、両親が殺された場面を思い出したらしく、泣きそうに顔を歪めた。
そんな彼女に、ケントルム王は優しく語りかける。
「ゆっくりでいい話せ」
ミミルは、ケントルム王に優しく語りかけられて幾分落ち着いたらい。
ミミルはホッとした顔で笑い。再び話始めた。
「はい・・実は私は、ある男性に妻になれと迫られていました・・私が断ると彼は・・店に嫌がらせを・・その後私は・・何度も何度も拐われかけ・・最後には・・」
ミミルは・・うつ向いて何かを堪える様な顔をする。
ミミルの話を聞いていたユリナは、うぁぁあと嫌そうな顔になった。
実は強盗ではなく、地球のストーカー殺人みたいな事件だったらしい・・
「その男は?」
ケントルム王がミミルに聞く。
その瞬間・・ミミルはバッと顔を上げた。
そしてクルリと後ろに振り返り、兵士達の集団に向かって指を指した。
「私にしつこく求婚してきたのは・・そこにいる団長です!」
ミミルの言葉を聞いたユリナ達が、ギロリと団長を睨み付ける。
濡れ衣をきせた、犯人はコイツらしい・・しかし・・・
ユリナは、ジロジロと団長を観察した。
四十近い汗臭いオッサンと、ロリ少女・・犯罪だ!!
しかし、団長は・・
「陛下!出鱈目です!私はそのような・・・・・」
団長はシラをきるつもりらしい。
しかし、冷や汗をかいている辺り・・道見ても図星だ。
ケントルム王は、往生際が悪い団長を睨み付けながら低い声で命令した。
「では宣言せよ。魔力を込めて」
「!?」
「出来ないのか?」
出来るわけがない・・しかし・・しなければ断罪されてしまう。
団長は覚悟を決めると、声に魔力を込めて宣言した。
「・・わっ我はこの娘に・・」
「何故。娘の名を言わない」
隊長と同じく・・誤魔化そうとしたらしい。
隊長は、主犯ではないので見逃されたが、団長も同じ扱いをするわけにはいかない・・
ケントルム王に睨まれた団長は、短く呻いた後。やけくそになりながら言い捨てた。
「!!くっ!我は小人族ミミルに妻になれと言った事等ない事を宣言します・・・うぐっイギッアアアアアアアアア」
団長が宣言すると同時に、団長の体かどんどん膨れ上がる。
そして・・・
団長は痛みにもがき苦しみ、凄まじい声を上げて破裂した・・
辺りには生臭い血の匂いと、団長の肉片が転がっている。
小人族の二人は、吐き気を押さえるように口元を抑えた。一般人にはかなりエグイ光景だ。
プロ(滅多に遭遇しない事例かもしれない)である兵士達すら、顔色を悪くしているのだから、吐かないだけ二人は凄い・・
ケントルム王は、団長の遺体を冷たく見下ろしてから隊長を静に呼んだ。
「・・国境兵士隊 隊長?」
「申し訳ありません!!団長に命令されて・・揉み消せと言われていたのです!!しかし行ってみると・・・皆が殺されていて!!」
隊長はズサッと床に額を擦り付ける。
そして、ケントルム王に洗いざらい吐いた。
やはり犯人は団長らしい。
団長は彼の叔父にあたるが、隊長はメイドの息子。妾腹なので団長に使用人のように扱われていたらしい。
家を出て兵士になったものの、団長の使用人扱いは続いた。
逆らえば、屋敷にいる幼い妹(父は老人なのに頑張った。母は嫌々だったのに)やメイドを続けている母が、どんな目に遭うか分からない。
屋敷を追い出されるのはまだ良い方で、奴隷や娼婦として売られる可能性もある。なので、命令を聞くしかなかったそうだ。
・・隊長が不憫だ・・
ケントルム王は、隊長の母を城の下女として雇う事を約束し、隊長は降格処分する事になった。
しかし彼は逆に喜び泣いて、ケントルム王に泣きながら・・ありがとうございます!ありがとうございます!と頭を床に擦り付けた。
よほど、ひどい目にあっていたらしい・・
しかし・・
ケントルム王は、恐ろしい殺気を放っているシュエとグレルを見て頭を下げた。
アンタら王様に・・私。殺されるかもしれないな・・・
「使者殿。申し訳ない・・心から謝罪する」
「いえ・・誤解が解けたなら良いです・・私達の傷は癒せば消えますしね・・
しかし・・その女性にはどのような償いをするのでしょうか?」
・・何故かシュエとグレルではなく・・ユリナが答えた・・
ケントルム王が、チラリとシュエとグレルを見ると、二人は何も言わずにユリナの一歩後ろで回りを警戒しながら立っていた。
ユリナが良いなら良いらしい・・
しかも彼女は、自分より小人族の女性の今後が心配のようだ。ならばと、ケントルム王はユリナに向かって口を開く。
「賠償金を出そう」
「団長の一族から、徴収するのですよね?」
ユリナがコテンと、首を傾げる。仕草は可愛いが、内容な可愛くない。
「当然だ」
ケントルム王がニヤリと笑いながら言うと、ユリナは優しそうにニッコリ笑って、ケントルム王にある危険性を口にした。
「ならば、有り金。地位。彼等の全て巻き上げて下さい。
彼の親族が、ミミルさんに手を出す危険があります」
笑顔で言う無いようではない!!
いや・・しかし、それよりも・・
「何故だ?団長はもう居ないのだぞ?」
ケントルム王が言う。
するとユリナは、分かって無いなと苦笑いして口を開いた。
「貴族と言う生き物の大半は、プライドが高いだけの俗物です。
自分たちが受けとるはずの財産を、平民何かに奪われれば逆上するでしょう!
・後・・数日だけでいいので、城に下女として滞在させてください」
「何故だ?」
ユリナの申し出に、ケントルム王は驚く。下女になる理由が分からない・・
「団長の一族が、ミミルさんに悪意のある噂を流すかも知れないからです。
その前に、私が真実を触れ回ります」
決意を込めてユリナが力説すると、ケントルム王がボソリと疑問を口にした。
「・・何故下女なのだ」
下女になる意味が分からない。
マグダリア王妃の侍女として、話を流した方が効果が有りそうだ。
「私が触れ回れば、マグダリアが触れ回った事になり、我が主に迷惑がかかります!
しかし!身元がハッキリしない貴族は怪しまれます。
話など聞いて貰えませんわ。しかし、下女ならば詳しい身分など詮索されないでしょう?陛下・・許可をいただけませんか?」
ユリナが、ケントルム王に願い出ていると・・
「何で、そんな事までしてくれるのですか・・初対面なのに」
ミミルが、信じられないといった顔でユリナを見上げた。
ユリナは、そんなミミルに視線をあわせるためにしゃがみこんだ。そして、じっとミミルを見ながら口を開いた。
「貴女が美しいから」
「は?」
ミミルは目を丸くする・・今。なんて言った?
目を丸くするミミルを、ユリナは眩しそうに見つめながら話始めた。
「こんな・・こんな綺麗な女性が、この先怯えて暮らすなんて有り得ん!!あの不細工野郎は貴女を怯えさせて・・
しかも・・美しいシュエとグレルを(処刑しておけ!)なんて!腐れたこと言ったんだ!
・・私みたいな不細工女ならともかく・・
だから・・徹底的に潰してやりたい!陛下!許可を!」
ユリナの余りの剣幕に、若干怯えたケントルム王が許可を出すと、ユリナは楽しそうに笑った・・・・・
女は・・・この女は、怒らすと恐ろしい・・・・・・
断罪でした!
次はケントルム王様が大変な目に!




