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転生しても私は私  作者: 柳銀竜
三人旅編
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ケントルム城

 

 ケントルムの王城は、騒然な騒ぎになっていた。


 騒ぎの原因は、ケントルム城の廊下を練り歩く集団。団長とユリナ達と兵士達だ。


 兵士団の団長が見知らぬ男性に剣を突き付けられ、青い顔をして歩いている姿は、使用人達を怯えさせるのには十分だった。


 逃げ惑う使用人が多い中、警備兵達だけは兵士達がいる詰所に走った。


 助けを求めに・・・しかし・・・


兵士達が来るより早く、シュエ達は目的地に到着してしまった。


 王の命令がなければ入れない謁見の間に・・


「陛下・・お助け下さい」


 顔を青ざめた団長が、謁見の間にいるケントルム王に向かって助けを求める。


 王は団長にではなく、団長の喉元に剣を突き付けた青年を怒鳴り付けた。


「何者だ!」


 王に問われたシュエは、団長の喉元に剣を突き付けたまま、王に会釈をしてから真っ直ぐ前を見る。


そしてシュエは、口を開いた。


「・・・・お初にお目にかかります。

 私は、マグダリア王太子妃付きの近衛のシュエ・メチェーリと申す者でございます。

 大変不躾ではありますが、魔力を込めた宣言を聞いていただきたい」


 シュエがそう言うと、ケントルム王は殺気だつ衛兵達を目線だけで黙らせる。


 そしてケントルム王は、衛兵達に向けていた視線を団長に剣を突き付けているシュエに向けた。


「許す・・だかその前に、その者を放してくれ」


 ケントルム王がシュエに言うと、シュエはコクりと頷いた。


「・・分かりました」


 シュエがケントルム王の頼みを聞き入れ剣を下ろすと、団長はすぐさま反撃しようとした・・・・・

 しかし・・・・・


「貴様!!ぐフッ!」


 シュエは、団長をおもいっきり蹴り飛ばされて壁に激突し、団長は気絶した。


 蹴り飛ばしたシュエは、団長を冷たく見下ろしながら、気絶した彼に向かって言い捨てた。


「正当防衛だ」


 衛兵達が再び殺気だち、シュエに向かって槍を構えた・・だが・・・


「いい。衛兵!団長を連れていけ」


「「はっ」」


 王がそれを止めた。


 衛兵達は、腑に落ちないと言いたげな顔をしながら半数は定位置に戻り、半数は団長を医務室に運んだ。


 ケントルム王がシュエの前まで来ると、シュエはひざまづき声に魔力を込める。


「では・・魔力を込めた宣言を始めます。

 我・・・シュエ・メチェーリは、小人族ルシュ・カラグ夫妻を殺害しておりません!暴力も奮っておりません!小人族に害を及ぼした事もない事を宣言します!」


 何!?どういう事だ!状況の分からないケントルム王が口を開きかけた。

しかしその前に、シュエの後ろにいたグレルとユリナが、ひざまづき声に魔力を込める。


「我・・グレル・アルシルは、小人族ルシュ・カラグ夫妻を殺害しておりません!暴力も奮っておりません!小人族に害を及ぼした事もないことを宣言します!」


「我・・ユリナ・ウイングは、小人族ルシュ・カラグ夫妻を殺害しておりません!暴力も奮っておりません!小人族に害を及ぼした事もないことを宣言します!」


 ユリナ達が宣言し終わると、ケントルム王は、ユリナ達の後ろにいた隊長に叫ぶ。

 国境の警備兵隊なのに、ここにいたのだから、確実に当事者だろう。


 夫妻の殺害について、何かしら知っている筈だ。


「!!どういう事だ!」


「陛下!嘘です!確かに・・」


 ・・・嘘だと!!


 ケントルム王は、思わず隊長を怒鳴り付けた。


「黙れ!魔力を込めた宣言は絶対だ。

 虚偽を宣言すれば命はない!体が破裂していないと言う事は、真実を宣言したと言う事だ・・・

 団長に気付け薬を使え!夫妻殺害現場の責任者も呼んでこい!」


 ケントルム王が怒鳴ると、隊長と隊長についてきた兵士達が慌てて部屋を出ていった。


 そしてシーンと静まり返る室内で、遠慮がちにユリナが口を開く。


「陛下・・転移陣の部屋に、団長に奪われそうになった荷物があります。疑いが晴れたのなら・・荷物の中の国宝を回収したいのですが」


 ・・国宝?ケントルム王は暫く考えて、あ!とある事を思い出した。


 ユリナ・ウイングとシュエ・メチェーリ。そして、グレル・アルシルが国宝を返却に来ると、マグダリアから通信魔術で知らされていたのだ。


 国宝は我が国だけでなく、まだ数国分ある筈だ・・

紛失などすれば、途方もない賠償金を払わなければならないかもしれない。


ケントルム王は内心かなり焦りつつ、涼しい顔でユリナに告げた。


「分かっている。直ぐに持ってこさせよう・・衛兵!直ぐに回収せよ!」


「はい!」


 衛兵はもうダッシュで、謁見の間を出ていった。

因みに彼は、剣集めが趣味のオタクで、国宝を合法的に触れる機会を逃さない為に、同僚が動く前に素早く走り去っていた。


 同僚達はそんな彼を妨害すれば、少なくとも一年間はグジグシ言われるので無言で見送った。かなり面倒だからだ。


 そして疑いが晴れ・・国宝の心配もなくなったシュエは、王に向かって口を開く。


「それよりも・・治療をしてよろしいか?」


「ああ・・直ぐに医師を・・・」


 よく見れば血塗れの三人・・何故気が回らなかったのかとケントルム王が衛兵に命じ、医師を呼ぼうとすると・・


「ユリナ!痛かっただろう・・癒せ」


「ユリナ・・癒せ・・」


 シュエとグレルは、道見ても怪我人に見えない早さで、ユリナに駆け寄り全身に治療魔法をかけていく・・


 しかし自分達には一切治療せず、ひたすらユリナを癒していた。


 もう十分怪我は治り、かすり傷しかないのに、それでも二人はユリナを癒し続ける。


 このままでは、二人は自分の治療など一切しないかもしれない。


 ケントルム王は、なんとも言えない顔をしながら衛兵に命じた。


「・・医師を呼んでこい!」


「はい!」


 命じられた衛兵は、ビシッと敬礼してから、急いで医師を呼びに医務室に向かっていった・・




ケントルム城でした!

次はユリナ達の疑いが完全に晴れます!


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