愛された姫様
姫様登場です!
「姫様から、貴女を城にあげるようにと命令がきたわ・・・・・」
「え?私ですか!」
此処は、公爵家の応接間。
使用人の面接にも使われる場所で、メチェーリ家女主人、アミーラは使用人ユリナと向かい合って座っていた。
他のメイドは、全て下がらせているので今は、二人きりだ。
「ええ、貴女の事が知られてしまったようよ。多分嫌がらせでしょう・・・」
アミーラは、申し訳なさそうにユリナを見つめた。
「貴女が選択できるものは三つ。
一つ。
姫様からの命令に、従い城にあがる。
この場合。貴女は侍女になるわ、本来なら、貴族しか成れないのだけど・・・・その時は我が家が後見人になるから問題はないわ。
二つ。
王都を去ること。行方不明と言うことにするから、この国には二度と戻ってこれないでしょう。
そして、三つ目。
これが一番オススメよ!シュエと結婚・・・・・」
「一番で!」
言い終わらないうちに、ユリナは即答。最後まで聞きなさい!
「姫様に虐められるわよ?」
アミーラが、恨みがましくユリナをみる。
私は孫の顔が見たいのよ!
「だって、メチェーリ家に迷惑がかかります!二番は!三番は聞かなかったことにします!」
ユリナは、元気よく答えて立ち上り頭を下げる。
「では!支度をしてきます!シュエ様に見つからない内に!」
シュエは、反対するにきまっている。
幸い、今日は仕事でいない。
ユリナは、大急ぎで部屋に戻ると荷物を纏めた。大体纏め終わってから、ユリナは部屋を見渡す・・・・・
此処に来て三ヶ月ちょっと。
短い間だったのに・・・・何年も居たような感覚がある。
出ていかないといけないとは、寂しい・・・・・
シュエに言えば、絶対断ってくれるだろう。しかし・・・・・
自国の第一王女の命令を、公爵家が断る。そんな事をすれば、運が悪ければ反逆罪に問われてしまう。
そんな事を、雇ってもらっておいてする事はできない。
ユリナは名残惜しさを振り切り、部屋を出る。
すると!いきなり捕まれて部屋に逆戻りした!誰だ!!
「ユリナ!行くな!」
犯人はシュエだったようだ。
息切れをしている。
城でこの話を聞いて、急いで帰ってきたらしい。
「シュエ。水飲む?」
ユリナは机の上を指差した。
生憎。腕を掴まれているので、ついであげることはできない。
そんなユリナ腕をシュエは解放して、ハーと息を吐いた。
疲れた顔をしている、大丈夫だろうか?
「お前は・・・・言うことそれだけか」
「いや、息切れしてたし・・・シュエが、言いたいのは姫様の侍女になる話でしょ?
行かないでどうするの?絶対逃げきれないよ。寧ろ逃げたら不味いよ・・・シュエ?どうしても行かないでほしい?」
ユリナが上目遣いで聞くと、シュエは深く頷いた。
「行かないでほしい」
そんなシュエに、ユリナはニッコリ笑う。
「じゃあ、別れる。」
ユリナの言葉に、シュエは思わず叫ぶ。
「・・・・・え!何でだ!」
ユリナは再度、ニッコリ笑った。
「別れたくない?」
シュエは、必死でユリナにすがり叫んぶ。
「別れたくないに決まってる!」
ユリナはニヤリ。
そして笑顔を歪めて、シュエの耳元で囁いた・・・・・
何か・・・悪女になった気分だな。
「じゃあ、お願い聞いてくれる?」
「何でも聞いてやる!」
シュエは即答。よーし!ユリナは畳み掛ける様に言葉を続ける。
考える隙間を与えない。
「じゃあ、城に行ってもいい?」
シュエは、何も考える事ができず首降り人形と化している。
「ああ!行っていい!」
「ありがとう!」
シュエは、ここでようやく失言に気付いた。
もう手遅れだが・・・・・
「えっ・・・・・あ゛っちょっと・・・・・」
そんなシュエに、ユリナはニッコリ笑う。
「今、良いって言ったよね?」
まだ、ゴモゴモ言うシュエ・・・・・
「うっ・・・・・しかし・・・・・・」
ユリナは、ニッコリ笑う。
「有言実行しない人は嫌い」
シュエは、不思議そうな顔をした。あっ!前世の言葉だったよ!
「ゆうげんじっこう。とは何だ?」
「言った言葉は実行する事」
シュエは、なおも不思議そうに言う。
「何処の言葉だ」
「秘密。」
日本です。頭がおかしいと思われそうだから、言わないけどね。
「それで?別れる?どうする?」
シュエは言葉に詰まる。しかし、別れる発言は凄く効果があった模様。
「うっ・・・・・頑張ってこい。何かあったら直ぐに言え!絶対に助ける。絶対だぞ!」
ユリナは頷く。
「うん!分かった」
シュエは、念押しするようにユリナの目を覗き込んだ。
「私は、近衛騎士団にいる。
私がいない時でも、私の名前を出せば皆、快く助けてくれるだろう。もしも・・・・助けてくれないときはソイツの名を教えろ。わかったか?」
「うん、わかった・・・ん?・・・・快く?」
脅すんじゃないのか!まあ、いいか・・・・・・
「ああ・・・快く」
わーいい笑顔!その悪い笑顔。凄くいい!ユリナは、思わずシュエに抱きついた。だって格好いいんだもん!
「ユリナ・・・・・」
シュエは、ユリナをベッドに下ろす。寝具はまだそのままだ・・・・・
「シュエ・・・・・」
「明日から行くのだろ?今日をすぎたら・・・・・余り会えなくなる・・・・・だから」
「仕方がないな・・・・・」
ユリナは、笑ってシュエを受け入れた。
翌日。
ユリナは、寝不足の目を擦りベッドから出る。
シュエはもうすでに身支度を終えていて、ノロノロと着替えだすユリナの着替えを手伝っている。
まるで良妻の様に・・・・・
ユリナは昨日、連れてこられたシュエの部屋から出て、ユリナの部屋に行き(昨日、荷物を置いたままだった)荷物を持って屋敷の正門へ、その間ずっとシュエが後ろに(荷物も持ってくれてる)ピッタリくっついて離れない。
正門に着くまでに、メイドやらウェイティング(男性メイドで力仕事を主に担当)
仕事前の料理人達に頑張って!ど激励された。
シュエの様子見て、別の意味でも頑張ってと言う奴もいた。
ハイハイ。シュエは、人を殺しかねない奴だからな分かってるよ。
怪我はくれぐれもしてくれるなって事だよな?公爵家と、姫様命がかかってる・・・まあ、姫様は言いか・・・頑張らねば・・・・
公爵家の正門に付いた。
今までお世話になったメイド長と家令、それと旦那様に奥様。
ラクス様とシュエに別れを告げて馬車に乗ったんだけど・・・なのに・・・・・
「シュエ。何でいるの?」
馬車に乗り込むとき、シュエが一緒に乗り込んできた。何でだ!
「私は今日、勤務なのを思い出した。」
ユリナは、普通に嘘をついたシュエに叫ぶ!
「違うよね!今日非番でしょ!私は一人で大丈夫だから・・・・・」
するとシュエは、凄んできた!なんだよ!やるか!
「あの傲慢王女に会うんだ・・・・・護衛が・・・・・」
侍女に護衛なんかいらねぇよ!寧ろ有事の際に、主を庇う存在だよ!
「いらないよ!寧ろシュエに護衛されたら姫様に殺されるよ!」
姫様は、シュエにベタ惚れだ。
屋敷の人達に聞いた話によると・・・・・姫様。第一王女は子供の頃に、城でおこなわれた舞踏会に、父に連れられて来たシュエの美しさに一目惚れ。
シュエは、上級術士の氷結術士で公爵家の嫡子。
王女を嫁がせるのに、何の問題もない。姫様は正妃の産んだ第一王女で、名前はエカテリーナ・ノーブル・ゼルギュウム。
愛称はエカテだ。
国王はエカテ様を溺愛していて、彼女が望んでいるのならば、シュエに娘を嫁がせたい!と思っている。
国王は、シュエの父親であるバルバロに、何度もエカテ姫様とシュエの婚約を申し出ているらしい。
バルバロは、本人の望まぬ結婚をさせたくない(それは建前で、本当はタンペットに似て過激なので、姫様を殺りかねないから)だから、半人前なので。と断ってきた。
だが、先日シュエは護衛騎士に叙任されてしまった。
これを期に国王が、しつこく婚約を迫っているらしい。
そして、今度は娘が結婚するまでは!と断っている。
ラクスが結婚したらアウトだ。
エカテ様の方も、シュエをしつこく呼び出して、シュエに迫っている・・・・らしい。
シュエの忍耐力はいつまで続くか・・・・寧ろそっちが恐しい。
最強の氷結術士が暴れたら・・・
考えるのは・・止めよう・・・精神衛生上よくない!
しかも実は、隣国。最近同盟をはたした、マグダリア国から同盟の証の縁談の申し出があった。
本来。正妃腹の第一王女が同盟の強化に最も適している。
それに王の溺愛ぶりは有名だと言うのもある。
しかし、王は側室腹の第二王女。イデア・イーベン・ゼルギュウムを嫁がせる事に決めた。
エカテ様の母。正妃は隣国の王女で、彼女の美しさにその頃まだ王太子だった国王は、惚れ込み結婚を申し込み求婚んで、無事。結婚にこぎつけた。
しかし側室は、国内の力の強い貴族に押しきられ、嫌々めとった女性だった。
何とか娘は産んだが、夫婦中は悪いまま・・・・・
まあ、そんな事はどうでもいい。
私が何を言いたいかと言うと・・・
「姫様は、シュエが大好きなんだよ!刺激した方が危ないって」
「しかし・・・・・」
しかし。じゃない!聞けよ!
「シュエ?お願いきいてくれないなら・・・・・」
ね?ユリナはニッコリ笑い、声を出さず口を、わ・か・れ・
「分かった!付いていかない!お前の事は近衛騎士団の仲間に頼む!必要以上に構わない!だから!別れるなんて言うなぁぁぁぁ」
別れるは最強の呪文・・・あれ?どっかで・・・・・ああ!昔読んだBL小説の一文だ!あースッキリ!あれ?愛してるは最強の呪文だっけ?まあ、いいか・・・・・
泣きそうになるシュエの隣に行き、シュエの顔を覗く
「シュエ!これからも私のお願い聞いてくれるなら、膝枕してあげてもいいよ?」
悪女!自分で自分に寒気がする!
でも!これをしとかないと、シュエが、姫様に何をするかわからない!姫様!こいつは結構、性格危ないんだぞ!女でも平気で・・ブルッ言わないでおくか・・・・・
ユリナは考えてた事を誤魔化すようにパンパン膝を軽く叩く
「膝枕する?」
「する」
シュエは、素早く膝に頭を乗せた。
それから、城に着くまで楽しく他愛も無い話をしていたら、いつの間にか馬車が止まった。
だが、シュエが動かない・・・・アンタ・・・
「シュエ馬車、止まったんだけど・・・」
「・・・・・」
「わ・・」
シュエは、ガバッと立ち上がり馬車の扉を開けて馬車を降る。
そして、下から手を伸ばす。
本当に魔法の呪文だ。効果覿面じゃないか。
「掴まれ」
「うん!」
シュエに支えてもらい馬車をおり、荷物を持って正門に向かう。
身分証(公爵家で作って貰った)を門番に見せて城に入る。
またもや、付いて来ようとしたシュエに魔法の呪文。
彼は大人しく騎士団の宿舎に渋々歩いていった。
何度も振り替えるなよ・・・・・
ユリナは、近衛騎士に連れられて女官の詰め所に向かう。
女の王族に使えるので、後宮での勤務になる。
他国は知らないがこの国の後宮は男子禁制ではない。なので後宮の近衛騎士にも男がいる。
主に美しい顔の。面食いだな・・・王族。
「・・・・・」
「・・・・・」
暫く歩くが、案内人は一切喋らない。
時折ユリナが付いて来ているか後ろを見て確認するのだが、一切喋らない。
嫌われて・・・・・あれ?なんか怯えてないか?まさか・・・
「シュエに何か言われた?」
そう言えばさっき、シュエが何か耳打ちをしていた。
ユリナが聞くと、ビクッとして恐る恐るユリナを見る・・・・・不憫だ ・・・
「頼む!」
案内人の騎士が、泣きそうにユリナに懇願しする。
なんだよ・・・・・
「話かけないでくれ!お前と話したことがバレたら・・・・・俺は・・・・俺はシュエに・・・・」
「うん・・・・・ごめん」
シュエ・・・・・アンタ・・
私達はひたすら歩く。
勿論無言だ。するとある扉の前で案内人の騎士が止まる・・・・
コンコン。ノックすると騎士が声を出す。
「近衛騎士団所属のガウリス・ノーマスです!メチェーリ家より、ユリナ・ウイングが参りました!」
すると、中から年配の女性の声がする。
「そうですか。入室を許可します」
ガチャっ
案内人の騎士。ガウリスが、扉を開けて中に入りユリナもあとに続く。
部屋の中に入ると、大きい机と椅子があり、その椅子には五十代くらいの女性が座っていた。
神経質そうな女性だ。机の前にソファーと小さい机があり、そのソファーにユリナと同年代の女性もいる。
揃って目が怖い。
早くも嫌われてる・・・・・
「ノーマス。退室してよろしい。彼女は私達が姫様の元へ案内します。仕事に戻りなさい」
「はい。失礼します!」
ガウリスは一礼してから、部屋を退室する。ワーオ!一気に氷点下!
「では、宿舎から案内します。ついてきなさい。それから、この者は貴女の同僚となります。挨拶なさい。」
ワー挨拶もできないの?ってな態度だよ!そこの人も
「失礼しました。
私はユリナ・ウイングと申します。以後宜しくお願いします。」
五十代くらいの女性が、座っていまま言う。おーい!普通立だろが!
「私は、女官長のエリザベッタ・アロガンテ公爵夫人です」
「私は、イザベル・フィエリテ伯爵令嬢ですわ」
爵位なんか聞いてねぇよ!いいけどさ!
「では、案内します。ついてきなさい」
女官長とイザベルは、立ち上がり部屋を出る。荷物を持ってついていくと・・・・・何だこれ!
「ここが貴女の部屋です。一軒家など異例ですよ」
そりゃそうだろ!まるで幽霊屋敷のじゃねぇか!ボロすぎだろ!他の建物レンガなのに、木で出できてるし!
「早く荷物を置いて来なさい。姫様がお待ちよ」
イザベルに言われ急いで部屋に入る。
(ワーオ・・・・部屋はもっと凄かった。雨漏りの跡もある。
まあ、バケツとか、置けばいいか、ボロいけど台所あるし・・・うわー毛布も無いのかよ!木枠だけじゃん仕方ないな。
暫く服を布団がわりにするか・・・・)
ユリナは怒鳴りたいのを必死に押し殺して、荷物を木枠(絶対ベッドとは言わない)に置いて宿舎を出る。
「置いてきました。鍵をいただいても、宜しいですか?」
かけても余り意味がない気がするが、掛けないよりましだ。
しかし、女官長は鼻で笑った。
この野郎!あっ野郎じゃなくて、女だな
「あるわけ無いでしょう?」
「貴女は、取られて困るような高貴な品物など持っていないでしょ?貴女には必要ないわ」
この女共め!今に見てろよ!
ユリナは、内心を隠して楽しそうに笑い二人に言う。
「そう言えばそうですね」
フン。二人はバカにしたような目をして、ユリナの方を見下した。
「そうでしょう」
「では、行きましょう」
歩いて歩いて歩いて、どんだけ勤務地から離れてんだよ!と、ユリナが心の中で怒鳴った頃。
やっと第一王女の部屋に着いた。一時間近く歩いたな。まあ、ダイエットになるからいいか・・・・・
うん!そう言うことにしておこう!
そして女官長が、目の前の豪華な扉をノックする。
「姫様、ユリナ・ウイングをつれて参りました」
うわっ!!気持ちわりっ!女官長が優しい声出してる!
「入りなさい」
綺麗な声がした。スゲーよ澄んだ声って、実在するんだ!
ユリナ達が部屋に入ると数人の侍女と・・何だあれ?
うわおっ・・綺麗過ぎる!シュエと変わらないくらい綺麗な顔は初めてみたぞ!あっ!グレルも美形だ!まあ、良いとしてシュエ・・・・
アンタ目が腐ってるよ!澄んだ空の様なスカイブルー、金細工の様な神々しい髪・・・・・
姫様はユックリとユリナを見ると、美しい顔を醜く歪めいい放った。
「貴女ね!シュエに言い寄る女は!そんな醜い顔でよくも言い寄る事が出来るわね・・・」
おい!醜いは言い過ぎだろ!私は並みだ!不細工じゃねぇよ!
「そうよ!シュエ様は迷惑してらっしゃるわ」
「そうよ!シュエ様は姫様にこそ相応しいわ」
暫く言いたい放題。女官長も、ウンウン頷いている。
ユリナは、ガーガー中傷されたあと、部屋の全ての人間の声が重なった。
「「「「「「別れなさい!」」」」」
やっぱりな。ユリナはユックリと 口を開いた・・・・・
どうでしたか?
姫様・・・・・ユリナは大変な事になります。ユリナの宿舎は女官長達の独断です。姫様はなにも知りません・・・まあ、知ってても止めませんが・・・
廃屋宿舎は、次の話で生まれ変わります。アイツです・・・アイツが・・・・・・
次も宜しくお願いします!




