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世界が望む
荒れ果てた大地が続く。
神の怒り故か大地がその恵みを小さき人に与えることを止めた。
掘っても掘っても水が湧かず、家畜どころか人の飲む水も確保できない。
雨は降らない。
国が荒れる。
先ずは土耕す民が逃げた。
役人が種籾までも奪い去り非常食までもを奪い去った。
雨が降らない。
食べ物を作る民までもが飢えた。
次は街に住む商人が逃げた。
売る者が無い。
買う人々がいない。
昨日門を守っていた兵が今日は盗賊になっていた。
他所に出るように国を捨てた。
貴族が飢えた。
奴隷も領民も逃げた。領地の城塞の門を開ける者もいない。食卓に座っても晩餐は出てこない。
国王は嘆く。
怠け者どもを処刑しろと命じても誰も動かない。
誰もいなくなった。
国は荒れ、無くなった。
陰鬱な音色に乗せて語られる昔語りは、酒場の男達には不評だったが道行く市井の者達は一人また一人と足を止めてゆく。
齢ふりた乞食のような吟遊詩人が語る物語は真実であったからだ。
古くはない。
つい20数年前の事。隣国で起こった事だからだ。