第1.5話・少女アリスと八神太陽
今日は閑話入れて二話分投稿
こっちは短いです。
私の名前は、アリサ
この森の近くの町、ゴコウに住む冒険者よ。
まあ、ギルドにも入っていない町娘が本当の私の姿ではあるのだけれども。
いつかは冒険者ギルドに入って、世界一のハンターになるのが私の夢。
そう、何をかくそう、私はまだ13歳なのである。
そんな私は、今日森の中に来た。弓の扱いをある程度覚えた私は、こうしてときどきスナップバードやバビットを捕獲するのだ。
彼らは弓でも簡単につかまえることが出来るため、私でも狙いやすい獲物だ。
さらに、この二匹はとてもおいしい。
村の育ち盛りの子供達を食べさせるために、私は今日も狩りにきたのだ。
岩に隠れながら、私は移動する。
森には魔物もいるため、出来るだけ見つからないほうがいい。
そう思い、私は岩陰から次の場所に移ろうとしたときだった。
「っ!?」
自分が飛び出たところ、それは岩だと思っていたが、違う。
これは――
(ジャイアントボア!)
この森に生息する魔物だ。討伐ランクはC。今の私には荷が重すぎる。
熟練の冒険者でも、ひとりでは手こずる相手だ。
私は口から出かかった悲鳴をなんとか抑え、そしてゆっくりと距離を取っていく。
まともに目があったのだ。どうなるのかわかったものではない。
しかし、時間がいくら過ぎても、ジャイアントボアが動き出すことはなかった。
目をあけて寝ているのかとも思い、ゆっくり背後に回る。
私はそこで驚く光景を目の当たりにした。
なんと、ジャイアントボアが真っ二つに綺麗に両断されているのだ。
これには驚きを隠せない。どうやったら、ここまで見事に斬れるのか。
いや、もしかするとA以上のランクを持つ魔物にやられたのかもしれない。しかし、ここらでは目撃情報はないし、それに獲物にまったく手をつけていないこともおかしい。
では、A級以上の冒険者にやられたのだろうか。しかし、こちらも獲物をそのまま放置しておくなんてありえない。
裁断面を見ると、何かしらの斬撃で斬られたことがわかる。
あまりになめらかに斬られているせいか、肉は全く劣化している様子はなく、むしろ血を送ろうとしたのか、そこには血だまりが出来ている。
勝手に血抜き状態だ。
あまりに手際がよいため、誰がしたかは知らないが、私は肉をはぎ取り始めた。
ついでに皮をはぎ、角を取ったりする。
独り占めをすると、森の生き物たちに狙われるかもしれない。私は自分が持てる限界まで取ると、後はそのまま残しておいた。
森の恵みに感謝だ。
そして、この肉を食べ、他の生き物がさらに繁栄してくれればいい。
私は意気揚々と歩き出した。
「……ん?」
その帰り道、私は人影を発見する。
こんな森に、私以外の人が?
あまり人が入り込まない場所だけに、不思議と思い、人影のもとに歩き出す。
「……なんで、こんなところに」
そこにいたのは、間違いなく人だった。
この国では、まったくいないといっていいい黒髪を持つ少年。
岩に寄りすがった状態で、ぴくりとも動かない。
私は心配になって、その人に近づいた。
少し近づいても、起きる気配はない。
死んでいるのかと思ったが、胸のところが動いているため、死んではいないようだ。
私は、どうするか悩んだ。
見たところ、異国の人間のようだ。しかし、村に連れて行くべきか。
「おおーい。アリス-?」
と、そこに友人のアキムがやってきた。私を見つけると、すぐに近づいてくる。
「どうした?」
私はそこにいる人を指差す。
アキムは驚いたようだった。
私は、今どうするかをアキムに聞いた。するとアキムはすぐに
「連れて帰ろうぜ」
私は即決でそういったアキムに驚いたが、確かに、もしかしたら遭難した人かもしれない。
私はアキムにこの少年を背負ってもらって、森から出ることにした。
今日の夕食は豪華だなとおもいながら。
途中、少年のお腹がなって、私たちは笑いながら、いそいで家へと帰るのだった。