8 : 魔導書と魔王
建物から人影が出てきた
(早く謝ったほうがいいよね・・・)
アリスは慌てて建物の方へ向かって大声で謝った。
「あの~!すいませんでした~!!怪我はありませんか!?」
煙が晴れてゆきその人影の姿もあらわになる。
やがて、青い髪に水色の瞳をした女性が咳き込みながら声を上げた。
「危なかった!何してくれてるの??死ぬかと思ったよ!!」
煤をかぶったその女性はアリスたちの前まで少しずつ歩みを進め、立ち止まった。
「本当にごめんなさい!」
アリスたち三人は必死に頭を下げた。
すると、女性はため息を付きながら口を開く。
「まぁいいわ、怒鳴るのも大人気なかったわね。許してあげる。」
そう言って微笑んでみせたが、心臓の鼓動はまだ速いままだ。
こんな威力人が出せるものではない・・・
少し冷静になり、一拍おいて女性は自己紹介を始めた
「私の名前はシーナよ。あなた達は?」
「私はアリス、そしてこっちがクロノスとホープです」
アリスは左右に立っているクロノスとホープも紹介した
「よろしくね。それで・・・この攻撃をしたのは誰?」
シーナは本題に入る。
(……この魔力密度……複製魔導書の比じゃない。同じ複製なら、せいぜい結界にひびが入る程度……
これは完全に“貫通”してる……)
シーナの問いにアリスは一瞬固まったが、その隙にクロノスとホープが事情を説明した。
『・・・結界の効果が分からなかったので私とホープが破壊してしまいました。すいません』
三人は何度も頭を下げる。
「もう謝らなくてもいいわ。それより・・・あなた達は何処から来たのかしら?外の結界は壊されていないようだけど」
「外の結界?」
アリスが首を傾げると、シーナは説明を続けた。
「えぇ、ここの土地には誰も入れないよう、外側に結界を張っておいたのよ」
『外にも結界が張ってあったとは・・・気づきませんでした・・・』
クロノスが少し落ち込んだように言った。
それを見計らったようにホープが言葉を続ける。
『あたし達はテレポートしてここに着いたんだよ!』
「テレポート?それはおかしいわね」
シーナは疑惑の表情を浮かべる
それに対してクロノスは質問を返す
『おかしい?』
「えぇ、おかしいわ。だってテレポートは人が使える代物ではないのだから・・・」
やはりおかしい。あの威力といい、テレポートだなんて。
『私は人ではありません。私はマスターの魔導書です』
『あたしも魔導書だよ~』
「ちなみに私は人です・・・」
クロノスとホープは当然のように魔導書だと名乗り、アリスは小声で自分は人だと付け加えた。
「ありえないわっ!!」
(そんな魔導書があるだなんて・・・もしかして?!)
シーナは大きな声で否定した
そしてシーナは言葉を続ける
「いや・・・そんなのありえない・・・」
(オリジナルに匹敵する魔導書が存在するなんて・・・でもあの魔力は本物の・・・・・)
少しばかり沈黙が続いたあと、クロノス静かに問いかける。
『どういうことですか?』
シーナ一旦深呼吸し、落ち着きを取り戻し始めたあとに言葉を続ける。
「少し取り乱したわ・・・ごめんなさい。質問の答えだけど魔導書は本来この世界には存在しないわ」
アリスたちは息を呑む。本来存在しないとはどういうことなのだろうか。
「数百年前、突如としてこの世界に起源の魔導書と呼ばれたものが現れたの。それを手にした者は強大すぎる力を得てた。そして、魔王と呼ばれるまでに人々を殺戮し、国は壊滅状態に・・・。それまでの文明は終わりを迎えた」
シーナは声を震わせながら続けた
「それに対抗しようと人類は魔導書の力の根源を研究し、魔法と言われるものを作り上げ、魔法文明を築いた」
「それでも力の及ばなかった人類は魔導書の複製をも成し遂げた。でも複製はオリジナルほど強くはなかった。それでも複製魔導書をいくつか作って、歴代の勇者と呼ばれた者たちによって魔王を倒すことに成功した」
「そして起源の魔導書も封印され、アクリレル王国に保管された。それから長い年月が流れ・・・今に至るわ。」
シーナはアリスたちを見つめた。
「だからオリジナルに匹敵する魔導書が今あるなんて信じられなくて」
『そんな歴史が・・・。知りませんでした・・・』
「クロノスちゃんが知らないことなんてあったの!?」
『はい。どうやらここは私のいた世界とは別の”平行世界”のようです。地形などはほぼ同じなのですが・・・』
(平行世界の魔導書!?そんなものが存在するなんて・・・)
シーナは頭を抱えた
『あたしたちのマスターは魔王になんてならないよ!』
『そうです、私達のマスターは魔王になんかなりません!』
クロノスとホープはシーナの不安を察して強く否定した。
「クロノスちゃんとホープのいう通り私は魔王になんてならない!」
アリスの言葉に、シーナはようやく肩の力を落とす。
「そう、その言葉を聞いて少し安心したわ・・・ありがとう」
アリスたちの表情を見て安心した様子をしていたが、シーナの表情にはどこか悲しげな影が残っていた。




