山内咲月は男運がない
山内咲月はつくづくついていない。
男運もなければ普通に運もない。
わたし可哀想!と思いながらも頑張ってる、はず。
薄桃色のアパートの3階で、窓を全開にしたまま昼寝をしている大学生は、きっと私しかいないだろう。心地よい風に包まれて、ふわりと寝てしまった私が目を覚ましたのは、バイトの時間32分前。慌てて飛び起きて、洗顔用のピンを付けたままでてきてしまったのは言うまでもない。これは咲月がよくやらかすことであり、そこまで気にならないと思っている。(本人は)
「ま、正直夜のコンビニバイトはお客さんも比較的少ないからちょっとくらい遅れても大丈夫なんだけどね〜。」
と少しばかり調子に乗ってみる。
今日は神田くんがくるほうのコンビニ。
咲月本人は好きではないと言っているが、なんとなく男女のいい雰囲気が漂っているのは確かだ。
ちなみに神田くんはそのコンビニの常連であって、大抵23時くらいに来店し、少し咲月にちょっかいをかけてから帰っていく。ちょっと迷惑な大学生。夜のコンビニに来るのは疲れたサラリーマンか、少し何かありそうな男女くらいなので大変楽な仕事である。
「咲月ちゃーんきたよー。」
「いらっしゃいませー。」
「今日も愛想わる!」
神田くんとのこんなしょうもない会話もここ最近はテンプレと化してきている。
「咲月ちゃんさー彼氏いないの。彼氏。」
「は?」
神田くんはぷっと吹き出して言った。
「そんな怒んないの。」
流石にうざすぎる。
「いないけどなに?」
ことんと置かれた缶ジュースとプリンをレジに通して、他愛もない話をして神田くんは帰っていった。
一人になった咲月はぼけーっと過去の彼氏たちを思い出していた。
一人目は、私服がものすごいダサい人だった。
顔はかっこよかったけど、顔でカバーできないものもあるということを知るいい機会になったと咲月は思っている。それは中三のときの話で、受験もあったので普通に別れを切り出して普通に別れた。私服がダサすぎて別れを切り出すような女の子は、咲月の周りには咲月以外いなかった。
二人目は、嫉妬深い人だった。
咲月があまりにも嫉妬しないから、最後はあっちがキレてフラれた。(正直、わたしからも別れを切り出そうと思っていたところだったので、フラれたという意識は全くもってないが、事実としてフラれてはいるので一応そう言っている。)
三人目の記憶も掘り起こそうとしたけれど、珍しくお客さんがきたのでこの話の続きはまた今度で。
「いらっしゃいませー。」




