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『日本改造計画』外伝:その陸<『多夫多妻』ドラマ(4)托卵>

「こちらが、遺伝子鑑定結果になります。どうぞ。」

「何だ。俺の子供じゃないのか。ダメだろ嘘ついちゃ。」

「ウソじゃないわよ! あんたこそウソつくな!」

 女性から怒鳴られる医師だった。

「奥様、遺伝子は、嘘をつきません。嘘をつくのは、人間です。」

「ふざけんな!」

「俺の子供じゃないなら、養育費は一切出さない。嘘ついたお前も出ていけ。

 誰と一緒に住むか、誰を養育するか、全て自由に決めてよい。憲法で決まっている。

 後は、知ったこっちゃない。出ていかないなら、不法侵入だ。」

「ひどスギる!」

 言い争う声をBGMに病室を後にする二人だった。

「お困りの様デスネ。……ワタクシ、こう言うものです。」

「『ココロのスキマ、お埋めします』?」

 男性の「弁護士先生が何か?」は、「『ココロのスキマ、お埋めします』?」と聞こえた様な気がしたが、きっと気のせいだろう。

 某セールスマンとも無関係に相違ない。

「イエイエ先程から病室からとても大きな声が聞こえてきまして。……托卵なんでしょ。」

「ほぉ、知らなかったな。最近の弁護士の仕事は、立ち聞きだとはな。」

「しかし、私は弁護士。契約さえ頂ければ、それさえ『守秘義務』します。

 それに、今回の件、落としどころが難しいでしょう。プロの手を借りませんか。」

「何か、プランがあるのだな。弁護士先生には。」

「それには、打ち合わせが必要です。近くに喫茶店があります。場所を変えませんか。」

「よし。場所を変えよう。だが、プランを聞くだけだ。契約はその後で検討する。」

「勿論です。では、ご案内いたします。こちらへどうぞ。」


 * * * 


 今日だけで、10組の両親子供を遺伝子鑑定した。

 その内4組が『托卵』……夫以外の男の遺伝子で産んだ子供を夫の子供と詐称していた。

 正直、うんざりだ。こんな醜い言い争いを見せつけられるのは。

 しかも、病院の待合室に弁護士が徘徊するする始末。

 更に、弁護士から病院内の看護師に『付け届け』が、成されている。

 すると、徘徊する弁護士を注意する者もいない。

 ちなみに、『遺伝子鑑定』の予約時間まで、内通者の手で漏洩する始末だった。

 しかし、それ以上に問題なのは、『アノ』総統閣下だ。

 まさか、こうなる事を知っていたのか。

 知っていたから『遺伝子鑑定義務化無償化』したのか。

 が、『遺伝子鑑定専門医院』などというニッチな病院と言うだけで食べていける。

 それも『遺伝子鑑定義務化無償化』に伴い、国から補助金が出ている。

 その事に感謝しろとでも言いたいのか。『アノ』総統閣下。


 * * * 


「結論から申しますと夫は、誰をどれだけ養育するか決定する権利がございます。

 よって、その根拠がなんであっても『合憲』となります。

 『自分の遺伝子を継いでいる子供』。『自分の遺伝子を継いでいる子供を産んだ』。

 これらは、典型的な根拠になります。他人の子供を養育する義務はありません。」

「ジョォーーダンじゃないっ! 夫婦なのに! ヒドすぎる!」

「奥様、これは憲法規定です。それに、奥様が、何人関係を持っても合憲。

 旦那様が、何人関係を持っても合憲。これが、『多夫多妻』です。

 そこで、私の提案が成立する訳です。」

「そう、それを聞きたかった。どんな提案だね。」

「まず、『別居』と言う形をとるべきでしょう。お住まいは、所有権をお持ちの方が、

 自由になされば宜しいかと。これで、夫婦平等となります。」

「そうか。じゃあ、住居の手続きがあるから失礼してもいいかな。」

 そう言いおいて、、さっさとその場を後にした夫だった。

「はい。問題ございません。」

「こら! カッテにかえるな! 金よこせ!」

「奥様、お話は終わっておりません。」

「何のハナシよ!」

「奥様が、産んだ子供の遺伝子上の父親を教えて下さい。こちらで手続きを代行します。」

「………………分からないわ。」

「ああ……相手が多すぎて誰だかわからない。と言うケースですね。」

「人聞きのワルイこと言わない!」

「分かりました。通話、メールの発着信履歴をコピーさせてください。

 そうすれば、後はこちらで調査いたします。」


 * * * 


「ワタクシ、こう言うものです。」

「『ココロのスキマ、お埋めします』?」

 男性の「弁護士先生が何か?」は、「『ココロのスキマ、お埋めします』?」と聞こえた様な気がしたが、きっと気のせいだろう。

 某セールスマンとも無関係に相違ない。

「実は、ワタクシの依頼人が、貴方を強姦罪で訴えております。」

「知らんよ。そんなに言うなら証拠見せろ。」

「ですから、証拠としてあなたの遺伝子を取らせて頂きます。」

「子供ができたのか。それこそ知らんよ。」

「では、法廷に出ますか。遺伝子鑑定は、こちらで費用並びに手続きを代行します。

 貴方は、遺伝子を提供するだけです。さぁ。」

 やむなく、綿棒をしゃぶって、遺伝子を提供した男だった。


 * * * 


「奥様、こちらが調査結果になります。」

「まったく……さんざん待たせやがって……え! これっぽっち! ショボいわよ!」

「確かに間違いなく遺伝子は、父親であると証明しました。

 養育費も月6万円。子供が18歳になるまで支払う。これが、限界でした。」

「ふっざけるなぁぁぁっっっ! こっちは、やらせてやったのにぃっ!

 たったの6万円! けちくそヤロウ! 10マンよこせぇぇぇぇぇぇっ!」

「では、失礼致します。」


 * * * 


「やれやれ……。」

「お疲れ様です。センセイ。」

 事務所に戻った弁護士を粗茶で出迎える秘書だった。

「ありがとう。」

「しかし多いですよね托卵奥さん。むしろ、よく相手が見つかりましたよね。センセイ。」

「確かに今回は、発着信履歴に残っていた男性は、30人でした。

 それも、出産日から逆算した妊娠日前後10日程度の期間で絞りましたがね。」

「そんなに! いわゆる『ビッチ』じゃなあいですか!」

「しかし、その30人全員と合致しませんでした。」

「はぁ? それ以上の『クソビッチ』だったと言う訳ですか。つか、誰だったんです。」

「奥さんが、直接連絡を取った訳ではありません。合コンの参加者でした。

 特定するのも大変でした。結局、クルマ君の力を借りてようやくでした。」

「意外と役に立ちますね。あの『へっぽこ探偵』。」

「しかし、まだ仕事が終わった訳ではありません。国に報告書を提出しないと。」

「報告書を提出しないと、国から補助金をもらいそこないますものね。センセイ。」

「君、今日は早めに上がっても構いませんよ。私は、報告書を仕上げますから。」

「はぁい。センセイ。」


<END>


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