トキオ宅 風呂場『~ モノローグ ~』
『 トキオの場合 』
「それじゃ俺は失礼する。
君たち、本気とは思っていないが、あまり無茶はするなよ」
マモルが去っていく。
そうだよ、本気じゃないよね?
違うよね?
ち、違うって言えよこの野郎!
「大丈夫ですよ、トキオくん。
俺たちは本気ですよ」
ぬぁああーー!!
こいつらー!!
「ぜ!絶対ダメですからね!
家、丸ごと吹き飛ばすとか!!」
「どうやら分かっていないようですね、トキオくん」
「はぁ?」
「トキオくん。あなたは呪われているんですよ。
それは自分で言い出したことです。
そうですよね?」
「は、はい・・・」
「そしてまだ幸運にも、あなたは呪われていない!
そうですよね?」
「はい」
「という事は呪いごと吹き飛ばせばいいんですよ!
そうでしょ!」
は?
「そうなりますよね!トキオくん!」
「の、呪いごと吹き飛ばすというのは・・・僕も一緒にって事ですか?」
「ですね」
ですねって、あんた・・・
「大丈夫ですよトキオくん。
まずこれから、あなたは自分の部屋に行ってください」
「はぁ・・・」
「そして、ありったけの服を着るのです。
いわゆる雪だるま状態です。
あ!ヘルメットはかぶってて下さいね。表情を撮ってるから」
「はぁ・・・」
「そして布団の中でスタンバイしてください」
「はい」
「で、われわれ一階の爆破班により粉塵爆発を誘発し、全てを吹き飛ばすのです。
わかりましたね!
じゃ!さっそく行動開始!」
ブラザー兄が人差し指をスッと頭上へ上げる。
「おぉおおう!!」
ブラザー弟とナジミが片手を上げて叫ぶ。
「行くわよ!トキオ!」
ナジミがオレの腕を掴み、体を起こす。
股間と乳首の盛り重曹が、ハラハラと落ちる。
「兄よ!これだと粉が足りないみたい」
ブラザー弟が重曹の袋を覗き込む。
「だな!弟よ!」
「キッチンに小麦粉があるわよ!」
ナジミがオレを引っ張りながら言う。
バカ!ナジミ!
お前は余計な事を言うんじゃない!
「さすがナジミさん!
弟よ!キッチンに行って、もっと粉を探そう!」
「おう!兄よ!粉を集めて盛大に吹っ飛ばそう!」
「さ!アタシたちも準備するわよ!トキオ!」
ナジミがオレの背中を押す。
「ちょっと待てナジミ!」
ナジミがオレの背中を押しながら階段を上がり部屋に入る。
--- トキオの部屋 ---
「ナジミ、お前、マジなのか?」
「違うわよ!あの兄弟に話しを合わせてるだけよ!」
「ホントにそうか?」
「そうよ!だから早く服を着て!
それに風邪ひいちゃうわよ!」
「あ、ああ」
--- トキオの家 キッチン ---
「あった!兄よ!小麦粉だ!」
「おう!こっちは片栗粉とホットケーキミックスを見つけたぞ!弟よ!」
「兄よ!けっこうあるね!あ!強力粉も発見したよ!」
「いいぞ!弟よ!まだあるかもしれない!探そう!」
「おう!兄よ!」
--- トキオの部屋 『 トキオの場合 』---
「もう無理だ・・・ナジミ・・・」
だ、ダメだ・・・関節が、動かない・・・
体が息苦しい・・・
「そうね、上が25枚。下を12枚着せたわ。
もう限界っぽいわね」
オレは重ね着を繰り返し、風船が膨らんだようなパンパンの状態で、カメラ付きヘルメットをかぶっている。
立っているのがやっとだ。
「ナジミ・・・動きにくい・・・」
「そうね。このままじゃ布団の中には入れないわね!
待ってて、トキオ!下から兄弟を連れて来るわ!」
ナジミが階段を駆け下りる。
「あ、ちょ!ナジミ!」
オレはナジミをヨチヨチ歩きで追いかける。
すると、
「帰ったぞ!トキオ!」
玄関からオヤジの声がする。
「トキオ、ごめん!話し込んでて遅くなった!
ん?電気が付かないぞ!停電してるのか?」
ちょっと待って!オヤジ!
今、説明する!
オレはヨチヨチ歩きで階段を降りる。
とその時、
あ。
オレは階段を踏み外す。
ドドドドッド!
階段と手すり、そして壁に全身を打ち付けながら転げ落ちる。
幸いにも体と頭はガードされているので痛みは少ない。
が、
ドドドッ!ドッカーンッ!!
オレは床に頭から激突し、強い衝撃を受ける。
意識が遠のいていくのを感じた。
「ト!トキオッ!大丈夫!!?」
「何だ!?どうした!トキオか!?」
ナジミとオヤジの声が遠くで聞こえた気がした・・・
--- 病院 ---
「先生!息子は?大丈夫でしょうか?」
「お父様ですか?」
「はい」
「息子さんは大丈夫です。
厚着してたのとヘルメットをかぶっていたようですので。
ですが、」
「ですが?」
「どうやら記憶喪失になっているようです」
「え?」
「これが一過性のものかどうかは様子を見なければ分かりませんが・・・」
「おじさん。
トキオ・・・記憶喪失なの?」
「みたいだ。ナジミちゃん」
「先生!トキオ!治りますよね!?」
「まだ、なんとも・・・しばらく様子を見るしかありませんね」
--- 病室 『 トキオの場合 』---
目の前に、中年の男女と若い女性の3人がいる。
それぞれが心配そうな表情で、順番に顔を覗き込んでくる。
見たことも無い人たちだ。
だか、それは記憶に無いだけで、本来は知り合いだという。
どうやら話しによると、
中年の男女は、お父さんとお母さん。
若い女性の3人は、
幼馴染、姉、恋人らしい。
これから家へ帰るのだという。
見たことのない人たちとの生活が始まるのだ。
不安がいっぱいだ。
一体、どうなるのだろう・・・




