トキオ宅 『~ モノローグ ~』その2
『殺し屋の場合』
「お前1人か?」
私が気づくと男が問いかけてきた。
両手足を後ろ手に縛られ、暗視ゴーグルは外されている。
こいつ。
動画でノッペラボウと呼ばれていた男だ。
向こうにいる女は、メガネも無く髪型も違うが、状況からするとスタンガンの女か?
「答えろ。お前の他に仲間はいるのか?」
何だこいつは?
動きは本物だがシロウトなのか?
私がペラペラと喋るわけがない。
「マモル。アタシにまかせて」
女はそう言うと門の外に出て行く。
この男、マモルって名前なのか。
女がすぐに戻って来る。
「何だそれ?」
マモルが女に聞く。
「ウンコよ。犬のウンコよ」
女が答える。
は?
ウンコ?
何?
こ、この女・・・
それで何をしようと言うの?
ちょちょ、ちょっと!
いや、
ま、まさか!
まかさね!
そんな事あり得ない!
「どうするんだ?それ?」
マモルが女に聞く。
ウソだろ?
違うよな!違うだろ?
違うと言ってくれ!!
「これをこうやって、顔に近づけるのよ」
バ、バカ!!
やめろ!
何て事すんだ!この女!!
こ、こ、殺し屋だぞ!
私は殺し屋だぞ!
普通、拷問だろ!ここは!
痛みつけて吐かせる拷問だろ!
そ、そうだ!映画だ!
何でもいい!その手の映画だ!
なんかのスパイ映画を思い出せ!
映画の拷問シーンを!!
そういう事じゃないだろ!!
「ほら、焦ってるわ」
よ、よせ!
ヤメロ!!
近づけるな!
「いい?よく見てて。
この鼻と口の間に接触させるわ」
て、てめぇ!!
なんて事すんだ!!
ヤメロ!!
「あー、もう!
マモル!顔、押さえてて!」
「・・・わかった」
男が私の頭を両手でがっちりと固定する。
バカヤロウ!!
んな事あるか!!
こんな拷問あるか!
ざけんなよ!てめえら!!
「うん、それでいいわ」
「だが、これで喋るとは思えない・・・」
「甘いわね、マモル」
「え?」
「肉体的ダメージは少なくても、精神的ダメージはどう?」
「精神的ダメージ?」
「そうよ。
このウンコを鼻と口の間に接触させる感覚は一生のトラウマになるわ。
それが女性ならなおさらよ」
「た、たしかに・・・」
な!?
何が!た、たしかに・・・だ!!
ふざけんな!!
おまえら!
「さ、カウントダウンを開始するわ。
100からよ」
「長いな」
「当然でしょ。
まずは臭いからよ。
臭いをどっぷりと嗅がして、記憶に刻み込むのよ」
「そして、接触・・・か」
「そうよ」
な!なにが、接触・・・か、だ!!
バカだろ!
お前ら、バカだろ!!
「さ、始めるわよ。
まずは、スレスレを責めるわ」
「そんなに近づけると接触するぞ」
「大丈夫よ、多少の接触は接触のうちに入らないわ」
もうヤメロ!
ヤメテくれ!!
気がおかしくなりそうだ・・・
「や・・・やめろ・・・
わかった・・・話す」
私は拷問に屈した。
『マモルの場合』
「や、やめろ・・・
わかった・・・話す」
女の殺し屋が諦めた表情でつぶやく。
なんて事だ。
本当に降参しやがった・・・
「よし、話せ」
「私は、1人よ」
「ここがどうやって分かった?」
「動画の兄弟から情報を得たの。
標的に近づくには、まずあの兄弟を追うことよ。
それでここまで来たってわけ」
「で?
どこまで知ってるんだ?」
「・・・・・」
女の殺し屋が黙る。
「ナジミ、それをよこせ」
俺がゴミ拾いトングを指差す。
「わ、わかった!
ヤメて!
それはヤメて!」
「だったら話せ」
「まだよ、まだそこまでしか分かっていないわ。
本当よ」
そうか・・・
それが本当なら・・・
「だったら決着をつけよう」
「決着?」
「そうだ。
お前は殺し屋だ。
標的を仕留めるまでやめない。
そうだろ?」
「・・・ええ」
一か八か、やるしかない。
「標的の三度笠は、俺だ」
「え?」
「俺が、三度笠の殺し屋だ」




