パーポーシャボン 『ハナの場合』
--- 兄弟の車が止めてあるコインパーキング ---
「みんな!ちょっと待ってて!
すぐ済むから!」
ナジミが警察官を追いかける。
おかっぱ頭の弟とその兄は車に乗る。
ユイが後部座席へ座る。
わたしがユイの隣へ座りかけた時、
「ハナちゃん!」
ボサボサ頭のトキオが、わたしに声をかける。
え?
「ちょと、いいかな?」
何よ?
「ごめんユイ、ちょっと行ってくる」
「うん」
バタン。
わたしは車のドアを閉める。
「ちょっとこっちへ」
ボサボサ頭が手招きする。
「なによ?」
「実は言わなくちゃいけない事があって」
「何?」
早く言え!
わたしは一刻も早く家に帰りたいのよ!
「オレ、仮面を付けたんだよね」
「は?」
「いや、だから、オレ、呪いの仮面を付けたから、
あと2日で呪われるんだよ。
だから言うけど、オレが好きなのはハナちゃんなんだ」
「は?」
はぁー!?
なに言ってんのお前?
「あのラブレターはナジミが間違えてユイちゃんのカバンに入れたんだ。
本当はハナちゃんに渡すはずだったんだよ」
「は?」
はぁー!?
何なんだよおめぇー!
てか、あんなラブレター貰っても嬉しくねぇーし!
てか、おめーの事なんか全然知らなかったし!
なに言ってんの!このボサボサ頭!
しかもそれ今、言う必要ある?
「2日後、オレどうなるか分かんないし・・・
だから、今のうちに言っておこうと思って」
どーもならねぇよ!
呪いなんてねーし!
あの仮面、チンピラの作り物やし!
「あ、あの、それだけ。
じゃ、帰ろうか」
な、なんなのよコイツ。
一方的に喋りやがって。
てか、わたしのこと好きって・・・
じゃユイはどうなんのよ?
いや!
違う違う。
ん?待てよ!
てことは、ボサボサ頭はユイの事を好きじゃないってこと?
ユイの片思いってこと?
確かにコイツ、今まで要所要所におかしな言動があった。
これで辻褄が合う。
のか?
ボサボサ頭のトキオとわたしは車に乗る。
向こうでナジミが警官のマモルと写真を撮っているのが見える。
「ねぇ、トキオくん。
連絡先って教えてもらえるかな?」
え!ちょっとユイ!
「ユイちゃん、ダメだ。教えない」
お?
「だってトキオくん!
今日みたいなことがあった時に、」
「だ、だから・・・ユイちゃん。
もうこんな事はあっちゃダメなんだよ」
「・・・トキオ、くん」
「今、大事な時期だし・・・
やっぱり会わない方がいいと思う」
そ、そうよ!
ボサボサ頭!あんたいいこと言うじゃない!
こういう展開をわたしは待っていたのよ!!
「ごめん、ユイちゃん」
「・・・・・」
ユイが下を向く。
耐えるのよユイ!
大丈夫!
時間が解決してくれるわ!
わたしもそばにいるから!
ナジミが警察官に手を振って戻ってくる。
バタン!
ナジミが車に乗り込む。
「お待たせ!
じゃ、帰ろう!」
--- 車内 ---
重い沈黙が流れる。
「ねぇ、なんか様子が変なんだけど。
何かあったの?」
ナジミが聞く。
「そこのメンズが美少女に別れ話しをしたんだよ」
助手席のおかっぱ頭が答える。
「え?そうなの?
トキオ・・・」
ナジミが驚く。
「あ、うん・・・
オレ、あと2日で運命が変わるんだ・・・」
「は?トキオ、それどういうこと?」
「オレ、さっき呪いの仮面を付けたんだ」
「何それ?」
「これ」
トキオが呪いの仮面をナジミの目の前に出す。
「くさ!
何それ!くっさー!
しかも気持ち悪いよ!」
ナジミが鼻を曲げる。
「これは、ムラサキさんから貰った首狩り族の仮面で本物の人間の皮でできているんだ。
この仮面を付けた人は2日後に呪われるんだ・・・」
いや違うし。
それ、作りもんやし。
「ねぇトキオくん。
もしかしてその理由で私ともう会わないって言ってるの?」
ユイが尋ねる。
「うん。それもある」
「呪い・・・
トキオくん、それウソだよ!」
ユイが叫ぶ。
そりゃそうやろ。
あるわけ無いやろ。
呪いなんて。
「私!付き添う!
トキオくんに2日間、付き添うわ!」
え?
「ちょ!ちょっとユイ!
なに言ってんの!」
「私がトキオくんに付いててあげる!
トキオくんを呪わせたりしないわ!!」
「あ!いや、ユイ!違うのよ。あれは作りも、」
「ちょと待ったぁああー!!」
運転中の兄が叫ぶ。
「どうした!兄よ!」
弟がびっくりする。
てか、わたしもビビったわよ!
「話しは聞かせてもらった!
その案件、この廃墟ブラザーズが引き受けましょう!」
は?
引き受けるってなに?
「呪いの仮面・・・
面白いじゃないですか。
本当に2日後に呪われるのか検証しましょう!
我々が密着します!」
「お!いいね!兄!
2日後に呪われる男!完全密着!!
ザ・呪いの仮面!!」
「おう!いけるぞ!弟よ!」
「何なのよ!あんた達!
勝手に話しを進めないでくれる!」
ナジミがブラザーズに喰ってかかる。
「いや、断れませんよ。
あなた達にはね!」
兄が声を張る。
「どういう事よ?」
「我々兄弟はあなた達に巻き込まれた。
そして車もカメラも壊された。
これ、あなた達に弁償できますか?」
は?
車もカメラも壊されたって何?
この人なんのこと言ってんの?
ナジミを見ると下を向いている。
「ま、家にはまだカメラあるんですけどね。
だけどカメラってあなた達が思ってるよりも、遥かにお高いんですよ?
特にレンズが・・・」
一同静まる。
「それをチャラにしてあげましょう!と言っておるのですよ!」
「言っている意味がよく分からな、」
「ト!トキオ!」
トキオの言葉をナジミがさえぎる。
「トキオ、密着されなさい!
そうすれば安心よ!誰かと一緒にいた方いいわ!」
「密着ってお前・・・」
そ、そうだわ!
この男たちに密着させれば、ユイが一緒にいなくてもいいんだわ!
「相田くん、わたしもそれがいいと思う」
どうせ呪いなんてウソやし!
何回も言うけどそれ、チンピラの作りもんやし!
ただ平凡に2日間過ぎていくだけやし!
「どうやらお決まりのようですね!
よし!やるぞ!弟よ!」
「おう!兄よ!」




