パーポーシャボン 『トキオの場合』
--- パーポーシャボンの前 ---
「おい、ナジミ。
一体どうなってんだよ?」
「それはこっちが聞きたいわよ!」
風俗店からゾロゾロと出てくる人達に混ざってオレたちも店から出る。
オレはナジミにしか聞こえない小声で聞く。
「その眉毛の無い男、誰だよ?」
「警官のマモルよ」
「警官のマモル?って、
あの警察官?」
「ストーカーじゃなかったのよ」
え?
そうなのか?
明らかに怪しかったぞ。
違うのか?
「だってナジミを車に連れ込んだじゃないか」
「あれは一緒に連れ込まれたのよ。
マモルは巻き込まれて今に至るのよ」
「今にいたるって、お前。
警官なんだろ?
2人で何やってんだよ?」
「なんか、警官、終わったんだって。
あの人」
「終わったって、どういう意味だよ?
辞めたってことか?」
「知らないわよ。そんなこと。
それよりトキオ!
スマホを見せて!」
「あ、うん・・・」
オレはナジミにスマホを見せる。
スマホの画面には追跡アプリの地図が表示されている。
「あ!動いてる!」
その声にムラサキとタツノスケが反応する。
2人がスマホをのぞき込む。
「姐さん、あっちです・・・」
タツノスケが指差す。
その指差した方向に一人の男が片足を引きずって歩いている。
手にはナジミのカバンを持っている。
あ!あれは!
入り口にいた男だ!
店の入り口でタツノスケとオレに挨拶していた男だ!
「・・・タツノスケ」
ムラサキがつぶやく。
「分かってます、姐さん。
おいマサ、行くぞ」
「了解ッス!兄貴!」
2人が駆けだす。
あっ、という間だった。
タツノスケたちに気づいた男は逃げようとするが、2人にすぐにねじ伏せられた。
男は両手を後ろ手にねじ上げられながらこちらに向かってくる。
ムラサキが男に近づく。
「俺は何も喋んないぜ・・・」
男が下を向いて小声でつぶやく。
タツノスケの手には男から奪ったカバンがある。
「あ!それアタシの!」
ナジミが叫ぶ。
「返してやりな」
ムラサキが男から視線を外さずに言う。
ナジミがカバンを受け取る。
中を確認して「あった」と笑顔でつぶやく。
「あ、そうだ!」
ナジミがスタンガンをムラサキに差し出す。
「あの、コレ、どうぞ」
「ん?」
ムラサキが不思議な表情をする。
「その人、顔にコレ当てると何でも喋りますよ」
「バ!バカ!よせ!やめろッ!」
「ありがとよ、嬢ちゃん。
マサ!その男を連れて行きな!
タツノスケ!お前はすぐに店の後始末を頼む。
警報を止めろ。うるさくてかなわん」
「分かりました、姐さん」
「それと、あんたら・・・
この後は、どうするんだい?」
ムラサキがオレたちに尋ねる。
「どうするって?」
オレが問い返す。
「警察に行くのかい?」
そ、そうだ!
無我夢中でこの後の事なんてすっかり忘れてた。
ハナちゃんと警察には行かないって決めてこうなった。
でも、今ここにはナジミと一緒に警官がいる。
たぶんそれを言うと、ムラサキたちがパニックになるから誰も言わないのだろう。
警官のマモルが一歩出る。
「いや、警察には行かない。
みんな、それでいいな?」
マモルがつぶやくように、だが、しっかりと言う。
みんなが顔を見合わせる。
それぞれが小さくうなずく。
「そうかい。
別にこっちはどちらでもいいんだけどね。
口裏を合わせるだけだから。
まずはあの男から話しを聞くことにするよ。
それじゃあね!」
ムラサキが片手を上げて去って行く。
「あ、そうそう!」
ムラサキが振り向く。
「あんた達!卒業して働く所が無かったらウチに来な!
雇ってやるよッ!」
ムラサキが嬉しそうに叫んだ。
いやいや、
行かないよ。




