パーポーシャボン 『マモルの場合』
--- パーポーシャボンの前 ---
「ナジミ!待てッ!」
ナジミが全速力でパーポーシャボンの入り口へ走る。
クソ!
なんて事だ!
ここにムラサキが居るとすると、
さっきトキオと入って行った男はタツと呼ばれる右腕だ。
それに中にいる組員を合わせると俺とナジミではムラサキの居る所まで行くことは不可能に近い。
無理だ。
止まれ!ナジミ!今ならまだ間に合う!
ナジミが入り口で立ち止まる。
よし!ナジミ!そのままこっちに引き返すんだッ!!
「な!なんだ嬢ちゃん!
何か用か?」
入り口の男が突然現れた女子高生にたじろぐ。
ナジミが無言でスタンガンを男の胸に押し当てる。
ナジミ!やめろッ!!
バチバチバチ!!!
「アガガガガ!!」
男が崩れるように倒れる。
ナジミが男に馬乗りになる。
「ムラサキはどこ!!」
「な、な、な、何いってんだ、てめぇ!」
「どこなの!!」
ナジミが男のこめかみにスタンガンをねじ込む。
「や!やめろ!か!顔はよせ!!
下だ!地下にいる!」
「地下ってどこ!!」
「左に入って突き当りだ!!」
ナジミが男から飛びのく。
俺は、起き上がろうとする男に飛び掛かり、スルリと首に腕を回し締め上げる。
「てめぇ!ぶっころ・・・」
男がガクンとなる。
落ちた・・・
ナジミが左の奥へ向かう。
「待て!ナジミ!」
「何だてめぇらぁッ!!」
奥から怒号をあげる男が現れた。
俺は気絶した男を抱え上げる。
「しゃがめ!ナジミ!!」
俺は抱え上げた男を放り投げる。
しゃがんだナジミの上を男が飛んでいく。
飛ぶ男が奥から出てきた男に激突する。
「うぎゃあぁあぁ!!」
押しつぶされた男は悲鳴をあげる。
それを見た突き当りの大きな鏡の前にいた男が叫ぶ。
「な!な!なんだッ!
殴り込みか!!!」
男は鏡を手前に引き、現れた階段を転げ落ちる勢いで何か叫びながら駆け下りる。
ナジミが男を追う。
だめだ!ナジミ!
行くなッ!!
クソ!!
俺はナジミを追う。
階段の途中でナジミが止まる。
振り向いたナジミが俺の目を見てつぶやく。
「・・・行くぞ、マモル」
その目を見て俺は悟った。
無駄だ。
この子を止めることはできない。
ならば俺が守り続けるしかない。
ここから脱け出すまでは・・・
ナジミがスタンガンを片手にゆっくりと地下の部屋に入り、つぶやいた。
「ムラサキってのは、あんたか?」
「て!てめぇ!」「ナジミッ!」「おい!ゴラッ!」
「何だお前ら!」「ナ!ナジミッ!!」
5人が同時に叫ぶ。
「待てッ!!!」
ムラサキが一喝する。
「全員動くなッ!!」
部屋の空気が張りつめる。
ムラサキが口を開く。
「どうなってる?
これは何の騒ぎだ?」
ナジミがゆっくりと一歩前に出る。
「アタシのスマホを取り返しに来た!」
ナジミがスタンガンでムラサキを差す。
スッと俺がナジミの真後ろに付く。
同時に組員の男たちが身構える。
「待て!!」
再び部屋の空気が張り詰める。
「まずは、お嬢ちゃん、その手に持ってる物騒なものを降ろしてくれるかい?」
ゆっくりとナジミがスタンガンを降ろす。
「ありがとよ。
それで、あんたのスマホってどういう事だい?」
「アタシのスマホをあなたの仲間が奪い取ってここに持ってきたのよ!」
「アタイの仲間が?」
「そうよ!アタシを連れ去ってまでして奪ったのよ!」
「・・・なるほどね。
そういう事か」
「どういう事よ?」
「・・・まず、
あんたを連れ去ったのはアタイの仲間じゃない。
アタイを裏切っている連中の仕業よ。
そいつらはなぜか、あんたのスマホをココに持ち込んだ。
そして、それを追跡アプリで見つけたのが、そこの2人ってことよ」
ナジミが場違いな若い2人を見てつぶやく。
「トキオ・・・ハナ先輩・・・」
ムラサキがタバコケースから一本取り出す。
「こりゃ参ったね。
アタイたち全員が裏切り者に引っ掻き回されてるってことよ」
全員が顔を見合わせる。
「そ、それで・・・アタシのスマホは、今どこにあるんですか?」
ナジミがムラサキにたずねる。
「それを見つける為に今から非常ベルを鳴らそうとしてたのよ」
「非常ベル?」
「そうよ、非常ベルを鳴らせば全員が建物から出てくるでしょ?
そうすればあんたのスマホは追跡アプリで見つけられるわ。
電源を切ったり、建物のどこかに隠していなければね」
「非常ベルはどこにあるんですか?」
「各階にある。地下は階段の横だ」
組員の男が指差す。
「ふ~ん」
ナジミが階段をのぞき込みボタンを押す。
ジリリリリリリ!!!!!
非常ベルが大音量を響かせる。
「あんた!何やってんのよ!」
ムラサキが叫ぶ。
「だってこれを押せばアタシのスマホが出てくるんでしょ!
それに、強く押すって書いてあんじゃない!」
「なに言ってんのよ、あんたは!
とにかくみんな外に出るわよ!」
「トキオ!トキオはその机の上のスマホを持って来て!
それ!トキオのスマホなんだから!!急いで!!」
ナジミが叫ぶ。
ムラサキと右腕のタツが視線を合わせる。
ムラサキがゆっくりうなずき、アゴで指す。
「持っていきな、三度笠さん」
トキオがスマホを取る。
全員が階段を上がる。
廊下に投げ飛ばした男と押しつぶされた男の姿はない。
非常ベルの音で外に出たのだろう。
全員が入り口に向かうと、建物からゾロゾロと人が外に出ている。
「ハ!ハナちゃん!トキオくん!!」
「ユイ!!」
車で待っているように言っていたユイが駆けよって来てハナと抱き合う。
外に向かう人の流れとは反対に、明らかに様子がおかしい2人の男が何か喋りながらこちらに向かって来る。
「さ~て!
それでは、これより我々は突入を開始致します!!
はい!では早速、中に入っちゃいましょー!」
何やってんだコイツら。




