歓楽街 『兄弟の兄の場合』
--- 車内 ---
オレはパーポーシャボンの斜め向かいにあるコインパーキングに車を止める。
「兄よ・・・」
「何だ弟・・・」
「ボクたち、どうなるのかなぁ?」
「さぁ・・・」
オレは目の前のネオン街を見てつぶやく。
「あ!」
「どうした弟よ?」
「そう言えば動画を消さなくちゃ!」
「そうだな、弟よ」
弟がスマホを操作する。
後ろの美少女さんは、斜め前のパーポーシャボンを見つめている。
「え!?」
弟が声を上げる。
「どうした弟よ?」
「今、動画は消したんだけど・・・」
「何だ?」
「なんか色々加工された動画が拡散されてる・・・」
弟がオレにスマホを見せる。
『ノッペラー&スタンガンガール!!』
♪~♪~♪~♪~
妙なタイトルとコミカルな曲に合わせて顔面蒼白の男とスタンガンの少女が動く。
「しかも兄よ・・・」
「何だ?」
「なんか、他にも色んなバージョンがある・・・」
「・・・どうすんだよ弟よ?」
「どうしよう?」
車内にしばらく沈黙と動画のコミカルな曲が流れる。
「あたし・・・」
後ろに座る美少女さんがつぶやく。
「行ってみようと思うの・・・」
「どこへ?」
「あのソープランドに・・・」
は?
なに言ってんの!?
ココで待ってろって言われたじゃない!!
ホラー映画じゃないんだから、じっとしてなさいよ!
てか、思うの・・・とか言うんだったら思うだけにしなさいよ!
「だ!ダメだよ!!」
弟が叫ぶ。
「でも・・・」
「どう考えても危険だよ!
ねぇ兄!」
「そうだよ。
それにオレたちが行っても何の役にも立たない」
そうだ、オレたち兄弟があそこに乗り込んだところで何になる。
というか何で乗り込まなくちゃいけない!
何の関係もないじゃないか!
見てよ!
この割れたフロントガラス!
クモの巣みたいになってんじゃん!
誰のせいでこうなったって思ってるんだ!
こっちは巻き込まれてるんだ!!
ジリリリリリリ!!!!!
何だ?
突然、けたたましい非常ベルの警報音が鳴りはじめた。
「兄よ!あの非常ベル、あのソープからだ!」
何?
火事か?
パーポーシャンボンの建物から、ゾロゾロと人が出てくる。
「私!行ってみます!」
後ろの美少女が車から飛び出す。
バタンッ!!
車のドアが閉まる。
美少女が駆けて行くのが見える。
あの子、けっこう足早いんだなー。
オレはぼんやり見つめる。
「兄よ・・・」
「何だ弟よ・・・」
「どうする?」
「そうだな・・・」
「・・・僕たちどうすればいいと思う?」
「弟よ・・・」
「何だい兄よ・・・」
「スマホの動画を、回してくれるか?」
「え?あっ!
わ、分かった兄よ、ちょっと待って・・・・
よし、回った!
いいぞ!兄よ!」
オレは一度だけ大きく深呼吸する。
スマホに視線を向ける。
「はい!どうもー!
廃墟ブラザーズです!!
はいッ!それでは、これより我々は風俗店へ突入を開始いたしまーす!!」




