賭博場 『タツノスケの場合』
--- 麻雀店の前 ---
「いいか、よく聞け。
俺が花瓶を割ったら、それが合図だ。
いいな?」
「はい」
「よし、それじゃ始める」
俺は麻雀店のドアを開ける。
店内の男たちの視線が俺に集まる。
6人?
いや奥にも2人?
奥の2人のどちらかがゴンか?
全部で8人・・・
「タ!タツの兄貴!!
ご苦労様っスッ!!」
男達が俺に挨拶をする。
俺はこくりとうなずく。
俺は花瓶の位置を確認する。
「タツの兄貴!
どうしたんです?こんな時間にめずらしい」
ん?
何だ?
この違和感は?
「ゴンはいるか?」
俺が手前の男に聞く。
「組長スか?奥に!」
奥の人影が動く。
「おう!タツノスケ!
久しぶりだな!」
ゴンが奥から出て来る。
一瞬、ゴンが視線を男達全員に向ける。
「おい!タツ!キサマ!兄貴分の俺を呼び捨てにするってのは、
どういう事か分かってんのかぁ?」
・・・バレてる。
客が一人もいない。
こいつら俺が来ることを知ってやがる。
自然に俺を取り囲んでいる。
これでは少年を中に呼び込めない。
どうすれば・・・
「あんたは破門された。
ここから出て行ってもらおうか」
「破門?んなこたぁどうでもいいことよ!
ここは俺のシマだ!俺の好きにさせてもらうぜ!」
ゴンがふところに手を入れる。
俺は一歩下がり腰を落とす。
と同時に全員が俺に襲い掛かってきた。
俺は真後ろの男を抱え上げて入り口のドアめがけて投げ飛ばす。
ドアが吹き飛ぶ勢いで開く。
ガシャバーーン!!
強烈な破裂音と共にドアに激突した男は、もんどり打ってエビ反るで倒れる。
俺は男たちを振り切ってドアから飛び出す。
三度笠の少年が立っている。
「逃げるぞ!サンド!!」
俺は階段を駆け下りる。
後ろから三度笠の少年も駆け下りる。
階段の下に、どデカイ男がぶっ倒れている。
ん?こいつは・・・
通行人たちが、ぶっ倒れている男を見て悲鳴を上げている。
スマホのカメラを向けている者がいる。
どこかに電話している者がいる。
俺と三度笠の少年は巨大な肉の塊を飛び越える。
「待てゴラぁーー!!」
後ろから男たちが追いかけてきた。
--- 路地裏 ---
「ハア!ハア!ハア!
ここまで来ればもういいだろう。
おい、大丈夫か?」
「ハア!ハア!
は、はい・・・」
少年が三度笠のアゴ紐に手をかける。
遠くで緊急車両のサイレンが鳴り響いている。
「お前が、お前がやったのか?」
「え?
何をですか?」
「階段の下の男だ。
デカイ男がぶっ倒れてただろ?」
「あ、あれは・・・」
「あの男はな、ゴンの右腕だ。
元力士で熊殺しのジョーと呼ばれる用心棒だ」
「く、熊殺し・・・?」
「ま、それは噂だろうが、
用心棒として腕が立つのは確かだ。
数々の修羅場を生き抜いてきた男だ」
「あ、あの人、
ドアに飛ばされて階段から落ちたんです」
「そ、そうか・・・
あの時の衝撃で、か・・・」
「な、中で・・・
何があったんですか?」
少年が三度笠と仮面を外す。
「バレてた・・・」
「え?」
「俺たちが行くことを奴らは知ってた」
「そ、そうなんですか?」
俺たちが麻雀店に行くことを知っていたのは、
姐さんと俺と少年と少女の4人だけだ。
なぜバレた?
もしかして・・・
あの後、マサに姐さんの所に行くように伝えた。
もし、姐さんがマサに俺たちの事を言っていたとしたら・・・
いや、マサが俺を裏切るはずがない。
そんな事は絶対にない。
だが、もし・・・
もしも、マサが裏切り者なら・・・
「おい!サンド!!」
「はい!」
「戻るぞ!!」
姐さんが危ない・・・




