マンション 『~ モノローグ ~』その2
『ユイの場合』
あ、あのおかっぱ頭の人!
動画の人だ!!
このマンションから出てきた!
間違いない!
「あの、すみません!
これって、あなたですよね?」
私がスマホの画面を男性に見せる。
「え、あ、えっと、はい。
ボ、ボクです。はい」
「この動画の場所、教えてもらえませんか?」
「え?場所?」
「あ、えっと、兄が、兄が運転してたから・・・
ボクは、横に乗ってたので・・・」
「お兄さんに聞けば分かりますか?」
「ええ、まあ・・・」
「お兄さんに合わせてもらえますか?」
「え?今から?」
「はい、だめでしょうか?」
「え、いや、あの~」
「私、そこで待ってますから、お兄さんを呼んでもらえないでしょうか?」
「え、あ、じゃ、待ってて下さい」
おかっぱ頭の男性がマンションへ入って行く。
ハナちゃん、トキオくん、ナジミちゃん。
これって一体どういう事なの?
何が起こっているの?
『廃墟ブラザーズ 兄の場合』
「あ!兄よ!た!大変な事になった!!」
弟がドタドタと玄関から上がり込んできた。
「バカッ!弟よ!くつ!靴!!
靴を脱げ!!」
「兄よ!下に美少女がいる!」
「は!?」
「動画を見た美少女が兄に会いたいって言ってる!!」
「はぁ!?」
「だから今すぐ行かなきゃ!
下で待ってるんだよ!」
「誰が?」
「美少女だよ!!」
「だから誰だよ!?」
「いいから!来い!兄よ!」
弟がオレの手を引いてマンションの1階へと降りる。
そこには、
美少女が、いた。
「あ、あの~突然すみません。
動画を見て、どうしてもお聞きしたいことがありまして・・・」
美少女が、喋った。
何てことだ・・・
これがSNSの力なのか!
こんなわずかな時間に!
絶世の美少女がオレたち廃墟ブラザーズに会いに来てくれるなんて!
ん?
この美少女・・・
何でオレたちの居場所を知ってるんだ?
これってもしかしてバレてる?
ゲッ!
まさかッ!
バズってるんじゃなくて、炎上してんのか?
オレたちヤバイ状態なのか?
「あの~、この動画はどこで撮られたんですか?」
「ど・・・どうしてですか?」
「この動画の人、知り合いなんです」
し!知り合い?
ヤバイ!ヤバいぞ!弟よ!
これヤバイやつだ!
オレたち捕まる!
一番見つかってはいけないヤバイ美少女だ!!
「し、知り合い?」
弟が一歩乗り出す。
「ノッペラボウとスタンガンの少女の?」
バカ!弟よ!
お前は余計なこと言うんじゃない!!
「ノッペラボウ?」
「そ、そう!眉毛が無い男とスタンガンを振り回す少女!」
だからお前は黙ってろ!!
「はい、その少女に会いたいんです」
「で、電話は?」
弟が電話をかけるジェスチャーをする。
「私、連絡先を知らないんです。
連絡先を知ってる人とは電話が繋がらないんです。
だから心配で・・・」
「兄!2人の場所、教えてやって!」
くっそ!
え~いもう、どうにでもなれ!
「わ、分かった」
オレは地図アプリを美少女に見せる。
「この山の中腹にある廃墟ホテルだよ」
「あ、ありがとうございます」
美少女も地図アプリを開き同じ場所を出す。
「もしかして君は、そこに行くつもりなの?」
オレが美少女にたずねる。
「はい」
「どうやって?」
「えっと、タクシーで・・・」
弟が慌てる。
「ちょ!それ無理でしょ!
ねぇ、兄よ!」
「なぜですか?」
美少女が首をかしげる。
「え、あ、夜に女の子が一人で廃墟ホテルに行くって言って、
連れて行ってくれるタクシーは無いと思うよ」
「そ、そうなんですか・・・」
「あ、兄よ!
オレたちが行こう!
オレたちでこの子を連れて行ってあげよう!」
「え?いいんですか?」
ちょ!ちょっと待て!弟!
それヤバイやろ!
フロントガラスが割れた車に女の子乗せて廃墟ホテルって、
しかもあそこ、元ラブホテルやぞ!
それもうお前、犯罪やろ!!
いや、待て!
待てよ。
そうだ!!
「あの2人はもう戻ってると思うよ。
あそこ、車あったし」
「え?そうなんですか?」
「そ!そうだ!兄!
覆面の男が乗ってきた車がある!」
「覆面の男?」
いや!だから弟よ!
お前は余計なことを言うんじゃないよ!!
「とにかくもう少し待ってみるといいよ。
きっと連絡取れるよ」
「あの~、そう言えば、あの動画ってどういう状況だったんですか?」
き!きたー!来ちまったー!
一番恐れていた質問がぁ!
どうする?
どうするよ?
何て言う!?
「それは、言えない。
ねぇ兄?」
「どうしてですか?」
バカ!弟よ!
ヤメロ!!
「あの女の子に口止めされてるから」
「口止め?」
バカヤロー!
何でもかんでも喋るんじゃないよ!!
結局全部、答えてんじゃねぇか!!弟よー!!
「やっぱり乗せて行ってくれませんか?
途中ですれ違うかもしれないし」
「いや、でも・・・」
「だったら私、警察に行きます!」
「え!いや!ちょっと、待って!」
ヤバい!ヤバい!
これ最悪の展開!
警察に行かれたらオレたち終わる!!
「兄よ!連れて行ってあげよう!
そんなに遠くないし!」
くっそ、仕方ない・・・
「わ、分かった・・・」
オレたち、廃墟ブラザーズと美少女は、
さっきまでいた廃墟ホテルへと再び向かった。
フロントガラスの割れた車で・・・




