廃墟 『ナジミの場合』その4
--- 廃墟ホテルの前 ---
「あと、どれくらいかかるの?」
アタシが懐中電灯でポリスメンの手元を照らしながら聞いた。
「もう少しだ」
ポリスメンはパンクしたタイヤを交換中だ。
覆面の男2人は車の中に縛って閉じ込めている。
「ねぇ、あなた、名前は何て言うの?」
「東琉寺マモル」
「トウリュウジ?」
「そう、東琉寺」
「長いわね・・・
マモルって呼ぶわ!
あたしはナジミ!よろしくね!」
「ああ、ナジミさん、よろしく」
一応このポリスメンの疑いは晴れた。
自己紹介ぐらいはしておいてもいいだろう。
てか、こいつ。
さっきから全然、作業が進んでなくね?
「ねぇタイヤの交換ってしたことあるの?」
「いや、無い」
ねぇーのかよ!
「出来るの?」
「いや、わからない」
わかんねーのかよ!
てか、どっちのわかんねーなんだよ!
出来るのかわかんねーのか、
タイヤの交換がわかんねーのかどっちなんだよ!?
いや、これアレだ!
両方わかんねーヤツだ!!
「よし!外れた!」
お!タイヤが外れた!
出来んじゃん!!
やりゃあ出来んじゃん!!
「あれ?」
ん?
あれ?って何だよ?
「ナジミさん、ちょっと懐中電灯を貸して?」
アタシがマモルに懐中電灯を渡す。
「うん、やっぱりだ」
「やっぱりって何がよ?」
「スペアタイヤが無い」
は!?
タイヤが!
無い!?
無いだと!?
何でおめーはタイヤ外す前に調べねぇんだよ!
どーすんだよ!
必死こいてタイヤ外して!
これ結構時間かかったぞ!!
4輪を3輪にしてどーすんのよ?
これお前、
バタン!
車の後部ドアが開いた。
「急げ!」
覆面の男たちが逃げた。
「マ!マモル!逃げたッ!!」
「くそ!」
ガサガサガサ!!
覆面の男たちが茂みに駆け込む音がする。
音の方向に懐中電灯を当てる。
茂みがゆれているが、2人の男は見えない。
「くそ!」
マモルが叫ぶ。
覆面の男たちは闇に紛れた。
なぜよ?
男たちの両手は縛っていたはずよ!
なぜ逃げられたの!?
てかコレどうすんの?
歩いて帰るの?
「あ!」
マモルが叫ぶ。
今度は何よ!
アタシがマモルの方を見ると暗闇で見えない。
「懐中電灯が切れた!」
マモルの声だけが聞こえた。
う!ウソやろ!
真っ暗やん!
どうすんのよ!!
「マ!マモル!どこ?」
「こ、ここ!ナジミさん!」
月明りでぼんやり人影が見える。
「マモル!手を伸ばして!」
「よ、よし!掴んだ!」
マモルがアタシの手を掴む。
「離さないでよ!マモル!」
「わ、わかった!ナジミさん!
まずは車の中まで移動しよう!」
「そうね!」
アタシたちは車内に移動する。
「マモル、これからどうするの?」
「明るくなるまで待つしか・・・」
それしか無い。
この暗がりの中、移動するのは危険だ。
ここは仕方がないが待つしかない。
「ナッ!ナジミさん!」
な、何よ!
急に大声出すんじゃないわよ!
ビックリするでしょ!!
「なによ?」
「く、車だ!車が来た!」
確かに車のライトが遠くに見える。
こちらに向かって来る。
だ、誰?
覆面男たちの仲間?
あのペラペラ喋ってたのは時間を稼ぐためだったの?
「どうする?マモル?」
「車から出て隠れよう」
「そうね」
アタシとマモルは車から出て、手をつないだまま茂みに隠れる。
車がゆっくりと近づく。
車のライトが丁度アタシたちの隠れている茂みを照らす。
「動いちゃダメよ!マモル!」
アタシがささやく。
「わかってる」
マモルの手に力が入るのが分かる。
バタン!
車のドアが開き誰かが降りてくる。
ヘッドライトの逆光の中に人影が見える。
「ナジミちゃん!?居る!?」
え!?
こ・・・この声は!
「ナジミちゃん!?居るの?」
ユ!ユイ!!




