賭博場 『トキオの場合』
--- 麻雀店の前 ---
「着いたぞ、ココの2階だ」
タツノスケと呼ばれていた男がアゴで指す。
マージャン屋?
ここにゴンっていう元組長が居るのか・・・
「いいか、これからお前は噂の殺し屋から本物の殺し屋になる。
男なら覚悟を決めろ」
は!?
あんた、お前は何もしなくていい。とか言ってたんじゃねぇの?
オレ、今から殺し屋になんの?
何を言ってんの?
「よし、それじゃ行こうか、
三度笠の殺し屋さん」
いやいやいや。
殺し屋さんってアンタ!
どうする?
てかオレ、一緒に階段上がってるし。
どうすんの?
「止まれ・・・」
タツノスケが階段の途中で振り向く。
「ここで、三度笠を被って仮面を付けろ。
お前の顔は絶対に見られるな。
いいか、声も出すなよ」
オレはコクリとうなずき、レインコートを脱ぎ階段に置く。
三度笠をかぶり、アゴひもをちょうちょ結びにする。
そして、呪いの・・・
呪いの・・・
仮面を・・・
「何してる、早く仮面を付けろ」
「でも、呪いが・・・」
「呪いなんてあるわけないだろ。
それが噂ってもんだ。
早く付けろ」
オレは呪いの仮面をつける。
くさ!
てか臭ぇ!めちゃくちゃ臭え!
というかコレ本物の死臭!!
呪われる前に臭さで頭がどうにかなりそう!
くっせー!!
「いいか、よく聞け。
俺が先に入る。
お前は合図をしたら中に入れ」
「合図?」
「そうだ。入ってすぐに花瓶がある。
俺が花瓶を割ったらそれが合図だ。
いいな?」
「はい」
「こういうのは演出が大事だ。
お前はゆっくりと入って一言も喋るな。
ただ立っていればいい。
後は全部俺がやる。
分かったな?」
「は、はい」
オッケー!
立ってればいいのね?
花瓶が割れたらマージャン屋の中に入って、
立ってればいいのね?
オッケーです!
「よし、それじゃ始める」
タツノスケがマージャン屋の中に入った。
よし、花瓶が割れるまで待てばいいんだな。
楽勝だ!
オレはマージャン屋のドアのそばまで来てスタンバイする。
中からの音に集中する。
もうすぐ花瓶が割れる。
そしたら、このドアを開けて中に、
「おい!お前!
そこで何してる!!」
え!?
どデカイ男が階段をゆっくりと上がってきた。
え?あ?
花瓶・・・
「何だてめぇ!
その格好は!!」
どデカイ男がすぐそばまでやってきた。
か、か、花瓶・・・
合図・・・
まだ割れてない・・・
「何してるか聞いてんだろが!!」
どデカイ男がドアの前まで来た。
オレを見下ろす。
というか三度笠でどデカイ男は見えない。
たぶんオレを見下ろしている。
「何なんだその格好は!
何とか言っ、」
ガシャバーーン!!
凄まじい勢いでマージャン屋のドアが開く。
どデカイ男はドアに吹き飛ばされ階段を転げ落ちる。
開いたドアからタツノスケが飛び出す。
「逃げるぞ!サンド!!」
タツノスケが階段を駆け下りる。
オレも一緒に駆け下りる。
途中で脱いであったレインコートをつかみ取る。
「待てゴラぁーー!!」
マージャン屋から男たちが飛び出す。
階段の下で悶絶している、どデカイ男をタツノスケとオレが飛び越える。
「待てー!」
背後から怒号が聞こえた。




