廃墟 『新人警察官の場合』
--- 廃墟ホテルの前 ---
「あなた!何してるの!」
女の子が叫ぶ。
僕は覆面男の首に腕を絡ませ締め上げる。
「こうすれば落ちる」
覆面男がガクンとなる。
女の子が驚く。
「大丈夫、気絶しただけだ」
車のライトが廃墟ホテルに近づいてくる。
犯人が車で戻って来た。
どうする?
まずは警察に連絡だ。
スマホ・・・
そうか、僕と女の子の所持品は回収されどこかへ持ち運ばれた・・・
この覆面男のスマホは?
僕は覆面男の上着やズボンのポケットを探る。
よし!あった!
スマホだ!
これで連絡・・・
ダメだ。
圏外・・・
電波が届かない。
くそ!
廃墟ホテルの前に車が入ってきた。
車はゆっくりと止まる。
どうする?
僕は警官だ。
いくら休日の勤務外とはいえ無茶はできない。
だがすでに覆面の男を気絶させている。
バタンッ!
車から2人の男が降りてきた。
2人か?
やはり仲間を呼んできたのか。
「はい!どうもー!」
な!何だ!?
この陽気な声は!
「廃墟ブラザーズの!廃墟探訪~!」
廃墟ブラザーズ?
こ、この人たちは犯人じゃない!
カメラで動画を撮っている。
それに強烈な明かりの照明器具だ!
「はい!今回はこちらの廃墟ホテル!
では早速、中に入っちゃいましょー!!」
こ、これは、動画をネットにアップロードする人たちだ!
こっちに入って来る!
どうする!?
止めるか?
そうだ!ここは止めるべきだ!
すぐにこの場を離れなければ!
車に乗せてもらおう!
警察に行くべきだ!
グズグズしてる暇はない!
よし!
「待って!」
ん?
立ち上がろうとする僕を女の子が止める。
「ダメよ。もう間に合わないわ」
女の子が外を指差す。
車のライトがこちらに向かって来るのが見えた。
くそ!
間違いない!
今度こそあれは犯人の車だ!
「うひょー!今にも幽霊が出てきそうですねぇー!
うわ!このビシャビシャのソファー!
座っちゃいますか?座っちゃいますか?
座っちゃいましょー!うひゃー!」
廃墟ホテルのロビーで動画投稿者の2人が強烈な照明器具を照らしてはしゃいでいる。
この2人はまだ犯人の車には気づいていない。
どうする?
今ならまだ、
「このまま様子を見ましょう」
え?
「あの人たちには悪いけど犯人のアジトを見つけるにはこのまま様子を見るしかないわ」
「アジト・・・」
「そうよ。アタシは、犯人のアジトに行かなくちゃならないの。絶対に」
え?
何を言っているんだこの子は?
「つ!冷てぇー!ケツがビシャビシャ!
うっひゃー!見てください皆さん!
この高価なビンテージ・ジーンズが濡れてビシャビシャ!
うっひゃひゃひゃ!え?
あ!
誰か来た!」
車が廃墟ホテルの前で止まる。
「お!弟よ!ヤベぇぞ!ビデオ止めろ止めろ!きっと管理人だ!!」
「あ、兄よ!逃げよう!また捕まる!!」
動画投稿者の2人が慌てて照明器具を消す。
車から降りてきたのはやはり覆面の男だ。
覆面男は、動画投稿者の2人が乗ってきた車の中を懐中電灯で照らして様子をうかがう。
ホテルの周りを何度か見回した後、ロビーへと入ってきた。
「誰かいるのかッ!?」
覆面男が叫ぶ。
「いるのは分かってる!早く出て来いッ!!」
反応はない。
動画投稿者の2人も息をひそめているようだ。
「いいかッ!
10秒だけ待ってやる!
それで出てこなければ外の車を破壊する!
残り8秒ッ!!」
覆面男が外に移動する。
反応はない。
動画投稿者の2人は様子をうかがっているようだ。
「時間切れだッ!」
ガシャーン!!
ガシャーン!!
覆面男の叫び声と破壊音が廃墟の森にこだまする。
バールのようなもので廃墟ブラザーズの車のフロントガラスを何度も叩き割る覆面男のシルエットが見える。
「やッ!やめて下さい!!」
動画投稿者の2人が出て行く。
「何だお前らは?ここで何してる?」
覆面の男がバールのようなもので動画投稿者の2人を指差す。
「お、オレたちは、
廃墟ブラザーズ!」
廃墟ブラザーズが現れた。




