放課後の校舎 4階渡り廊下 『ハナの場合』
--- 3年1組 ハナとユイの教室 ---
「ねぇハナちゃん。
ちょっと相談があるんだけど・・・」
休み時間に話しかけてきたのは2年の時に知り合い意気投合した親友のユイ。
おさげ髪でメガネをかけていつもマスクをしている。
性格はおとなしく目立つほうではないが成績は常にトップクラス。
「どうしたの?どんな相談?」
「ちょっと、こっち来て」
ユイが顔を近づけてささやく。
ユイと一緒に教室から出て人通りの少ない廊下の角に向かう。
ユイ、相談って何だろう?
手に持ってるのは・・・封筒?
「あのね、これ見てほしいんだけど・・・」
ユイが封筒を差し出す。
「何これ?」
「いいから、中、見てくれる?」
「うん・・・」
『あいしてるぜ、ベイビィ!
オレとつきあってくれベイベー!!
3年3組 相田トキオ』
な!
何これ!?
なにこれー!
てか誰?
アイダトキオ?
だれー!?
あ。
もしかして、一年の時に同じクラスだった男子?
あの、ボサボサ頭の?
「ねぇユイ、この人・・・知ってるの?」
「ん~、知ってるというか・・・」
「話したことあるの?」
「いや~、ない・・・かな?」
「ユイこれ、いたずらだよ!
絶対!いたずらだよ!」
間違いない!
いたずらに決まってる!
マジックで殴り書きって!
ベイベー?
なめとるやろ!!
「ユイ、これいつもらったの?」
「昨日、かな・・・」
「相田って人から、もらったの?」
「いや、鞄に入ってた」
「か!鞄に!!」
マジで!?
女子の鞄を開けてこのアホな手紙を突っ込んだってこと!?
ウソやろ!
アイダトキオ?
ありえんやろ!
この変態野郎!!
「よし、ユイ!
ついてきて!」
--- 3年3組 トキオの教室 ---
「ユイはわたしの後ろに居て!
いい?何も喋っちゃダメだからね!」
「うん、わかった・・・」
いた!
あいつだ!
あのボサボサ頭だ!
お!
ちょうどこっちに来た!
「ねぇ、相田くん!」
「へ?」
なにが「へ?」だ!
寝ぼけた顔しやがって!
「今日の放課後、話しがあるから4階の渡り廊下に来て」
「え?うん、わかった・・・」
何だこいつ!
ユイのこと全然見もしないで!
あんなアホ手紙渡しといて!
まるで他人事の顔しやがって!
あー!ムカついてきた!
--- 4階渡り廊下 ---
「だったら・・・
お願いします。
お付き合い・・・」
へえぇぇぇー!!!
ちょ、ちょ!変な声出た!!
「ちょと何言ってんのユイ!本気!?」
「うん」
「うん・・・って」
いやいや、待て待て!
こんなボサボサ頭の変態野郎とユイが付き合う!?
ウソやー!
学年トップクラスとボサボサ頭のサイコ野郎が付き合う!?
ウソやろー!
「ちょっと待ってユイ!
わたし達これから受験とかで大切な時期なのよ!
そんな、付き合うとか、そんな時間無いのよ!
わかってる!?」
「うん、わかってる」
「いや!ユイわかってない!!
だいたい相田くんもなんで今こんなもの渡すのよ!」
「あ、いや・・・」
あ、いやって何だよ!!
おめーがこんなもん渡すからユイおかしくなっちゃてんだろーうが!
どーすんだよ受験に影響でたら!
てか、こっちも巻き沿い食らってんだろうーが!
今、このくっだらねえ時間がもったいねーだろうーが!
くっそ!もういい!
「じゃ相田くん今度の日曜日ユイと会いなさい!」
「え!?デート?」
何が、え!?デート?だよ!このボサボサ頭!
アホみたいな顔してんじゃないわよ!
「違う!デートじゃないわよ!
ちゃんと話し合うってことよ!
わたしも付いてってやるから!!」
「え!?3人で?」
だから何が、え!?3人で?だ!この変態野郎!
寝ぼけた顔してんじゃないわよ!
「当たり前でしょ!
ユイと二人っきりなんてできるわけないじゃない!」