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ネジレコネクション  作者: サスペンダーケン
49/52

駅のはずれ 『トキオの場合』



--- 駅のはずれ 歓楽街 ---



キキッー!

ハナちゃんがブレーキ音と共に自転車を止める。


「相田くん・・・

 ホントにここで合ってるの?」


「う、うん・・・」


スマホ画面の地図にはナジミのアイコンがこの場所を示している。

オレとハナちゃんは建物を見上げる。


< 超高級ソープ・パーポーシャボン >


こ、これって、

風俗店・・・


「ど、どうしよう・・・」


「い、行くしかないわよ」


「行くしかないって、ハナちゃん」


「だってこの中にナジミが居るのよ!」


そうだ!

それは分かっている!

だけど、この領域はやはり警察に行くべきなんじゃないのか!?

高校生が入っていく場所ではない!


「ハナちゃん、やっぱりやめよう!この先は無理だよ!」


「ダメよ!相田くん!」


「え!?」


「だって見たでしょ!3人組の男たちが連れ去ったのよ!

 絶対に組織ぐるみなのよ!」


「・・・・・」


確かにそうだ。

オレもこの目で見た。

あのストーカー男は間違いなく警官だ。

そしてその仲間2人と共にナジミを連れ去った。

これは疑いようのない事実・・・

相手は警察組織だ。

だから警察に行ったとしても、うやむやにされる可能性が高い。


「相田くん・・・あなた今いくら持ってるの?」


「え?いくらって、300円ぐらいかな?」


「そう、わたしは、2,000円持っているわ!

 合わせて、2,300円よ!

 相田くんあなた!行ってきなさい!」


「え!?どこに!?」


「どこにって!ソープよ!

 2,300円あればきっと大丈夫よ!

 とにかく中に入ってナジミを助け出すのよ!」


「え!?」


ちょ!マジで!?

マジで言ってんの?ハナちゃん!

2,300円ってたぶん全然足りないと思うよ!

だって超高級とか書いてんだよ?

オレ、きっと袋叩きにあうよ!


「もー!考えてるヒマは無いわ!

 はい!これ!2,000円!

 これ持って早く行ってきなさい!」


ハナちゃんがオレの手に無理やり2,000円をねじ込む。


「う、うん・・・

 わかった・・・」


オレは腹をくくった。


2,300円を持ってこの中に入るとどうなるのか・・・

まったく見当はつかない。

だがやるしかない!

ナジミを救出するためだ!


オレは自転車の後部からゆっくりと降り、ネオンの看板がきらめく大人の入り口へと足を踏み入れる。


「ちょっと!あんたたち!!」

突然、建物の横から女性がヒョイと顔を出す。


え!?

何!ビビったぁー!!


「ごめん!ちょっと一服しようとしたら話しが聞こえちゃった!」

女性がタバコをふかしながら出てきた。


「どういう理由か知らないけど、自分の彼氏にソープに行けってのはちょっとどうかと思うわよ」


「か、彼氏なんかじゃありません!」

ハナちゃんが自転車に乗ったまま叫ぶ。


「しかも2,000円ぽっちじゃ追い出されるわよ。それに、あんたたち高校生でしょ?」


「ど、どうしても中に入らないといけないんです!」

ハナちゃんが自転車に乗ったまま叫ぶ。


「どうしてよ?」

女性がタバコをふかす。


「中にわたし達の友達が居るんです!」


「この中に?女の子?働いてるの?」


「いいえ!違います!

 この中に連れ去られたんです!」


「連れ去られた・・・?」

女性は少し考え込んだ。


「わかったわ・・・

 どうしても入りたいなら今、裏口が開いてるわ。

 あ、アタイの名はムラサキ。

 中で誰かに会ったら、ムラサキの連れと言えばいいわ」


「へ?

 いいんですか?」

ハナちゃんが拍子抜けした声を出す。


やったぞ!ここに来て天の助けだ!

中に入れる!

しかもこのムラサキって人のお墨付きだ!


オレとハナちゃんは、タバコをふかすムラサキさんに頭を下げ、

裏口から建物の中に入る。


「おい!なんだ!貴様らッ!!」


さっそく、本物の人がオレとハナちゃんを威嚇してきた。

しかしオレたちはムラサキさんのお墨付きなのでへっちゃらなのだ!


「あ、いや、あの~ムラサキさんの知り合いです」

オレがしどろもどろに答える。


「はぁ!?何言ってんだってめぇー!?

 なめてんのか!!

 ちょっとこっち来いッ!!」


オレとハナちゃんはあっけなく捕まった。





--- 地下1階 薄暗い部屋 ---


細く薄暗い廊下の突き当りに壁一面の大きな鏡が貼り付けてある。

本物の人が、鏡を引き開けると地下への階段が現れた。

いわゆる隠し扉だ。

オレとハナちゃんは階段を降り、地下の薄暗い部屋に連れ込まれた。


貫禄のあるゴッツい男を囲むように5人の男たちがいる。


「何だそいつらは?」

貫禄のあるゴッツい男が細い目でオレとハナちゃんを睨む。


「タツの兄貴!

 こいつら勝手に裏から入ってきやがったんス!」


「勝手に・・・?

 ちょっと、こっちに連れてこい」

貫禄のあるゴッツい男が静かに言う。


ヤバい・・・

オレたち終わる・・・

ハ、ハナちゃん・・・



ガチャガチャ。


ドアが開き、外でタバコを吸っていた女性のムラサキが薄暗い部屋に入ってきた。


「姐さんッ!!」

貫禄のある男と部屋にいる男たち全員が深々と頭を下げる。


ア、アネさん!?


え?

こ!この女!騙しやがった!!

この女!悪の一味だ!!

というか、なんなら親玉だ!!

騙してオレとハナちゃんを監禁しやがった!


て、ことは!!

ナジミとオレとハナちゃん3人とも捕まってしまった!!

クッソ!!


ムラサキは男たちに軽く片手を上げると奥の机のイスにドサッと座る。

オレとハナちゃんを上目遣いで睨む。

「で?お前たち、

 本当の目的は何だい?」

ムラサキがタバコをくわえる。


「姐さん、ここは禁煙です」

貫禄のあるゴッツい男が静かに言う。


「分かってるよ、タツノスケ。

 アタイは口にくわえてるだけだよ!

 火は点けちゃいないだろ!

 ったく、このやり取り何回やるつもりだよ!」


「そうは言いましても姐さん。

 俺は親分からしつこいぐらい言われてるもんで」


「もうその話しはいいよ!タツノスケ!

 で、お前たち、

 ここに来た目的は?」


「け、けい、警察、呼びますよ!!」

ハナちゃんが声を振り絞る。


「警察ぅ?」

ムラサキがニヤリとする。


「出来るもんならやってみな、お嬢ちゃん。

 警察が来たら捕まるのはあんた達なんだよ?」


「ど、どうしてですか!

 あなたは、わたしたちを監禁してるじゃないですか!」


「アタイはね、裏口が開いているって言っただけだよ。

 あんたたちを連れ込んじゃいないよ。

 入ったのはあんたたちの意思だ。

 それがどういう事か分かるかい?

 これはれっきとした不法侵入ってことだよ」


た、確かにそうかもしれない。

無理やり連れ込まれたわけじゃない。

オレとハナちゃんは裏口から中に入った。

そして捕まった。

侵入者を逃げないようにしていると言われても仕方がないかもしれない。


「ま、警察なんか呼ばせるわけないけどね。

 2人のスマホを回収しろ」

ムラサキが男たちに指示する。


「はい!」


男たちはハナちゃんのカバンを奪い取り中からスマホを取り出す。

そしてオレはレインコートをはぎ取られる。



!!?



薄暗い部屋に一瞬の沈黙と緊張感が張り詰める。


「お・・・お前は・・・!」

数人の男たちがオレの全身を見て身構える。


「ク、クリーナー・・・

 タツの兄貴!こ、こいつクリーナーですぜ・・・

 サンドのクリーナー・・・」


部屋がザワつく。


「サンドの?」

貫禄のあるゴッツい男が静かに言う。


「え、ええ。

 カフェの、カフェ事件の・・・」


周りの男たちが更にザワつき始める。


何だ?

この人たちは何を言ってるんだ?

どうなってる?

クリーナーって何だ?


「あんなものは噂だ」

貫禄のあるゴッツい男が静かに言う。


噂って?

もしかしてアレか?

強盗をやっつけた!とかってやつか?


「え、いや、でも、

 この、背中の三度笠・・・間違いないですぜ・・・」


「おい!お前!」

ムラサキがオレに向かって叫ぶ。

「噂ってのは本当なのかい?

 お前さんが、あの三度笠の殺し屋なのか?」


はぁ!?


オレが!?

こ、こ、殺し屋!?

何を言ってんだ?


貫禄のあるゴッツい男がオレの前に立つ。

「ちょっと待ってください、姐さん。

 まずこの男に、証明させます。

 お前はあの強盗の時、カフェに居たのか?」

貫禄のあるゴッツい男が静かに言う。


ど、どうしよう・・・


オレは正直にコクリとうなずく。


「そうか・・・

 それじゃ、強盗犯人の特徴を言えるか?」


え?

犯人の特徴?

んなもん分かるわけねぇだろ!

フルフェイスのヘルメットを被ってたんだぞ!!

顔なんか見てねーし!

何もかも一瞬だったんだぞ!

いや、

でも何か言わないと。

とにかく今は少しでも時間を稼がないと!

思い出せ!

何かあるはずだ!!

思い出すんだ!!



--- カフェ回想 ---


「う、う、撃つぞ!!!」

ヘルメット野郎のわずかに開いたフェイスシールドから汗まみれの震える頬が見える。


--- カフェ回想終了 ---



そうだ!!


「左の頬に、アザ・・・」

オレがつぶやく。


部屋に居る悪の男たち全員が固まる。

と同時に全員が胸元に手を入れる。


「待てッ!お前たち!!」

ムラサキが制す。

「タ!タツノスケ!

 ニュースに犯人の顔写真が出てたのかい?」

ムラサキが叫ぶ。


「いや、出ていません姐さん」


「それじゃ、逮捕時の映像に顔は?」


「一瞬だけ写りましたが、フードでほとんど見えせませんでした」


「そうかい・・・」


「タ、タツの兄貴!それじゃ、やっぱりこいつ本物ですぜ!」


薄暗い部屋に沈黙が広がる・・・

胸元に手を入れたまま男たちの数人がジリジリと後ずさる。


「ほ・・・本物なのかい・・・?

 あんた・・・」

ムラサキがゆっくりとタバコを口から外す。


どうしよう・・・


この人たち、完全にうわさ話しを信じてるんだ・・・

あんなのウソに決まってるやろ・・・

拳銃を吹き飛ばすとか毒矢とか姿を消すとか死臭がするとか、

んな事ありえんやろ・・・

てか、どうする・・・

オレだけならまだしも、ハナちゃんがいるんだぞ・・・

一体どうしたら、



「本物です・・・」


ハナちゃんがつぶやいた。

オレを含め全員がハナちゃんを見る。


「か!彼は!本物の殺し屋です!」

ハナちゃんが叫んだ。



え!?

えぇーー!!?






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