下校中 『ユイの場合』
--- ユイのマンション ---
プルルルル・・・
あ、電話だ。
ハナちゃんからだ。
「もしもし、ハナちゃん?」
『あ、ユイ!今、相田くんからナジミに連絡があって、
犯人が分かったって!!』
「え!?
犯人が、分かった!!」
『そう!
それで今、ユイのマンションの前に居るの!
ユイ、今から1階のエントランスに降りて来れる?』
「分かった!
すぐ降りる!!」
犯人が分かった?
え!?
誰かの知り合いって事?
私はエレベーターを飛び出しエントランスへと向かう。
ハナちゃんとナジミちゃんがいる。
「あ!ユイ!」
ハナちゃんが手を挙げる。
「ハナちゃん!ナジミちゃん!
え?
トキオくんは?」
「相田くんはもうすぐ来るわ!
あ!
ほら!来たわ!」
ボサボサ頭のトキオくんが走ってやってきた。
--- ユイのマンション エントランス ---
「遅いわよ!
それで!相田くん!
男の正体が分かったって!?
誰なのよ?」
ハナちゃんが肩で息をするトキオくんに向かって言う。
「こ、こ、これを見てよ!ハア!ハア!」
トキオくんは私たちにスマホを見せる。
動画が再生された。
画面には男がアパートに入るところが映し出されている。
ドアのカギを開けた男が一瞬こちらを向く。
え!?
スマホを持っているトキオくん以外の3人が同じ表情になる。
この人!!?
「え!?これって、あの警察官!!?」
私たちが声を上げる。
「そう!ストーカーはあの若い警官なんだ!」
え!?
どうして!?
あの若い警察官はとても親身に話しを聞いてくれた・・・
事細かに説明もしてくれた・・・
なのに・・・
どうして・・・
「ス!スゲーよ!トキオ!
これこそ決定的な証拠だ!!」
「だな!今すぐ警察に持っていこう!」
たぶん私があの若い警官と最初に会ったのは『カフェの強盗事件』。
強盗犯人を逮捕した後の混乱の中、ずっと私たちのそばに居てくれたのもあの若い警察官だった。
当然、警察は私の住所を把握している。
ストーカー行為はそれからしばらくしてからのことだ。
これを警察に持って行けば・・・
「ありがとう。
トキオくん・・・
これであの人が捕まれば、ひと安心ね」
そう、これでストーカーの恐怖から解放される。
これもみんなのおかげだ。
「ちょっと待って・・・」
ハナちゃんがスマホの画面を見たままつぶやく。
私たち3人がハナちゃんを見つめる。
「もし、あのもう一人の警官も仲間だったらどうするの?」
「え!?」
私たち3人が声をそろえる。
「この動画をあの交番に持って行って、もう一人の警官に見せて、
もしその警官がこの男を守ろうとしたら?」
「守る・・・?」
トキオくんがつぶやく。
「そう、証拠を隠滅することは簡単よ」
「ハナちゃん、それはちょっと考えすぎだよ。
さすがにそれは無いと思うよ?
だったら、ちょっと遠いけど交番じゃなくて警察署に持って行こうよ」
トキオくんが語る。
そう、トキオくんの言う通りよハナちゃん。
警察が証拠を隠滅なんてしないわ。
そんな事するわけない。
「いや、大きな所ほど、身内の不祥事を隠したがるものよ・・・」
どうしたの?ハナちゃん?
ハナちゃん、ちょっと最近はやりの急展開ドラマの見過ぎよ。
こう見えてハナちゃんって、素直というか何でも信じやすいというか・・・
「警察が信用できないって言うなら、どうすれば・・・」
トキオくんがつぶやく。
・・・・・。
わずかな時間、沈黙が続く。
「あ!
そんなの簡単よ!トキオ!」
何かを思いついたナジミちゃんがピンと指を立てる。
「捕まえればいいのよ!」
「え!?」
3人が声をあげる。
「このストーカーポリスメンを、
アタシたちで捕まえればいいのよ!!」
ナジミちゃんが片手でガッツポーズをする。
オレンジ色のリボンでむすんだポニーテールがゆれる。




