トキオの部屋 『ハナの場合』
なんだか流れで、わたし、トキオ、ナジミの3人が2階のトキオの部屋に集まっている。
親の2人は下のダイニングではしゃいでいる。
時折キャッキャと笑い声が聞こえる。
その幸せな空間とは真逆なのがこのトキオの部屋だ。
この凍りついたような空気の中、トキオが先陣を切った。
「いや~驚いたねぇ」
はぁ!?
あんたの感想なんか聞いてないわよ!ボサボサ頭!
それに前から思ってたけどその前髪なに!?うぜーんだよ!!
わたしがギロッとボサボサ頭を睨んだ。
「・・・」
ボサボサ頭は委縮してしまった。
ナジミがトキオのベッドにストンッと腰掛け2、3回上下に揺れる。
「そうですね。これからどうしましょう?」
何?この子は!?
その余裕は何なのよ!?
「まず、あなた!妹じゃないのね!!
どうしてそんなウソをついたの!!」
わたしは大きく腕を組む。
「あれは・・・
突然の流れで・・・」
ナジミがモゾモゾする。
この2人・・・
幼馴染なのよね・・・
わたしは2人を交互に見る。
「で?あなたたち、付き合ってるの?」
その瞬間、ナジミが小さくビクッとなるのをわたしは見逃さなかった。
「え!?オレたち?
付き合ってないよ。ナジミは妹みたいなもんだよ」
ボサボサ頭が慌てる。
「うん、まあ・・・付き合ってはいない、かな・・・」
ナジミが言葉をにごす。
ふ~ん・・・
そういう事ね・・・
「ナジミさんは、この家によく来るの?」
「いつもじゃないですけど、気が向いたら来てます。
落ち着くというか、小さいころからそうでしたから・・・」
へぇ~。
ボサボサ頭のこの男は相当な鈍感野郎ってわけね。
なるほど。
ボサボサ頭が机のイスを私にゆっくり近づける。
「ハナちゃん、これに座って」
わたしはイスに腰掛ける。
「そういえばあなた、わたしより歳が一つ下って聞いたけど・・・」
「オレ、早生まれなんだ」
「へー、そう」
わたしはイスをゆらゆら回転させる。
ボサボサ頭が机にもたれかかる。
「あの~、それで、ハナちゃん・・・もし、
もしだよ。
親が結婚するって言いだしたらどうする?」
何コイツ?
さっきから、どういうつもり!
あたしのことハナちゃん、ハナちゃんって、
馴れ馴れしいわね!
「別に・・・わたしはそれでもいいと思ってるわよ。
お母さんには幸せになって欲しいし。
あんなに喜んでるお母さん見るの久しぶりだし。
でも、まだ付き合ってる段階だから何とも言えないけど」
「そ、そうなんだ・・・
オレもオヤジには一人でいて欲しくないんだよね。
離婚してだいぶ経つし・・・」
そうか、もし親同士が結婚するってなるとこのボサボサ頭と一緒に住むことになるのか?
いやいや、
そんな直ぐに結婚なんてするわけない。
なぜなら自分の子供が高校3年という大事な時期だからだ。
そんな事をする親はどうかしている。
もし結婚するなら卒業後に決まってる。
それにわたしは卒業したら一人暮らしをすることになっている。
ボサボサ頭たちとのこういう接触も今だけ我慢すれば何とかなる。
「ま、とにかく、このことはユイには内緒よ!
学校であなた達と会っても基本、無視するから。
親同士が付き合ってるなんて絶対にバレないようにするのよ!!
2人とも、いいわね!」
「うん、わかった」
「ナジミさんは?」
「はい、わかりました」
よし、一応これで2人の口止めはできた。
しかし、ユイは・・・
ユイはボサボサ頭のことが好きだ。
初恋の人であるボサボサ頭に告白されて舞い上がっている。
やっぱりなんとかしなければ・・・
「ねえ、相田くん。
何か飲み物もらえるかしら。
喉かわいちゃったから」
「あ、うん。
何がいい?」
「何でもいいわ。
あるもので」
「アタシ!オレンジジュース!」
ナジミが手を上げる。
「ナジミ!お前は手伝えよ!」
「いや、ナジミさんはココにいて!
相田くんが持ってきてくれる?
わたしもオレンジジュースでいいから・・・
お願い!」
「え?
・・・うん、わかった。
じゃ、ちょっと待ってて・・・」
何か納得いかない様子のトキオが部屋を出る。
ガチャン。
ドアが閉まると、わたしはイスをナジミの方へ回転させる。
「で、ナジミさん。
あなた相田くんに伝えてるの?」
「え?何をですか?」
「相田くんのこと好きなんでしょ?」
「え?」
ナジミの顔がポッと赤くなる。
やっぱりね・・・
わたしの目はごまかせないわよ!
「言ってないの?」
「は、はい・・・」
そうか、
なるほど。
「言えば、今の関係が崩れそうで怖いのね?」
「えっ!
あ、・・・はい」
図星だー!
わかりやすー!
「それじゃ、あなたは相田くんとユイが付き合うって事、どう思うの?」
「えっと・・・い、いやです」
き!来た!
「よし!
それじゃ手を組むわよ!ナジミさん!」
「手を、組む・・・?」
「そうよ!
わたしとあなたで相田くんとユイを引き離すのよ!!」
「引き離す・・・」
「そうよ!2人を引き離す共同戦線を組むのよ!」
敵の敵は味方!
利害の一致よ!
「わ!・・・分かりました!やりましょう!ハナさん!
いや!
ハナ先輩!!」
な~んだ。
素直じゃない。
「それとハナ先輩!
アタシの事はナジミと呼んでください!!」
「分かったわ!
それじゃ、ナジミ!
手を出して!!」
「手を・・・?」
ナジミがゆっくりと手を出す。
わたしがその手を握る。
握った手にしっかりとナジミの力強さを感じる。
何かが吹っ切れた表情のナジミがわたしの目を見つめてくる。
「ハナ先輩!やりましょう!」
「ええ、やるわよ!ナジミ!!」
お互い同じ表情でニヤリとする。
そうか、
この子、まっすぐなだけなのね・・・
場所が違えば友達になれたかもしれない。
ガチャン。
「おまたせー。
オレンジジュース持ってきたよー!
え?
何で2人握手してんの?」
アホ面のボサボサ頭がオレンジジュースを持って入ってきた。




