駅前のファミレス 『 マモルの場合 』その2
「何コレ?めちゃくちゃ美味しいんだけど!」
興奮ぎみのクレナイが、プリンアラモードをみるみるうちに平らげていく。
「それで、
俺を殺すって、どういう事だ?」
俺がクレナイに聞くと、スプーンを持つ手を止める。
「マモル・・・
あなた、きのう南地区が襲撃にあったのは知ってる?」
「ああ、さっきムラサキから聞いた」
「じゃあ、南を襲ったのが誰かも知ってるのよね?」
「俺の偽物だ」
「そう。あなたのニセモノのノッペラボウとスタンガンの女よ。
でも南は、それがニセモノと知らないのよ」
「・・・・・」
「北から送り込まれた刺客としか思っていないのよ。
それで南を取り仕切る、木見鳥組から依頼があったの」
「キミドリ組・・・
会長の木見鳥鉄之助・・・か」
「そう、通称キミテツと呼ばれるあのオヤジから依頼があったの。
ノッペラボウとスタンガンの女を始末しろって・・・」
クレナイがクリームのついたフルーツをパクパクと食べる。
「で、
お前、どうするんだ?
俺を殺すのか?」
「んなわけないでしょ!」
「でもお前、依頼を受けたんだろ?」
「そうよ。
だから、あなたに会いに来たのよ」
「・・・俺にどうしろと?」
どういうつもりだ?この女・・・
俺に何をさせるつもりだ?
クレナイが残り少ないプリンを一口食べるとニヤリとする。
「手を組むのよ。私と」
「どういう事だ?」
「私とマモルで、あなたのニセモノを退治するのよ」
「退治?」
「そう。
本物がニセモノを成敗するってことよ」
「そんな・・・お前、
俺、警官だぞ?」
「そうね。
でも、もう始まってるわ」
「何が?」
クレナイがスマホを片手で自然に操作し、俺の前へスッと差し出す。
スマホの画面には主婦らしき人物が2人で和気あいあいと話す様子が写っている。
たった今、ごく自然な動きで撮影したものだ。
「これがどうした?」
「あなたの斜め後方の女たちよ」
「この女たちが何だ?」
「私たち、監視されてるわ」
「え?」
「私、少し油断してたみたい。
最近はああいう普通の主婦が尾行、監視をしてる場合が増えてるのよ」
「この主婦が殺し屋なのか?」
俺がスマホの画面を拡大する。
「違うわ。
恐らく本人たちは浮気調査かなんかだと思ってるはず・・・
さっきから私たちの情報を送ってるのよ」
「どこに?」
「依頼者によ」
「依頼者?
会長の木見鳥か?」
「わからないわ・・・
でも、あのオヤジなら、私以外にも殺し屋を雇っている可能性は高いわ。
それに、どっちを監視してるのかも重要よ」
そうか・・・
監視対象が俺なのかクレナイなのか?
恐らく俺だ。
いや、間違いなく俺だろう。
クレナイが監視対象なわけがない。
もっと前に尾行や監視には気づくはずだ。
それにクレナイは、顔がバレては仕事にならない。
・・・俺にはバレているが。
とにかくこの主婦たちは、俺がノコノコ連れて来たのだ。
てことは、情報が洩れてる・・・
マズい、ナジミが危ない。
クレナイが最後まで残していたサクランボをパクッと口に入れると茎を皿に出す。
「マモル、すぐに店を出るわよ」
「ああ」
俺が席を立つとクレナイも立ち上がり俺の左腕を抱える様にして、しがみつく。
「女たちを見ないで」
クレナイが俺の胸元で、サクランボをモグモグさせながら口早につぶやく。
視界のすみで、主婦の女が電話しているのが見えた。
俺とクレナイは支払を済ませ店を出る。
クレナイが俺の左腕をつかんで寄り添う姿は、
一見すると夫婦か恋人だ。
「お前、サクランボの種はどうするんだ?」
「嚙み砕くわ」
クレナイがそう言うとボリボリッとナッツを食べているような音をたてる。
ワイルドな女だ。




