トキオの部屋 『 ナジミの場合 』
「それじゃ、そろそろ起こしますよ、先輩」
「う、うん」
アタシとハナ先輩が寝ているトキオに近づく。
夜明け前なので外はまだ暗い。
アタシは、さっき早起きして、というかほとんど寝てないのだが、ハナ先輩に連絡し、家に入れてもらった。
そして先輩と2人でトキオの部屋にいる。
トキオは寝ている。
ハナ先輩の言葉から推測すれば、トキオは夜明けにもきっと変身をする。
そしてその時、本当のトキオが一瞬、現れるはずだ。
まずは本当のトキオに会うことだ。
話しはそれからなのだ。
アタシとハナ先輩がトキオの枕元に立つ。
2人で顔を見合わせ、目で合図をする。
「トキオ・・・
起きて」
アタシが寝ているトキオの肩を揺らす。が、
トキオは起きない。
「トキオ、起きて」
アタシは強めにトキオの肩を揺らす。が、
トキオは全然起きない。
「ちょっと!トキオ!
起きなさいよ!」
アタシがガバガバとトキオの肩を揺らす。が、
トキオは全く起きない。
「どうしましょう、先輩。
こいつ、起きませんよ」
「そうね・・・」
ふと窓を見ると、薄っすらとカーテンの隙間が明るくなっている。
夜明けが近い。
「う、うう・・・」
トキオが小さくうめく。
「先輩!」
「ええ、起きるわよ」
「う、うう・・・」
トキオが眉間にシワを寄せて苦しみだす。
「ちょ!トキオ!大丈夫!?」
ナジミがトキオの両肩をつかんだ瞬間、トキオの目が、
カッ!
と開く。
トキオがアタシを見た瞬間、
「ナ!ナジミ!」
身を乗り出して叫ぶ。
トキオだ。
よかった・・・
いつものトキオだ。
目を見れば分かる。
こいつは紛れもなくトキオだ。
なんだか目頭が熱くなる。
トキオ・・・
が、今はそんな事は言っていられない。
「トキオ!
あんた一体どうなってんのよ!」
アタシが叫ぶ。
「ナ!ナジミ!ハナちゃん!
オレ!閉じ込められてる!出られないんだ!」
アタシと先輩を交互に見ながらトキオが叫ぶ。
「出られないって、何!?
どこから出られないのよ!?」
「ナジミ!ハナちゃん!助けてくれ!
オレを出してくれ!」
「だから、どこから出すのよ!?
どうすればいいの!?」
「うぁああ、来る!昼のヤツが来る!
ダメだ!ナジミ!ハナちゃん!
ダ、ダメだ・・・うう・・・
アイツを・・・信じちゃダメだッ!うああ!」
トキオが両手で頭をかかえて苦しみ出す。
「ちょっと!トキオ!!」
アタシが両手でトキオをおさえると、ピタッとトキオの動きが止まる。
「あの時と一緒だわ・・・」
ハナ先輩がつぶやく。
「あの時と一緒?」
「そう。よく見ててナジミ。
変身するわよ」
「変身・・・?」
動きの止まったトキオの頭が、小さくブルブルっと震える。
トキオがゆっくりと体を起こす。
トキオがニッコリと笑う。
「あ、おはよう。
ナジミちゃんに、お姉ちゃん」
違う・・・コイツ、違う・・・トキオじゃない。
アタシには、トキオの目の奥に、なにかが欠けているソレが分かった。
これが変身したってこと?
「お、お早うトキオ・・・」
アタシがつぶやく。
「2人で、何してるの?」
トキオが、アタシとハナ先輩をきょとんと見て言う。
「ううん。
何でもないの・・・
先輩!行きましょう!」
「う、うん」
「それじゃ、トキオ!
また後でな!」
バタン!
アタシとハナ先輩はトキオの部屋を後にする。
--- ハナの部屋 ---
「先輩、アレやばいっスよ」
アタシが小声で言う。
「でしょ?
それに、何か変なこと言ってたわね」
「信じるな・・・ですよね?」
「うん。誰の事かしら・・・」
「昼のトキオか、夜のトキオか・・・
それとも両方か?どうなんでしょう?」
「とりあえず、昼と夜のトキオには、本当のトキオが出てくる事は伏せておいた方が良さそうね」
「ですね。
お互いに、本当のトキオの記憶がないみたいですから・・・
あ、でも、」
「何?」
「ユイさんにはどうします?」
「・・・そうね。
今はまだ、黙っておいて、ナジミ」
「わかりました、先輩。
それと・・・
先輩、昼のトキオからは、お姉ちゃんって呼ばれてるんですか?」
「そ、そ、そうね・・・
それは、アイツが勝手にそう呼んでるのよ」
「夜のトキオからは、呼び捨てでしたよね?」
「そ、それもアイツが勝手に呼んでるのよ」
何で先輩、赤くなってんだろう?
すげー、モジモジしてるし。
ま、そんな事より、
「先輩、トキオが言ってた、閉じ込められてるって、どういう事でしょう?」
「それなんだけど・・・」
「何です?」
「トキオ、前に言ってたの」
「何をですか?」
「呪われてるって・・・」
「呪われてる?
それ・・・あの仮面の事ですか?」
「そうだと思う」
「あんなのウソに決まってるじゃないですか」
「でしょ?
だってあれ、」
プルルルル!
うわ!電話だ!アタシの電話だ!
「すみません!先輩!」
「いいわよ、気にしないで」
アタシがスマホを見る。
ん?誰?
知らない番号だ。
こんなに朝早くに電話?
どう考えても変だ。
どうする?出るか?
えーい、もう!
とりあえず出てみよう。
「はい、もしもし・・・」
『ナジミか!?』
え?
この声・・・
「マモル?」
『ああ、俺だ』
「どうしたの?こんな早くに!」
『悪い、緊急だ』
「緊急?」
『偽物が出た』
「え?」
『俺たちの偽物が出たんだ』
「だからどういう事よ?」
『ノッペラボウとスタンガンの女だ』
「それがどうしたのよ?」
『ヤクザ相手に、偽物が暴れ回ってるんだ』
「え?」
『恐らくその影響で北と南の抗争になる』
「え?」
『これから警察が本格的に動き出す。
まだ警察はお前たちには、気づいていない』
「・・・・・」
『だが、ヤクザからの情報が洩れる可能性がある。
お前たちは俺が必ず守る。
だから絶対に妙なマネはするな。
わかったな』
「・・・・・」
『聞いてるのか?ナジミ?』
「う、うん・・・
わかった・・・」
ブツン・・・
電話が切れる。
「どうしたの?ナジミ・・・」
ハナ先輩がつぶやく。
あ、これ。
ヤベー奴よね?
そうとうヤベー奴よね?
ど、どうしよう。




