表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

幕間

『ヒロイック・サーガ』








「…ぁ」


不意に、目が覚めた


先程まで本を読んでいたはずなのだが、いつの間か、座ったままで眠っていたらしい


「ふぅ」


ほんの僅かに息を漏らしながらも、そのままの体制で窓の外を眺める


そこには広大な緑の丘があり、空には大きな雲が浮かんでいた


穏やかだった


平和だった


平凡だった


のんびりとしていた


安らかだった


私、エリス・フレシングの人生の大半は、そんな暮らしで彩られている


別段贅沢ではないけれど、物に困ることは、たまにしかないくらいの、そんな暮らし


それはせめて、もう少し買い物が便利だったらいいのに、なんて思いはあるけれど


まぁ、そんなわがままを言っていても始まらないだろう


「ふぅ…」


何気なく、壁にかけられたロッドを見やる


あれを使わなくなってからもう随分経った


いつだったか、私の子供たちが、そのロッドを見て、何度となく聞いてきたことがある



「ねぇ!お母さんって世界を救った英雄なんでしょ!?すごいな~」


「ホントだよ!えっと私もね、絶対にお母さんみたいになるんだ~!」



なんて


それもいい思い出だ


まぁ、私としては、英雄なんかより、他の普通の生き方を選んでほしかったのだけど


「懐かしいわね...」


そう


確かに昔、そんなことがあった


アルケイディア、なんていう科学と魔力の発展のみを考え


世界に独善的とののしられ、世界を破滅させようと目論んだ魔人王


私たちはそんな敵を倒すために協力し、それを打ち倒した


そんな、世界なんてものを救ってしまった4人の英雄のお話


「ふふっ」


つい笑ってしまうほど信じられない


それでも、本当のこと


今でも思い出すことがある


みんなからすれば、あの頃こそが、私にとっての一番のエピソードになるに違いない


数々の冒険とつらい修練の日々


国をなくし


家族をなくし


それでも、復讐のためと努力を続けていたあの頃


敵を倒せ


敵を殺せとせがまれて


仕方なく、最終決戦に挑んでいたあの日


もっとも、そんなのは私にとって、どうしようもなく面白みのないことで


できれば避けたかったくらいの事で


本当は


ええ、本当は


仲間と一緒に世界を周るのが楽しかった


楽しそうな、幸せそうな、嬉しそうな


そんな、みんなの顔を見るのが好きだった



花を見て微笑んで



海で遊ぶ子供たちと一緒に遊び



お祭りの中、大きな炎を眺め



雪道ですべる彼を見て、それをみんなして笑って


それが


そんな日常こそが、私たちの本当に望んだエピソード

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ