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決戦

世界は滅ぼされつつあった


多くの国々が、魔道機械と呼ばれる謎の兵団に焼き尽くされていた


人間達も必死で抵抗するものの、あまりの戦力差になすすべもなく敗北を重ねていた


10年以上の敗北の歴史


それと同じ年数の殺戮の歴史でもある


しかし突如、その戦況は、瞬く間に覆されることとなる


不思議な力を有する青年と、三人の魔術師


たった4人の英雄の登場によって








「アルケイディアっ!!」


奴が、俺の視界に入ると同時に、みんなは奴の周囲3方から奇襲をかける


「トリプルレイアンドバースト!!!」

「ダイアモンドエッジ=ボム!!」

「F・I・S=トライアングル=ダブルクロス!!!」


その三つすべてが最上級魔術


しかも相乗


これほどの魔術ならば、いかなる魔力防壁をめぐらしても、突破できないはずはない


現に、以前までは突破不可能とされていたアルケイディアの防壁がゆがみ始めている


これならいけるかっ


「ぐ、ぐぬぬ!」


だがその見込みはあまりに甘過ぎた


魔人王


その俺たちに比べれば、3倍以上はある体躯も


その名を冠していること自体も、決して伊達などではない


「その、その程度の奇襲などに私がぁぁぁっ!!」


バンッ!!


はじかれたっ?


「これでも無理なのですか!?」

「おいおいまだ足りねぇのか!?」

「うそでしょ!?」


見込みが甘かったとはいえ、信じられないという思いは消せない


現代はおろか古代においてすら、禁呪とされてきた相乗魔術


しかも、数ヶ月に及び修練を重ねてきた3人同時攻撃を、奴ははじききったというのか


「だけどっ!!」


そう


仮に突破できなくても、弱りきっている今の防壁など


「たああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」



この俺の剣


魔人殺し・降魔刀


そして、蒼き光の刃・クラウ・ソラスの双撃に断ち切れぬ壁など


ガッシャーーーーーンっ!!!


「な、!?」


ただの一つも、ありはしないっ!!


「なっ、バカなっ!!」


信じられないというようなアルケイディア


だが事実


お前自慢の防壁はなくなったっ!!


そして無論!


ズバァァっ!


この接近戦の好機において、無防備になった敵を逃すほど、俺は甘くなんてない!!


「ぐをおぉぉぉっっっっ!!!!!!」


だが


「ちぃっ!やっぱり浅い!」


奴の体には肉体がない


その身のほとんど全てが魔力によって構成されている


聖剣・魔剣の類ならば、それでもダメージは与えられるが致命傷にはなりえない


かつ、傷はすぐさま魔力により補填されてしまうなんておまけ付き


ほとんど反則だ


先の戦いにおいても、その最悪な反則を前に、全員が瀕死という事態にまで追いこまれている


あれから、だいぶ修練を重ねたとはいえ、その魔力差はまったく変わっていない


いや、いくら修練を重ねたとしても奴の魔力に追随することなど不可能だろう


そもそも最初から全力で当たる他ない俺たちと、例え傷を負ったとしても大した意味をなさない相手との間には、どうあっても超えられない壁がある


それゆえの全力による短期決戦


それがギリギリ


それだけが、俺たちに残された、唯一の勝利への道だった


「畳み掛ける!ライル!ガラ!エリス!相乗魔法剣行くぞ!!」


「「「了解っ!!!」」」


三人同時の返事を聞いた上で、俺は降魔刀の柄を破壊する


そしてすぐさま、降魔刀の魔力核をクラウ・ソラスに喰わせた


これにより、聖と魔の融合が完成される


相反する力の相乗は一時的に爆発的な力を発揮する


愛用の刀を失うのは惜しい


だが、その程度の代償を一々気にしてなどいられない


さらに同時に、自分自身も開いた左手に魔力を込め始める


これは布石だ


俺たちの最終目的は、まだ遥か先


しかも事が、全て思い通りに行くとは限らない綱渡り


しかし、これしか


これしかっ!


俺たちの思い描くその道しか、勝利はありえない!


ライル達も同じくして、魔法剣詠唱を開始する


それは、自分たちがもっとも得意とする属性


ライルは光


ガラは土


エリスは、炎と水と雷の三種同時


「光の粒子よ。降り注ぎて、かの聖剣に勝利の栄光を与えん!!」

「大地よ!その内に眠りし全ての力を、今こそ我らが聖剣にささげよ!!」

「火よ水よ雷よ!私の全ての魔力もって命ずる!サクヤ有す聖剣に六法の力を!!」


3人が3人、その全てを、今ここで最大限に発揮する


「よしっ!きたっ!!」


三人の魔力がクラウ・ソラスに集まり始める


これこそが秘奥義


数ヶ月に及ぶ修練の成果である


しかし、3人の魔力は、まだ集まり始めたばかり


クラウ・ソラスに降魔刀の核を食わせたおかげで、その許容力は半端ではない


その全力にまで達するには、どうやら10分以上かかる


だが、実はそれも曖昧


なんといっても、始めての試み


無論、他の剣では何度となく同じことをやってきた


体を限界まで追い込んで


幾つもの名のある剣の数々を代償にして


時には命すらも天秤にかけて


故に、この場において失敗などという道理は、断じてありはしない


しかし


それでもこの聖剣、クラウ・ソラスでは初めてのこと


他の剣と同じく、この秘奥義にかかれば、クラウ・ソラスとて粉砕は免れない



そもそも、クラウ・ソラスで試すわけにはいかない


そんな練習


そんな高望みが、俺にできるはずも無い


とはいえ、ぶっつけ本番の一回限りはつらいのも揺るがぬ事実


まして10分


知りうる限りでは最強の我が聖剣


そして予想通りながら、この剣の限界は、代償としてきた名剣達を遥かに凌駕していた


「はぁぁぁぁっ!!」

「ぬおおおおっ!!」

「あぁぁぁぁっ!!」


ライル達もまた、ただひたすら魔術展開に集中している


他のことに意識を削げはしないだろう


つまり


「おのれ...おのれえ…おのれえーーーーーーーっ!!!」


最悪の場合は、この10分


この科学王であり、魔人王でもあるアルケイディアを


たった一人で


たった一人で、かつ、みんなを守りながら、相手にしなければならないことになる


なんという無謀


そんなものは到底ありえはしない幻だ


「ふざけた真似をおおおおお!!」


激昂する魔人


しかもその手には、すでに相乗魔術の連弾が編まれ始めている


「まとめて消し飛べえええぇぇぇぇっっ!!!!!」


「くっ!!」


思わず歯を食いしばってしまう


なんて腹の立つ思考回路なのだろう


早過ぎる


早過ぎるのだ


しかしそれは、この場においては、それは確かに効果的な方法だった


先ほど奴の防壁を弱めたのも相乗魔術であれば


今、俺達を消し飛ばさんとするのも相乗魔術


逆の立場になれば、これほど恐ろしいことはない


そんな相乗の、まして連続弾を向こうにするとなれば、まともな防御などありえない


「無駄に冷静なっ!!」


俺は迷うことなく、真っ直ぐに奴の懐に飛び込む


奴の術の完成=俺たちの敗北


ならば、術の完成より先に、その術式を直接打ち砕く以外の方法など今はありえない


「くっ!!」


しかし、間に合うか


距離的にはギリギリ


だが、やってみせるっ!!


しかし


「こぉぉの私をぉぉおお!!甘く見るなぁーーーーーーー!!!!!」


その状況の悪化に戦慄した


せざるを得なかった


アルケイディアの激昂とともに、瞬間的に奴の魔力が高まっていく


もうあと刹那で、その滅びの魔法式が完成してしまうほどになっていた


(間に合わない!?)


「消えろ…カタストロフ=デス=イクスティンクトぉぉぉぉぁぁぁぁっ!!!!」


魔術が開放される


しかもそれは、3種の相乗


属性は、災厄とさえいえる、悪夢と死と滅び


その連弾型


威力は計り知れないにも程がある


発動すれば、この城なんて、一瞬で消し飛んでしまうだろう


実際、奴の周囲から魔力があふれ出し、その崩壊が始まりつつあった


魔力生命体だからこそ可能な、絶望したくなるほどの破滅的な魔術


もうあとは、それが爆発すればジ・エンド


俺たちの敗北だ







だが


「魔術式滅殺陣、一の型」


俺ならば、さらにその上を行ける


「水月」


その短い言葉だけで、世界が一瞬にして反転する


月世界


世界は魔力によって侵食され、月の王たる、この俺の世界へと変わり果てていく


そして結果、俺と奴だけが、湖に浮かぶ月の中心で、ただ呆然と立ちつくしていた


「な、なんだこの術式は!?」


慌てるのも無理はない


これは奴の知らない魔術


いや、そもそも魔術式ではない


これは、かつて悪魔とされた一族の、対人間、対魔術式結界陣


俺の体に流れる、悪魔の血によって発動する、失われたはずの空間侵食術


この陣式こそが、先ほどよりの布石


左手に溜めていた魔力を発動させた結果


そして、喜ぶべきことに、ここまでは俺たちの思い描いたシナリオ通りでもある


正直、奴の反応が早く、しかも最初から辺り一帯を消し飛ばすとは思っていなかった


故に、こうして発動に足りうるほどの魔力が溜まるかどうかがギリギリで焦ったのだが


「間に合ったな」


事は、こうして成しえたのである


「バカな…….バカなバカなバカなバカなバカな!」


混乱しつつあるアルケイディア


まぁ無理もないのかもしれない


魔力研究に没頭していた科学者が、自分の知らない魔術を見せられたのだ


狼狽もしよう


「なぜ私の術式が消える!!なぜだなぜだなぜだなぜだあぁぁっ!」


もう、その言葉通りだ


この陣式は、俺が対象とした存在の魔力を根こそぎ奪い去るもの


それが例え、いかに巨大な魔力であっても我が物とすることのできる醜悪な力


つまり


「俺たちの勝ちだ」


その右手には、鈍い青色の剣


その内には、計り知れない力が蓄えられている


ここに、相乗魔法剣、クラウ・ソラスは完成した


また、その完成と同時に、月世界はまばゆい光とともに消え、いつのまにか元いた奴の城に戻っている


その役目を終え、一瞬にして霧散したのだ


「礼を言おう。アルケイディア」


奴の魔力のおかげで、思ったよりも遥かに早く剣が完成した


無論、その属性は、すでにライル達により属性に書き換えられている


俺の陣式によって純粋な魔力となってしまえば、染め上げてしまうのは簡単なのだ


「さぁ、クライマックスだ」


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