第七章 17
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カウンターの中では、大柄のシェフが、準備をしている。
しゃれた感じの店だった。広くはないが、ゆったり感がある。
男女が入るにふさわしい店に思える。相手の男が、この近辺に住んでいるならば、ふたりで一度位は訪れているのではないだろうか。
そんなことを考えながら、塚本が、通りの景色をぼんやり眺めていると、
「いらっしゃいませ」
という声を伴ってテーブルの上にメニューと水が入ったコップが置かれた。
「スパゲッティ―ボンゴレのランチセットをお願いします。コーヒー先にしてください」
と、メニューを見ることなく注文した。
これから客席の方も埋まって来る時間帯だ。聞くなら早い方がいいだろう。塚本は、写真を見てもらう心の準備をした。
アメリカンコーヒーが運ばれた。
塚本は、胸ポケットから写真を取り出し、佐藤百合子が来たことがないか、を尋ねた。
写真を眺めていた店の女性が、「この人、ウーン」と言った。
「来ましたか?親類の者ですが」
「だいぶ前にいらした気がします。かなり経っているんで何となくですけど」
「ひとりでですか」
「ええ。何か淋しそうな感じで、ランチになかなか手をつけなかった方だったと思うんですよ。けっこうきれいな人で」
店の女性は答えた。
「ねえ、この人、見覚えある?」
カウンターの中のシェフに写真を見せた。調理器具を持ったシェフは、写真を手にすることなく体を前に屈めて写真を見つめる。
なれなれしい口調から夫婦だろう、と思えた。
「俺は、記憶ないねえ」
シェフは答えた。
「はっきりこの方とは断定出来ませんが、何となくこの方だったような気が」
塚本の手に佐藤百合子の写真は返された。
新しい客が入って来て、話は終わった。
ボンゴレは量がたっぷりあって、おいしかった。
十二時に近づくにつれて客が次々入ってきて、テーブルが埋まっていく。人気店なのかも知れない。
塚本は、先刻のお礼を言ってヴォーノを出た。




