第七章 5
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その夜、といっても日付は変わって、午前一時過ぎだった。
塚本は、カツンというような音を聞いた。どこでしたのかウトウトした状態の中だったのでよくは分からなかった。
カツン、カツン、繰り返しの音がドアの外であるのを塚本に知らせた。
帰って来てくれた。塚本の胸は高鳴った。
落ち着け、落ち着け、自分に言い聞かせながら塚本は、ベッドから出た。タタキの端に置いたスニーカーに素足を突っ込みドアをゆっくり開けた。
カミクズが転がりこんで来た。
「オオッ、帰ってきたか」
夜中の時刻、小さく弾んだ声でカミクズを塚本は迎えた。
カミクズの白く輝いてさえ見えた色は、失われていた。
上がり口にジャンプすることなくタタキの上でじっとしている。
塚本は、三枚の雑巾を並べた。この日のために新たに購入した雑巾三枚を上がり口に並べた。
カミクズは、ジャンプして雑巾の上に乗ると転がり始める。端から端まで転がった。転がるにつれ、徐々に白さが回復していった。
代わりに三枚の雑巾がうっすら茶色く変色していった。
「もう、きれいになった。リビングに行こう」
塚本は、元の白さに戻ったカミクズに語り掛けたが、カミクズは、納得いかない風にそれから十往復もしたのだった。
変色は、痩せたカラスを攻撃し、深い傷を負わせた時、吸い込んだ血に違いない。汚れをとことん放出したいのだろうと塚本は、カミクズが自ら雑巾から降りるのを待った。
塚本はリビングを明るくした。
カミクズは、リビングに入ると、指定席の部屋の隅まで転がって行った。前と変わらないスムーズな転がり方だった。見た目の変貌はない。
「無事に戻って来てくれてありがとうな。今日は遅いから寝よう。今頃の時間に戻ってきたのは、他の人に気付かれないようにだよな。痩せたカラスはいなくなった。ゆっくりお休み」
リビングの灯を小さくすると、塚本は、ベッドに戻った。




