第六章 5
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「はい。ある時期、男性と付き合っていたのは、妹から聞いて知っていました。でも、私は、その男性がどんな仕事をしているとか、はっきりした年齢も、どこに住んでいたかも知らないんです」
椎葉玲子は、塚本の目を見つめて答えた。。
「ただ、恋人がいる、とだけお話したわけですか?」
「ええ、幾らどんな人と聞いても、もう少し進展したら話すと言った切りで。塚本さんから慰めていただいた同じ時期だったんでしょうね。私が百合子からその男性とだめになったと携帯で話した時に聞かされたのは。でも、お正月に帰って来た時は、すっかり、立ち直っているように私には感じられました。私の息子とも明るく遊んでくれてましたし。嫌な思い出を蒸し返してはいけないと何も聞かなかったのですけど、聞けばよかった、と後悔してます」
椎葉玲子は、下をうつむいた。
「百合子さんと連絡が取れなくなったのは、いつなのですか?」
「私がはっきり失踪を意識したのは昨年の九月中旬です。メールのやりとりが、まるで出来なくなったんです。私達、連絡は、携帯ですが、声のやりとりよりメールのやりとりがほとんどでした。お互い大人ですし、ふたりきりの姉妹だからと言ってべたべたした関係ではないんです。だけど、そのひと月も前から変だったのです。百合子は、お盆の時期には、必ず実家に帰っていました。だから、八月の初め頃久しぶりに声も聞きたかったので、携帯に電話しました。帰るつもりだと電話では言ってました。でも、お盆が始まろうとする頃、派遣の時の女性の友達と温泉に行くことになったから、今年は帰れないと連絡が来ました。それが、声を確認した最後です」
「後はメールで?」
「ええ、もう帰っているだろうと、電話しましたが、携帯に出ることなく、メールで返事が来ました。箱根に行って楽しかったという返事でした。その後も、何度かメールし合いましたが、メールの文章の感じに違和感を覚えたんです。それで、どうしても電話欲しいと幾度かメールしました」
「掛かって来なかったのですね?」
「ええ、メールの返事も来なくなりました。不安を覚えて百合子の部屋を訪ねました。管理会社の人と部屋に入りましたが、いませんでした。隣の部屋は、大学生でしたが、物音も聞こえて来ないし、姿も見掛けないということでした」
「お勤め先は?」
「それが、派遣された会社は、六月に終わっていて、その後、体調不良でしばらく派遣の仕事は受けられないとメールで連絡があったそうです」
椎葉玲子は、言った。




