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第四章 8

           8

「取材は、お断りしております」

 塚本は、ベンチに腰を下ろすと毅然とした態度で言った。


 このような状況が、生まれることは、想定の範囲ではあった。


「ボールのような物を従えて散歩するユニークな老人」、朝、夕の情報番組の話題として、おかしくはない。


 だから、カミクズを連れての散歩中に凶暴カラスについて取材に来たマスコミに遭遇したら、どうするか塚本は、対策をいろいろ考えていた。


 相手が気付かなければ、すぐさま、ペット用ケースにカミクズを入れてしまう。散歩のコースを変えるか、何か聞かれても無言を貫き、榊コーポまで帰る。


 気付かれ、逃げられない場合は、リモコンで動く玩具を開発中であると話した上で、取材は受けない旨をはっきり言う。今は、まさにこの状況の中にあるわけだが、シュミレーション通りにことを運んだつもりだが、塚本の心は、動揺していた。


「取材お断りですか。がっかりです」

 村田が、首を縦に大きく振った。本当に残念そうだ。

「これ可愛い」

 レポーターらしき女性がしゃがみこんで、カミクズを見つめる。

 

「すいません、触れないでください」

「アッ、はい」

「これって、リモコンで動かしているわけですよね?ラジコンって言うのかな」

 村田が聞いて来る。

「リモコンでいいです。私も、そう言ってます。まだまだ、試作段階なんですよ」

「よく見ると、とても芸術的な形に作られているんですね」

「試行錯誤の状態でして」

 塚本は適当に答える。嘘をつく罪悪感は余り生じなかった。

 村田とカメラマンも興味津々でしゃがみこんだ。


「ウーン、折り目が連続ついたり、尖った部分があったり、これは内部の構造と関係があるんですか?」

 村田が質問した。

「まあ、そんなところです」

「アンテナも何もないんですね」

 今度は、カメラマンが聞いて来る。


「ええ」

「それと、これあんなに転がっているのに、土が全くといっていいほどついてませんよね。どうしてだろう?」

 再び、村田。


「紙に特殊な樹脂をコーティングしているんですよ」

「転がっても土をつけない特殊な紙。すごい。ますます、放送したくなりました。いえ、約束は守ります」

 村田は、まじめな顔で言った。

 

 カミクズがコロコロと転がってベンチの下に入った。

「アレッ」

「俺を余り見ないでくれって言ってます」

 

 塚本は言い、リモコンのボタンから指を離した。もっとも、そんなポーズなどする必要はなかった。四人ともカミクズに注目して、塚本のリモコン操作など見ていなかったからだ。


「お約束します。許可なく放映しません。ぜひ、カミクズが、転がるシーンの撮影だけ許可してください」

 村田は、直立の姿勢をとり、ほぼ九十度の角度まで頭をさげた。




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