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建設反対

作者: 雉白書屋

「はぁぁぁぁ……」


「深い溜息っすね。どうしたんです? 監督」


「ん、いやぁまあ……また、な」


「ああ、あれっすか。抗議ってうわ、まさかそれ全部っすか?」


「ああ、そうだ。各所から送られてきた抗議文。まったく嫌になるよ」


「じゃあ、なんでわざわざプリントアウトしたんすか」


「いや、向こうからの指示書と勘違いしてな。ほら、俺やっぱり紙が好きだしな」


「ああ、まあわかりますけど、いやぁしかしまぁ抗議抗議。

ここの工事が始まってからずっとですよね。よくやるなぁ……」


「よくやるも何も、報道じゃヒートアップするばかりだとさ」


「へぇ……あ、別々の団体なんすね。これは、はいはい十五夜同好会からっすね。

えー、なになに『諸君らが行っているのは文化の破壊だ』

で、はいはい、かたっ苦しい文章が続く感じっすね。

こっちはかぐや姫ファンクラブか。

『可哀想だと思わないの!? 痛い痛いって泣いているわよ!』

感情的ですねぇ。こっちは逆に冷めちゃうんですよね。

で、なんだこれ? 狼男団体? それから月ウサギ亭。あ、これうちの母親が好きな饅頭の会社っすね。あと、これは個人かな。いくつもあるな」


「はぁ、月の土地を買ったってやつらだよ」


「ええ、そんなのどこで売ってんすか」


「どこでもだよ。何の価値もない権利書を売ってる会社がいくつかあるみたいだぞ」


「ああ、そう言えばここ、月の工事が始まるってニュースが流れた辺りでそんな話聞いたなぁ」


「主にほれ、市民団体が抗議したいがためだけに買ってんだ」


「うへぇ、何のために、それも金になるんすかね」


「世の中には反権力とかデモ好きがいるからな。良い見世物さ。

他の団体は主に月の景観が崩れることを恐れてのものだがな」


「前に座り込みにも来てましたねぇ。

ふふっ、背中の推進装置が壊れたかなんかして飛んでいきましたけど。

助けてやったのに文句を言ってねぇ。えっーと、あとは……宇宙人研究家?

『このままでは大変なことになるぞ』ん? 宇宙戦争? はぁ?」


「月に基地を建設するのは宇宙人に対する挑発行為になるとか何とかほざいてるのさ。

地球の防衛拠点としてこれ以上にない立地なのは事実だがな。あ、反戦と言えば、うおっ!」


「何すか今の爆発!」


「かかかかかか監督!」


「どうした!? 事故か!? また作業員の誰かの気が狂ったか!」

「いや、テロじゃないっすか!? 抗議団体のどれかの!」


「ちちっちちちちが、ばく、爆弾です! かかかか核ぅ!」


「は? ミサイルか!? 地球から撃ってきたのか!? 馬鹿な!」


「い、い、いえ! ちゅちゅ、中国が勝手に持ち込んで! それが、爆発!

ゴホッ、ちち地上に向けよく、抑止力にするつもりが、それでアメリカ、ロシア、他の国も慌ててミサイル発射装置を建設してててて」


「げ、この前、地球から来た連中はそういうことだったのか! クソが、俺に何も知らせないで、うおっ!」

「地震!?」


「ちちちちが、あ、あ、あは、あははははは! おわりだぁおわりぃうへへへへへへ」


「ああ、こんな時に狂いやがった」


「しかたないっすよ、ただでさえ陽もない閉鎖空間ですし、っていや、やばいっす! 月が砕けちまう!」


「ああクソッ! 正気な奴集めろ! 行くぞ!」







「ねえ、おばあちゃん」


「んー、なんだい?」


「どうして、お月さまはあんなにボコボコなのー?」


「……それはね、勇気がある人たちが力を尽くしたからだよ。

一度壊れかけたんだけどね、色んな国のみんなで協力して繋ぎとめたのさ。だから平和の象徴と呼ばれているんだよ」


「ふーん。ねえ、おばあちゃん」


「なんだい?」


「お月さまの裏側はどうなっているの?」


「……ドロドロだよ。文字通りね」

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