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41話 開いた扉の先に光る白銀の髪

 2階に駆け上がった俺は廊下を全速力で走り抜けながら目ぼしい潜伏先を一つ一つしらみつぶしに捜索する。


「ここでもないか……次だ……!」


 ファナの現在持ちうるMP量から鑑みても、あの二人を足止めできる時間は持って10分が限界のはず。

 俺はそのうちにこの呪縁魔法を操る術者及びダンテとの内通者を探し出さなくてはならない。


「急がないと、ファナが……!」





――側頭部の痛みに何とか耐えながらエマはファナに質問する。


「――ファナ。これはどうゆうつもりかしら……? なぜアナタがそこまであの男に肩入れするの?」


 空気中の水蒸気が急激に冷やされて発生した白い煙が漂う大広間。

 そこにはファナの『氷層結止アイスクロック』によって凍てつく氷に手足を拘束されたエマとデビスの姿があった。


「――あの人は今までの人とは違う雰囲気があるのです……」


「雰囲気ですって?」


 一拍おいてファナが答える。


「はい。ファナが物心つく前からお姉様は様々な人間にチヤホヤされていました。しかし元来人見知りの性格だった上に魔導力の劣るお姉様を囲う人間は皆『ノーデンタークの後継者』としてしかお姉様を見ていなかった……」


「でもシュント君は違った。あの人はお姉様の事を『ヴァニラリア・サラ・ノーデンターク』として見ていた。そしてまたお姉様もそれに呼応するように彼に心を開いていった」


 二人の会話以外に雑音など無い静寂の大広間。


「お母様、本当のアナタは誰よりもお姉様を愛していたはずです。思い出してください。アクリシア様から託された想いを……責任を!!」


「――! ファナあなたなんでそれを……!?」


 氷を振り解こうとするエマの動きがピタッと止まる。


 しかし次の瞬間、ファナの背後に位置する玄関扉がゆっくりと開いた。

 光源を無くしたはずの大広間に優しい月光が差し込む。


 思わず振り返るファナにとって今一番起きてほしくなかった現実が目の前にあった。


「――ファナ……ちゃん……?」


 キョトンとした顔で扉の前に立つ女の子のサラサラな髪の毛は月光を美しく反射する。


「――な、なんで……どうして……!!」


 ファナの心拍数は急激に速度を増していく。






 ――くそっくそっ!!


 まずい……!

 どこに隠れている……?


「はぁぁぁぁ……ふふぅぅぅ……ははぁぁ」


 俺は2階に存在する全ての部屋を開けたがターゲットである術者を未だ見つけられていなかった。

 最後の部屋を捜索し終えると、大きく深呼吸をして脳に十分な酸素を供給する。


「考えろ……何か見落としているはずだ……」


 おそらく術者としてはこのまま時間が経過してファナの洗脳が完了した後に、ダンテの援軍と合流するのが目標なはず。

 そしてこの規模の呪縁魔法を永続的に発動しているうちは戦闘に回すMPも集中力も無いはず……。


 従って戦闘にならないように誰にも見つからない場所でひたすら身を隠しているってのが考えうる術者の行動パターン。


「――不可視擬ふかしぎのような隠蔽魔法を使える可能性もあるか……?」


 いや無いな。

 使用する魔法難度にもよるが隠蔽魔法で姿を隠せる時間などたかが知れている。

 そうなると屋敷全体に満遍なく呪縁魔法をかけ続けれる場所でありつつ、誰も知らない場所がベスト……。


 考えていると部屋の窓の外から庭師の会話が聞こえてきた。


「おい。今日もあの音聞こえたか?」


「ああ。でも今日は早かったよな。いつもは深夜に鳴っているイメージだが……」


「たしかにな。あの石が擦れるみたいな重低音どうにかなんねぇーかなー。最近は毎晩寝てても起きちまうよ」


「でもすぐ音がなった場所に行ってもなんともなってねぇーもんな。お化けでもいるのかねぇー」


「はは! ちげーねぇー」


 石が擦れる……?

 最近……?

 深夜……?



「あ」


 その時ふとある場所を閃いた。


「あそこなら……もしかして……!」


 閃いた瞬間、俺の足は一階に向けて走り出していた。


「待ってろファナ……! 絶対見つけ出してやるからな……!」



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