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海辺の家  作者: 魚住申太郎
21/21

21【第五歌】《麟太郎の夢》(下)麟太郎とルカとの交歓の続き

《閲覧注意》BLの【性的な行為】が含まれる描写があります。そういうのを苦手な方は読むのをやめてください。

※アポリネール『秘めごと歌』を参考にしました。

目を覚ましたとき

麟太郎はキラウエア火山になっていた

あの紙片ペーパーのなせるわざか

キラウエア火山になっていた


頭は山頂

手足は山裾

ではない

尻の双丘を擁した活火山

二つの真珠の山のはざまに口をあく

双丘に挟まれたところに口をあく

それは噴火口


神秘な扉の噴火口

語ることさえ憚りある妖術の戸口

誰も語らぬ呪文の扉

至上の戸口たる扉

アポリネールが詠う

噴火口


噴火口が左右に割られた


「あ」


溶岩の代わりに

短い悲鳴が噴出した


火山の上を

美しい紅い鳥が旋回している

紅い鳥は紅い舌を

ちろちろ出しながら旋回している


鳥は火口めがけて降りてくる

火口に堕ちたら焼けてしまうよ


大丈夫

私は不死鳥

火に焼かれれば黄泉返る


不死鳥が火口に近づく

火口に至った

不死鳥が火口に至った

噴火口に柔らかくて

そして

溶岩よりも熱いものが

ぺろりと貼りつく


不死鳥の舌だ

この扉を開く鍵を持つ不死鳥の舌が

尻の双丘の

間にある噴火口を

舐める


「ああ」


溶岩の代わりに

火山の悲鳴がまた噴出した


ちろちろ ちろちろ

紅蓮ぐれん

大紅蓮だいぐれん

不死鳥の舌が

尻の双丘の噴火口で

うねうね うねうね

動き回る


固く閉ざした火口が

ゆるり ゆるりと

ほぐされていく


噴火しちゃうよ

キラウエア火山である麟太郎はそう思う


紅蓮

大紅蓮の

不死鳥の舌は

ときどき尖った舌先となり

噴火口の内部に入り込もうとする


「いやっ、あ」


溶岩の代わりに

火山の悲鳴がまた噴出した


噴火しちゃうよ

キラウエア火山である麟太郎はまたそう思う


尖った不死鳥の舌は

とうとう

噴火口の中に潜り込んでしまった


不死鳥の舌は

ぐりぐり ぐりぐりと

噴火口をもみほぐす


紅蓮の火を消さんとて

不死鳥は唾液を注入し

ときどき唾液を注入し

火口を潤そうとする


「もうずいぶん柔らかくなったね」


突然、ルカの声が聞こえた


「ルカ、君だったの」

「いや?」


答えぬ前に

舌ではないものが火口に入ってきた


「指?」

「うん」


「え?」

「痛かったら言って」


答えぬ前に

ルカの指が動き出す


ルカの指は生き物のように

火口の中を探索する


熱い


火口だから熱い


熱い


快感はなく

ただ熱い


内臓にふれられているようで

食べ物が喉に戻るようで

指が喉まで到達しているようで


不快感

しか

ない


「ルカ やめ…」


と言おうとしたとき


「ひっ」


突然、やって来た


噴火口の

ルカの指のあるところに

全身の神経が怒涛のように

流入した

集まった


電流が流れ

すぐにでも噴火しそうになった


「や、そ、そこはダメ」


「でも、麟太郎、ほら」


ルカの手が前に回り

麟太郎のペニスを握った


まだ朦朧とした意識の中で

ペニスは

激しく勃起していた


それは

火山の真ん中に屹立する世界樹である


ルカの指は噴火口の内部を探る

もう片方の手は世界樹をゆっくりと撫でる


「あ、ああ…っ」


浅い火口で

指の抜き差しが繰り返され

唾液をたっぷり塗った手で

世界樹が捏ねられる


「ああ、またいきそう」


ルカは麟太郎のペニスの根元をにぎって


「待ってて」


と言った


ルカの指は火口から出ていき

代わりにもっと熱いものを火口に当てられた


ルカはゆっくりと腰を動かし

火口を開こうとする


「あ」


固いものが火口をねじ開ける


「痛い」

「麟太郎、大丈夫?」

「う」

「いくよ」


「あ、ダメ」

「ダメなの?」

「ちょっと待って、ルカ」

「え、ダメ?」

「うん。痛い」

「痛いの?」

「ごめん、ダメそう」

「ダメじゃないよ」

「でも、ダメなんだよ、ルカ」


朦朧とした意識の中でも

痛みはある

そしてそこはやっぱりいけないような気もした


いま

少し我慢して

噴火口の中の

気持ちいいとこに

ルカのペニスが入って来たら

もっと気持ちいいかも知れないけども

だから

ダメなような気がして

ルカには申し訳ないけど

まだちょっと早い気がして


「まだダメなんだよ」


ルカのペニスが突然、力を失った


「ごめん。許して」

麟太郎はあやまった。


「いいよ」

「ごめん。許して」


「いいよ。じゃあ、口でさせて」


まだ半分朦朧とした意識


麟太郎はルカの口中で射精した


この夢は決して覚えていない夢

麟太郎も知らない夢


ただ麟太郎は勃起し

そして夢精する


舞は聞いた


「ごめん。許して」


その言葉だけを


あとは知らない

知るすべもない


麟太郎も知らない


夢は繰り返されるが

何があったのかの記憶は茫漠としている


麟太郎はただ、自分はルカにひどいことをした、そしてそれが原因でルカが死んでしまったという、像を結ばない記憶だけを抱き続けていた。


そのころ

C市にいる舞の父は

「ほとほと」という扉を叩く音を聞いた


父は扉を開けた


誰もいなかった


まだ少し早いようだ


(つづく)

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