【第1話】事故にあった無職、天界に行く
「まーた不採用か。まぁ齢39歳になって職歴なしのその日暮らしの人間を正社員で雇ってくれるとこなんてないよな。」
夏の日差しにうんざりしながら大きな建物からとぼとぼと独り言を言いながら出てきた男の名前は鈴原 全助。
独り言だけで分かってしまうが、この男は無職。
先程までいたのはナロワークという職業安定所。
今年も半年しか経っていないにも関わらず面接を受けて落ちた回数は16回、書類段階でお祈りをされたのは47回と就業意欲はあっても結果が伴わない39歳。
何せこの男、生来何をやっても下の下の結果しか出せないのだ。
顔は中の中ぐらいで中肉中背。
生きてきていい結果を残したことがない。
今もナロワークに紹介してもらった企業に落ちたことを律儀にも報告したところである。
「…さて、午後からは工事作業の派遣だし一度帰って着替えるか。」
どうにか気持ちを切り替えるためにまた独り言を言いながら歩くもその後ろ姿は頼りない。
常にドン底の全助は下を向きながら帰路についていると横断歩道の途中で
プップーーーーーー‼︎!
大きな音に驚き音のした方を向くと20m先から猛スピードでこちらに向かってくるトラック。
まだ全助は気付いていないが赤信号の横断歩道を渡っていた。
距離的に避けれる範囲だったため必死にトラックの走行範囲から外れるも逆方向に走る車線の車に思い切り跳ねられてしまう。
ドゴンッ‼︎
不幸なことに時速80キロで走っていた車に跳ねられた全助は吹っ飛び何回も跳ねて地面に放り投げられる。
鈴原 全助(39)は漫画やアニメのように人生を振り返ることもなく、そのまま人生を終えてしまった。
(ここはどこだ…?)
いつものように独り言を言ったつもりだが声は出ていない。
「すまん、才能ありすぎてハンデを与えたら超々晩成型で人間だと乗り越えられんかったわ。」
急に現れた白い服装の爺さん、いきなり言われたかるーい謝罪についていけない全助。
「ここは天界じゃ。お主は地球で飛び抜けた才能を持ちすぎてわしが超晩成になるハンデを与えたのじゃが人間目線じゃなくて天界目線の長さの時間での研鑽が必要になってしもうてのぉ…。すまんっ☆」
いきなりすごいことを言った爺さんがいるものの未だついていけていない全助に少しだけ意識がハッキリする出来事が起きる。
「ちゃんと謝りなさーーーーーい!!!!!」
バコーーーーン‼︎
「ヴォエッ‼︎」
澄んでいながらも怒気を含んだ声と汚い声をあげて消えた爺さん、鳴り響いた激しい音の直後に全助の前にその原因の正体が現れる。
「申し訳ございません。あなたの人生をあの馬鹿神のせいで無茶苦茶なことにしてしまいました。」
先程の爺さんとは違い誠意を込めた真剣な土下座で現れた綺麗な髪。
その背に翼が生えてなければ鼻の下を伸ばすだけだっただろうと思うような雰囲気を醸し出しだす女性だった。