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日常の大切さ

作者: ケン犬


雨の中、俺は傘もささずに走っていた。アイツに会うために・・・。


俺の名前は斉藤アズマ。都内にある高校の3年生である。

帰宅部で家に帰ってゲームや漫画を読んで過ごしている。もちろんテストはいい点が取れず、下から数えた方が早い。

「アズマ~。勉強してんの~。また赤点になっちゃうよ~」

「うるせー。そういうお前はどうなんだよヒカリ」

俺に声をかけてきたのは幼馴染の一ノ瀬ヒカリ。小さいころから一緒に過ごしていて家でゲームしたり、漫画を読みに家に来る程の仲だ。明るく活発な女子で、ほかの男子からも人気がある。

そして・・・元彼女だ。


高校1年の頃、彼女欲しさに俺から告白した。思いのほか1発でOKしてくれた。

しかし彼女になっても今までと変わらないままで過ごしていたら

「アズマ。今の私たちってカップルなのかな?」

そう言われて、即答できなかった。カップルらしいこともせずに俺の彼女だというのはなんか違った気がしたからだ。そして・・・そのまま俺たちは別れた。

別れたあとはお互いにぎくしゃくするもんだと思っていたのだが、ヒカリは変わらずかかわってきたのだ。

俺に気を使ってかわからないが、いつもの日常に戻った。それに安堵する俺がいた。


「ってか今日もうちに来るのかよ」

「いいじゃーん。アズマの家でのんびりしたいんだよ~」

いつもと変わらない帰り道を二人で歩いている。この居心地の良さに少し微笑むと

「なーに笑ってんの。変なこと考えてたんでしょー。アズマのエッチ~」

「なっ!!ちげーよ。つかお前で変なことなんて考えねーよ。何言ってんだ」

ちょっかいをかけながら俺の家までくるヒカリ。結局一緒にゲームしたり漫画を読んだりして過ごした。


外は暗くなり時計は7時半を指していた。

「あ。もうこんな時間じゃん。そろそろ帰るかな~」

「おう。そうだな。じゃあ家まで送るよ」

そう言ってヒカリの家まで付き添って歩く。

「家近いんだからそこまでしなくていいのに~」

「そういうわけにはいかないだろ。一応女子なんだから見送りさせろ」

「やっさし~。ただし、一応をつけたのは減点でーす」

そういって俺の背中を叩いて走り始めるヒカリ。

「痛ッ。なにすんだコラー!」

「わー。アズマが怒った~」

追いかける俺。逃げるヒカリ。こういうやりとりも昔から変わらない。

そうしながらヒカリの家の前についた。

「アズマ。ありがとね~」

「別に。大した距離じゃないから気にすんな」

「ううん。それでも言わせてありがとう」

「おう。じゃあまた明日な」

「うん。また明日」

ヒカリが家に入っていくのを見てから俺も家へと帰った。

少しだけ、違和感を感じながら・・・


天気は雨だった。傘をさして登校したが珍しくヒカリにちょっかいされなかった。

いつもだったら登校中、もしくは学校に着いたら声をかけてくるのに。

教室にヒカリはいなかった。珍しい。体調不良なんて今までなかったのに。

昨日だって元気だったのに。少しずつ違和感が大きくなっていく。

胸が苦しくなっていく。

チャイムが鳴り、担任がHRを始めた。

「みなさんに大事な話があります。一ノ瀬ヒカリさんですが・・・」

違和感から確証に変わった。


俺は担任が止めるのを無視して学校を出た。授業をサボるのは初めてかもしれない。

雨の中、傘を差さずにアイツの家へと向かった。

違和感を感じたのは玄関。ヒカリの玄関には植木鉢がいつもあった。

ヒカリのお母さんは園芸が好きで、よく植物を育てていたからだ。

それが昨日はなかった。単に片付けただけかもしれない。

でも何年もアイツと関わってきたから分かる。わかっていたはずだったのに・・・!!

昨日のヒカリの”ありがとう”がリピートされる。

あれは送ってくれたことだけじゃない。今までのことを言っていたんだ。

ヒカリの声が少しだけ震えていた気がした。気づけなかった。気づかないふりをしていたんだ。

いつもと変わらない日常が変化することを怖がって。

だからあいつに・・・ヒカリに・・・!!


「ヒカリ!!」

雨で身体はびしょびしょで、重くて、走ってきたから息もゼエゼエ。それでも大声で叫んだ。

ヒカリは目の前で車に乗ろうとしていた。ヒカリも俺が来たことに驚いているようだった。

「アズマ・・・。どうして・・・」

「なんでいわねーんだよ。転校するって。家の都合ってなんだよ。」

そう。ヒカリは学校を転校するのだ。両親の都合で。

「家の都合は・・・家の都合だよ。アズマに言わなかったのは心配かけると思って」

「親、離婚したんだろ」

「!?」

「昔から仲が悪かったのは知ってた。お前が悩んでたのも知ってた。でも聞けなかった。お前が話してくれないのに俺から話すのは違うと思ったから。全然話そうとしなかった。ずっと隠してた。だから俺の家に来てるんだろうなとかいろいろ考えてた。」

俺の話を俯いて聞いている。

「でも引っ越すことは言えよ。マジで驚いて。全力で走ってきたんだぞ」

「ごめん。アズマに迷惑かけたくなかったから」

「今までだって迷惑かけていただろうが。」

「ごめん」

謝り続けるヒカリ。俺は謝ってほしいんじゃない。

「で、どこまで行くんだ。都内・・・じゃないよな」

「うん。岩手県。お母さんの実家がそっちなの」

「マジで遠いな。ハァ…。」

すぐに会いに行ける距離じゃない。今までみたいに登校はできない。

ヒカリと一緒にいられない。それが俺にはとても辛くて苦しくて。

日常が変わろうとしている現在(いま)。変わらないと思っていた日常。

その日常がとても大事で大好きであったことを自覚した。

大きく深呼吸をしてヒカリへ話す。

「ヒカリ。俺、やっぱお前が好きだ」

「うん」

「あのときの告白とは違う。なんとなくじゃなくて、彼女が欲しいからじゃなくて。ヒカリがいいんだ。ヒカリが好きだから。ヒカリとの日常がとても俺にとって大事なもんだって気づいたから」

「うん」

「だから俺と付き合ってくれ。遠距離でもいい。離れても俺からヒカリに会いに行くから。そしていつもみたいに俺と一緒にいてほしい」

「うん・・・私も・・・アズマに会いに行く」

傘をさしたままのヒカリの目元には大粒の涙がこぼれていた。

「アズマ。大好き」

そしてヒカリは岩手へと旅立った。

雨は止み、曇った空の隙間からひかりがさしていた・・・。


「ちょっとアズマ~。雨降りそうだから洗濯物取り込んで~」

「おいおい。家でゴロゴロとゲームしているヒカリさんがするのがいいじゃないでしょうかねー。こっちは誰かさんのためにご飯作っているんですけど?」

「え~。アズマがやって~」

あれから数年がたち、俺たちは同棲して過ごしている。

俺が望んでいた日常を取り戻すことができた。

これからもいろいろとあるだろうけど、俺はヒカリと一緒にこの日常を大切にしていくつもりだ。

「あー。私の下着みてニヤニヤしてるー。アズマのエッチ~」

「はぁ?!お前の下着でニヤついたわけじゃねーから!」

あの雨の日を思い出しながら、新しい日常を楽しもうと思う。


いやー雨を表現することの難しさをこの作品でとても痛感しております。

次の作品どうしよう・・・。うまく書ける気がしません。

読んでいただいてまた気に入りましたら次の作品も見てください。

ではでは!

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