13.アタシの報連相_02
「……と、こんな感じなんだけど」
アタシは今朝キャンプを出て行ってから夜にキャンプに戻って来るまでの顛末をざっくりとボース達に話した。
「ええっ、ヴァルキリーを従者に、ですか?」
「おいおい、ヴァルキリーを従者にしたやつなんて初めて聞いたぞ?」
「ヴァルキリーって、従者に出来るものなんですのね……」
三人が驚くのも無理は無い。アタシが一番驚いてたんだから。
「そう、プレクトとヒルドって言う二人なんだけど、今呼び出すね」
アタシは椅子から立ち上がってテーブルから少し離れ、両手を前に差し出す。で、ここでふと思う。
(アタシ今、悪魔じゃなくて人間なんだけど、ここからあの二人を呼べるんだろうか?)
悪魔化最中にプレクトとヒルドを呼び出しはやったが、人間体の今それが出来るのか試していない。
(いいや、やってみてダメならまた悪魔化すればいいんだし)
「プレクト!ヒルド!出てきて!」
アタシはプレクトとヒルドが出て来てくれるよう念じる。すると両手が熱くなり、キラリと白く光った。
-フワァッ-
アタシの両手から出た白い光が集まり、人の形を成していく。そしてその光がひと際強く光った後、その場には兜を被り鎧を着こんだヴァルキリー姿のプレクトとヒルドの二人が立っていた。
「お初にお目にかかります、ボーフォート辺境伯、俺はヒルドと申します」
「どーもこんばんわー、俺はプレクト・ランサスってい言うんだ。よろしくな!」
礼儀正しくボースに向けて白いスカートの裾を上げてカーテシーを決めるヒルド。対して手を上げ軽く挨拶するプレクト。
「すごいですね、ヴァルキリーが二人も。容姿が昨日のヴァルキリーとは少し違う?みたいですけれど」
「おお、ホントに出てきたな、こりゃすげえ。おう、俺がボーフォート辺境伯のボースだ。よろしくなヒルド。と、プレクト」
マースとボース、二人ともそれぞれで驚愕している。
「これはなかなか、悪くありませんわね」
キートリーも驚いてはいるが、マース達とはどこか観点の違う驚き方だ。
(人のままでも二人は呼べるんだ?なるほどなるほど?)
アタシはアタシで人間体のままでも二人を召喚できることに感動している。人のままでも呼べるのと、一々悪魔化しないと呼べないのとでは便利さが違う。どういった理屈で呼べるのかはわからないけど、呼べるんならオーケーだ。
「それで、こちらがご令嬢のキートリー様と、ご子息のマース様でいらっしゃいますね?お初にお目にかかります、ヒルドと申します」
「あら、これはご丁寧に。ええ、ワタクシがキートリーですわ。よろしくお願いいたしますの、ヒルド」
「ああ、僕がマースだよ、よろしくねヒルドさん」
(ヒルド、中身ゴブリンなんだけどなぁ、忘れそうになる)
ヒルドはキートリーやマースに対しても礼儀正しい。ヒルドを傍から見ている分には、貴族を守る高潔な女騎士様と言った感じなんだけど。
で、対するプレクトだが、
「何?このチビがおっさんの息子なの?へぇー?へぇー?」
マースをチビと呼び、物珍しそうにマースの周りをぐるぐる見て回る。明らかに態度が悪い。
「チ、チビ、です、か?」
マースが片眉をぴくぴくとさせてプレクトを睨んでいる。
(マース怒ってる?)
マースは確かに年齢の割には身長が低い。この反応をみる限り、身長にコンプレックスがあるのかもしれない。アタシなんかは学生の頃から同年代の子と比べてやたら大きかった、いや、今でも女としてはやたら大きいんだけどさ、なので小さいと言われる人の気持ちはわからないのだけれど、だけど言われて嫌な事であると言うのは想像付く。兎も角、これはいけない、アタシはプレクトを止めに入る。
「プレクト、マースはアタシのご主人様なんだよ?失礼な態度はやめて」
「えぇー!?こいつが千歳のご主人様!?俺コイツよりもそっちの強そうな赤ドレスの姉ちゃんの方がいいなー。こいつチビだし弱そうだもん」
火に油を注ぐプレクト。マースを見てみれば、明らかに握りしめた拳に力が入っている。相当頭に来ているようだ。
「ほぉー、言ってくれますね……」
(マースがめっちゃ怒ってる)
眉間に皺を寄せ、プレクトを睨みつけるマース。身長の事だけでなく、弱いと言われたのが癇に障ったらしい。
ふとさっきから黙っているキートリーの様子を伺ってみると、
「……」
(やばい、怒ってはいないけど……かなり渋い顔してる)
キートリーは黙ってはいるが、表情から不機嫌になっているのが見て取れた。どうやら弟を馬鹿にされるのは身内として許せないらしい。まあ当然と言えば当然か。
アタシは二人の態度を見てこのまま放っておくことのヤバさを感づいたので、プレクトをキッチリ止める。
「プレクト、やめて。言う事聞かないとお家へ突き返すよ?」
「へーい、わかったよー」
不服そうにアタシの後ろに下がるプレクト。だがマースはプレクトを睨んだままだ。
「マース、ごめんね、この子ちょっと礼儀知らずで」
「いいえっ、千歳姉様が謝る事ではありません」
アタシがマースに声を掛けると、マースは眉間の皺を一気に解消し、笑顔でアタシに向かって答える。一見アタシから見れば大丈夫そうな顔だが、彼の拳には力が入りっぱなしだ。
(マース多分まだ怒ってるなぁ。プレクトめ、後でキッチリ言い聞かせておかないと)
このまま二人に話させておいたらケンカを始めてしまいそうだったので、本題の捕まえた黒いヴァルキリーに話題を戻す。
「これ、見てほしいんだけど」
アタシは椅子から立ち上がり、黒いヴァルキリーを巻いているテントの膜材を外した。そこから現れる縛られた上に痺れ毒で動けないヴァルキリー。
「わあ、完全に昨日のヴァルキリーですね……」
「千歳、お前ぇよくもまあこんなの捕まえたな……」
「昨日お姉様が食べたのと全く同じですわね……」
三人とも席を立って黒いヴァルキリーを近くでマジマジと見る。
「うん、まあ捕まえるつもりはなかったんだけど、残っちゃったから持ってきちゃった」
ヴァルキリーは目だけキョロキョロと動かして三人を見ていた。アタシがボースのテントに墜落した時にケガでもしてないかと心配になったが、彼女は彼女でそこそこ頑丈らしく、ケガは無いようだ。
「持ってきちゃったって、おまえなぁ……で、これどうしろってんだよ?」
頭をポリポリ掻きつつ、ボースがオイオイと言った感じで言ってくる。
「今は痺れ毒で動けないけど、毒が切れたら多分暴れると思うんだよね。だけど出来れば穏便に、どこかに捕えて置いておいて欲しいんだけど」
割と無茶なお願いをしているような気もするが、アタシは出来れば彼女を殺したくないし、殺されるのを見たくも無い。せめてアタシが彼女を美味しく喰えるよう、注入できる魂が手に入るまで捕まえておいて欲しい。今からシュダ森に突撃してゴブリンの魂でも喰って持ってくれば手っ取り早いのだが、今日は正直もう寝たいのでそれはやだ。
「ちょっとこの方、触ってみても、いいですか?」
「いいと思うけど、一応気を付けてね?」
「はい」
アタシの許可を得たマースが黒いヴァルキリーをつんつんと突き始める。頬っぺたや腕、首当たりを触っている。何かを確かめているようだ。相手のヴァルキリーはマースの動きを目で追っている。相変わらず無表情なので嫌なのかどうかも読み取れない。
「触った感触は完全に人ですね、ただ体温が低いのでしょうか、暖かみがないです。翼は、おおよそ鳥の羽のようですが。後は……なんだろうこれ?糸?」
「糸?」
マースはヴァルキリーの背中の上辺りの何もないところを触るような仕草をしている。アタシからは何も見えないので、まるでマースがパントマイムでもやっているかのようだ。
「糸ってなぁにマース?」
「え、あれ、僕の見間違いかな?ああ、うん、多分見間違いです、千歳姉様」
「んん?」
そう言ってマースは黒いヴァルキリーから離れた。
(糸ってなんだったんだろ、まあいいか)
「そんでこのヴァルキリーだがよぉ、このキャンプに牢屋なんて持ってきてねえぞ?縛っておいておくぐらいならいいけどよ」
「多分、ロープで縛ってるだけだと普通に抜けてきちゃうと思うんだよね……ヒルド」
「はい、御主人様」
アタシはテーブルの上にあった金属製のスプーンをヒルドに渡した。
「それ、ちょっと手で力いっぱい引っ張って貰える?」
「はい、わかりました」
「なんだ?何する気だ?」
不思議そうな顔をしているボースを前に、両手でスプーンを握り、全力で引っ張り出すヒルド。
-ぐぐっ-
「ふんっ!」
-ブチッ-
-カランカラン-
ヒルドの手によって両側から引っ張られスプーンは無残にもあっさりと千切れ飛び、地面に落ちる。
「オイオイオイ、曲げるだけなら兎も角、引っ張って千切るたぁ細い見た目な割に結構な力持ってんじゃねえか」
「ヴァルキリーの力、これほどとは。これでは牢屋があったところで、素直に入っててくれるか怪しいですね……」
ヒルドの怪力に流石に吃驚したのか溜息を漏らすボースとマース。
「あら、やりますわね」
キートリーが何故かテーブルの上にあったスプーンを3本束ねて持ち始めた。そして両手を闘気で橙色に光らせ、束ねたスプーンを引っ張り始める。
「せいっ!」
-ブチブチブチッ-
-グシャッ、グシャグシャッ-
「ざっとこんなところですわ」
-ゴロン-
キートリーの手によって無残に千切れた3本のスプーン。彼女は更にそれをおにぎりでも握るかのように一つにまとめ、一個の金属ボールにして掌の上で転がしている。
「えぇ……」
「すげえ!千歳の手と同じやつだ!やっぱこの姉ちゃんすげえやつだ!」
「ふふん」
「それ俺のスプーンなんだが?」
「僕のスプーンもです、キートリー姉様」
キートリーの馬鹿力にドン引くアタシを余所に、キートリーの闘気を見てぴょんぴょんはしゃぐプレクト。何か得意げなキートリー。ボースとマースは自分が使ってたスプーンをキートリーに金属の塊にされてしまい不満げだ。キートリーのパフォーマンスは面白いのかもしれないが、話が横道に逸れるのは好ましくない。
「プレクト、お座り」
「ん、ごめん千歳、座る」
プレクトはアタシの指示を聞いて大人しく地面に座った。
「千歳様、お嬢様、食器を粗末に扱っては行けませんぞ」
「うわあっ?セルジュさん、ごめんなさい」
「あらセルジュ、早かったですわね」
アタシは後ろからヌッと出てきたセルジュさんにびっくりして軽い悲鳴を上げた。いつの間にかセルジュさんが戻ってきていたようだ。セルジュさんはヒルドが千切って地面に捨てたスプーンを手に持って、アタシとキートリーに苦言を呈している。
即謝ったアタシと違って、キートリーはセルジュさんの苦言にも素知らぬ顔である。キートリーの性格上、慣れたものなのだろう。
「サティ様はお嬢様のテントにてお休みになられました。護衛にはエイミーが付いております」
「ありがとうセルジュ、助かりますわ。はい、これを下げてくださいな」
「畏まりました」
(セルジュさんに金属の塊を渡してどうすんのさキートリー)
セルジュさんに礼を述べつつ、元スプーンな金属ボールを手渡したキートリー。セルジュさんは受け取った金属ボールごとボースのテントの修復に戻っていった。
「えーっと、なんだったっけ?」
キートリーに話の腰を折られ困ったアタシは、どこまで話したかをみんなに聞いた。
「このヴァルキリーの拘束についてです、千歳姉様」
足元のヴァルキリーを指差しつつすかさず話題を戻してくれるマース。
(気が利くと言うか、配慮が行き届いているというか、兎に角マースのこういうところ好き)
このままマースを抱き締めて彼の頭を撫で回したい気持ちを抑えつつ、アタシは話を続ける。
「そうそうそれ、そういう訳でこの黒いヴァルキリーをどうしたらいいかなぁって」
「どうしろってぇ?……どうするよ?」
ボースは困った風な顔でキートリーとマースに視線を向ける。そしてボースと視線の合ったマースが口を開いた。
「んんー、そうですね……ヒルドさんとこの黒いヴァルキリーが同じ力を持っていると仮定して、今の力を見る限りだと……普通の手枷足枷程度じゃ簡単に抜けられそうですし」
ボースとマースは黒いヴァルキリーの処遇を巡って頭を捻る。
「獣人用のオリハルコンの枷、持ってくるべきだったなぁ」
「そうですね父上、ゴブリン相手じゃ必要ないからと持ってきてませんからね」
「オリハルコンって、あのオリハルコン?」
オリハルコン、伝説上の神が与えた最も硬い金属だとかなんだとかって言うやつだ。相当希少なモノだと思うのだが、この世界では枷に使える程度に産出されているのか。
「はい、千歳姉様。神が与えたと言われる金属オリハルコン、オードゥスルスにおいて最も硬いとされる金属です」
「神って言うと、フラ爺が作ったってことになる?」
「えーっと……」
アタシがフライアの事を言うとマースが困った顔をして黙ってしまった。今度はアタシが話の腰を折ってしまったようだ。いくらフライアが女神メルジナの正体だからとは言え、オリハルコンなんて金属まで作れるかは怪しいところだ。まあ作れないとも言い切れないのがあのお爺ちゃんの困ったところだけど。
「話を戻しますわよ?それで隣国ジェボードにはこのヴァルキリー程度の力の獣人がそこそこいますの」
「ああ、だから獣人の捕虜なんかは普通の手枷じゃ捕まえておけねえからってオリハルコン製の枷を使ってんだよ」
「はえー」
今度はキートリーとボースが話の軌道修正をしてくれた。ヴァルキリークラスの腕力を誇る獣人族が居るというジェボード国、少し興味が湧いてきたかもしれない。殺し合いは嫌だけど、ただ格闘技の競い合いをするだけならアタシは嫌いじゃない。正直に言うなら、明明後日のキートリーとの試合もかなり楽しみにしている。キートリーは実戦で滅茶苦茶に鍛えているからきっとアタシは負けるだろうけど、それでも今の自分の力がどこまで通用するか試せる。キートリーとまともに打ち合い出来るなら嬉しいし、一撃で打ち倒されるならまた鍛え直す目標が出来て、それはそれで有意義。そんな訳で、隣国の獣人さん達とも仲良く試合が出来ればいいんだけれど。あーでも最近まで戦争してたって言うし、難しいだろうなぁ。
と、アタシがそんな余計な事を思っている間も、マースがオリハルコンの説明を続けてくれている。
「ただオリハルコンは貴重なモノでして、ボーフォート領でオリハルコンの枷があるのはボーフォートの街だけなのです。そして今回の討伐隊にはオリハルコンの枷は持ってきていません」
「へえー」
三人の話を聞く分に、やっぱりこの世界でもオリハルコンは希少らしい。最も神が与えた金属とかそうそう量産されてはたまらない。ただ相手がフライアとなるとホイホイ持ってきそうで恐ろしいんだけども。
「さて、そうするといよいよ持ってこの子を捕まえたままにしておく方法がないよねえ……」
足元のヴァルキリーはキョロキョロと視線だけ動かしてアタシやマース達を見ていた。毒が抜けてこの子が動き出す前にまた痺れ毒の矢でぷすぷす刺すと言うのも手だが、明日はメグ救出のために海に出ないといけない。ヴァルキリーの毒が抜ける前にキャンプに戻って来られる保証がない。
因みに、肝心の毒矢はヒルドが持っている。危ないので捨てようかとも思ったのだが、何かの役に立つかもと矢筒ごとヒルドに持たせている。
「ご主人様、あの目は使わないんすか?」
「ん?ヒルド?目?あの目って?」
「目っす、相手に言う事を聞かせるご主人様のあの目っすよ」
「ん?んー?あっ、あー!魔眼か!忘れてた!」
ヒルドの言葉に思わず手を打った。魔眼の事を完全に忘れていた。普段使わないもの、今まで使えなかったものは割と忘れやすい、マジで。
「魔眼?魔眼ってぇ、アレか?」
「実演した方が早いですよね、こういうのです」
魔眼について聞いてくるボースに対し、アタシは口頭で説明をするよりも手っ取り早い実演をすることとした。さすがに人間体のままで魔眼は使えないだろうと悟ったアタシは、悪魔へ変身するため口に手を当てる。
(変われ、アタシ)
-バチィッ-
静電気のはじけたような音と共に、アタシの両手が青くなり、目が黒白目の悪魔の目へと変わる。今のアタシは手と目だけ悪魔な中間形態だ。
そしてアタシは間髪入れずにボースを見て魔眼を発動させた。熱くなるアタシの目。
-キィィーン-
「うおっ……!?こっ、こいつぁ……!?だがっ!!」
-キンッ-
アタシの魔眼を喰らい、一瞬目の光を弱らせたボースだったが、すぐさま目に光を取り戻した。
「うそぉ!?そんな簡単に抵抗できちゃうのぉ!?」
アタシの魔眼が破られるのはこれで2人目だ。一度目は英雄弓ゴブリン、そして今回はボース。アタシが未熟なせいなのかこの二人が例外なだけなのか知らないけど、やたら成功率が悪い。
「はははっ!これならフライアに何度も掛けられたからなぁ!?」
「ああ、お師匠様……」
「フライア、ホント、何してますの?」
頭を抱えているマース、呆れ顔のキートリー。得意げにフライアの魔眼を何度も喰らったというボース。どうも彼は魔眼にかなり強い耐性が出来ているらしい。サティさんの吸精耐性みたいな感じだろうか。
「あいつヌールエルが生きていた頃は会う度に俺に魔眼を掛けてきたからなぁ」
「よっぽどヌールエルさんを連れ戻したかったんだろうね」
ボースの言葉に、アタシはついヌールエルさんの話を振ってしまった。
「うっ、そうだな……」
「……」
「……」
(しまった!失言だった!一気に葬式ムードだ)
ボースだけじゃなく、キートリーとマースまで黙り込んでしまう。俯く三人を前にどうしようかと困っていると、
「ご主人様、その魔眼をそこのヴァルキリーに使ってみましょう」
「う、うん、そうする」
(助かったぁぁぁっ!ヒルド!ナイス!)
ヒルドが空気を読んで黒いヴァルキリーの話に戻してくれた。アタシはヒルドに向けて右手の親指を立てサムズアップを決めて見せる。何故か意図が通じたらしく、ヒルドもアタシに向かってサムズアップを決め返してきた。
さてと、アタシは地面に転がってる黒いヴァルキリーの前にしゃがみ込む。無表情のままアタシをジーっと見つめるヴァルキリー。
(ホント、顔は綺麗なんだけど)
ヴァルキリーの美貌を改めて堪能しつつ、アタシは彼女の目を見つめて魔眼を発動させる。熱くなるアタシの目。
-キィィーン-
「ヴァルキリーに効くかな?効いてほしいなぁ?」
アタシの魔眼が効かなかったら、また痺れ毒付きの毒矢を刺してもう一度動けなくなってもらうしかない。その場合、明日もシュダの森を抜けるまでヴァルキリーを連れて行って砂浜に転がして再度毒矢で痺れ毒の刑。
(それはちょっと可愛そうだなぁ)
軽く苦笑いしつつアタシはヴァルキリーに魔眼が効くことを祈った。
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