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 7話


 長かった。

 あいつら底無しなんじゃないかってくらい、ずっっっと腰振ってた。気持ち悪い。

 孤児院にいた頃、『夫婦の営みは子供を授かる尊い行為だけれども、度が過ぎればそれは罪』ってシスターが言ってた。あの時は分からなかったけど、今なら分かる。

 あの気持ち悪い男は確かに罪人だと思う。3対1なのに女を先にダウンさせやがった。その後もしばらく、意識の無い女達相手に腰振続けてた。

 気持ち悪い! 気色悪い! 身の毛のよだつおぞましさ!



 やっと寝やがった。後は護衛を誘いだしちょっとずつ片付けていくだけだ。

 どうしよう? どうやって釣りだそう? 扉でも軋ませてみる?

 扉を少し動かしてみたけど、立て付けが良くて全然音が鳴らない。別の手段を考えよう。

 次は、そうだな、小太刀の鞘で扉を叩いてみるか。

 コッコッ、カッカッと良い感じの音が鳴る。でも奴らは反応しない。もう1度やってみよう。

 また良い感じの音が鳴ったが、奴らは無反応だった。


 !?


 いや違う! 誰か近づいてくる。部屋の中から歩いてくる音がする。でも靴の音じゃない。裸足? それにあまりにも無防備な歩き方だ。よっぽど自信があるみたいに。


 オレは扉の陰に小さくなって隠れていた。だからそいつが、扉の周囲を一応って感じで確認した時、一瞬だけ横顔が見えた。

 間違いない。あの気持ち悪い男だ。

 横顔しか見えなかったが、さっきまでは見えても横顔までだったので、断言できる。あの気持ち悪い男だ。


 オレが驚いてる間に奴は扉を閉めて戻って行った。

 何で奴が扉を? 護衛は? もしかして奴はリーダーじゃない? いやむしろ奴が見張り役で、此処でサボってた? それとも仲間はこれで全部の4人だけの山賊だったり?


 ・・・・・・・・ 突入してみるか。

 なんだか、考えれば考えるほど、オレの考えすぎな気がして馬鹿馬鹿しくなってきた。


 よし! 突入!


 先ずはララの回収。ララは盗まれた荷物の上で平気な顔して寝こけてた。

 それから盗まれた物リストの確認。

 うん、全部ある。と言うか、手付かずのまま全部1ヶ所にまとめてあった。せっかくの戦利品なのにまだ確認してなかったみたいだ。あのお姉さんが戻ってからかなり時間があった筈なんだけど。もしかして、ずっと腰振ってた?

 マジ気持ち悪い! やっぱり問答無用で先に殺すか。


「客を招いた覚えは無いんだが?」


 !?

 心臓が飛び出すんじゃないかってくらい驚いた。こいつ起きてたのか、ならやっぱり罠だったのか。

 落ちつけ、こういう時こそ平常心だって師匠も言ってた。


「盗人猛々しいのはそっちだよ。平和に馬車旅してたオレらこそ、客を招いた覚えはない!」

「ククククク! 違いない!」


 何がおかしいんだこいつ。服着てないし! 気持ち悪い!


「さて、物は相談だが、君達から盗った物は返そう。それで今日の事は水に流して、帰ってくれないかな?

 僕らは無理解な人々の喧騒から離れて、平和に暮らしたいだけなんだ。

 そりゃあ、盗みは良くないさ! だが財布は残しているし命も盗らない。その後の生活への影響は小さいものさ! 良心的だよね! それにこうして訪ねて来てくれれば返す用意もある。僕らは十分に共存できる!

 そうだろう?」


 マジか!? こいつ。頭沸いてんじゃないの?


「おっと、そんな顔しないでよ!

 都合の良いことを言っているのは分かってる! だけど、それも全ては彼女達の為! 愛する3人の妻たちの為!

 彼女達の為ならば、僕は盗人にも成り下がろう! 都合の良いことを言って命乞いもしよう!

 だが、それも全ては妻たちの為!

 そう! 愛ゆえに! 愛ゆえに、僕らは罪を犯してしまった!

 『罪を憎んで人を憎まず』、と神は言う。

 だが君は、僕らが憎かろう。君たちの大切な物を奪われ、身を引き裂かれる思いだろう!

 だがそれは僕らも同じなのだ! ただ妻たちと愛しあって生きていきたいだけなのに、愛だけではお腹が減るばかり。崇高な愛のために、低俗な罪を犯す。

 僕らこそ、理想と現実の狭間で身を引き裂かれる思いなんだ!」


 芝居掛かった、と言うよりも自分に酔ってる? って感じの話し方だ。気色悪い。


 ああ、奴のせいで面倒な事になってきた。奴がでかい声で演説するもんだから、今まで寝てた女達が起き出し始めた。

 何とかもう1回奴に演説させて、その隙に全員殺そう。

 自白もしたし、あの内容だと改心しないだろうし、生かしておく理由も無い。


「一夫多妻は別に罪じゃない筈。おとなしく街中で4人で真っ当に暮らせば良いでしょ」

「そうか、君はまだ人を愛した事が無いんだね?

 僕はね、妻たちと片時も離れたくないんだよ!」

「なら4人で店でもやれば「分かってないな! 片時も離れたくないとは、こうゆうことさ!」


 3人と濃厚な口づけを交わした奴は、寝起きの女達とまた腰を振り始めた。


「愛しあうとはこうゆうことさ! 肌と肌とのふれあい! 秘部と秘部とのふれあい! 2人で1つに、いや、僕らの場合は4人で1つになる行為!

 これが、愛しあうとゆうことさ!」


 予定とはちょっと違うが、まぁいい。バッサリいこう。

 オレは、奴にすがり付く女2人を一刀で斬り捨てる。すぐさま驚いている男の背後に回り心臓を一突き。最後に残ったお姉さんを袈裟斬りにした。


 最後の一太刀だけ凄く後味が悪い。感触が手のひらから消えない。お姉さんは最初に殺るべきだった。そしたら少しはましだったかも知れないのに。


 お姉さんとは、この4日間でとっても仲良くなったんだ。

 孤児院を出てから、あんなに仲良くなったのは師匠くらいだ。孤児院のみんなは家族だし、師匠は師匠だし。

 ちょっと歳上だったけど初めての友達だと思ってたのに。でも向こうは違ったみたいだ。

 あれは、盗みを上手くやるための演技だったんだ。


 男は死んだし、お姉さんも動かない。知らない女達も腹を深く裂いてやった、直に死ぬ。


 盗られたのを持って帰ろう。それで全部忘れちゃおう。

 そうだ! お酒飲んでみよう! 師匠も嫌な事あると飲んでたし! 飲むなって言われてたけど飲んじゃおう! 師匠ここに居ないし。

 オレもお酒飲んで全部忘れちゃうんだ! うん、そうしよう!


「ハハハハハ! 酷いなぁ!」


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