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 4話


「何をしておる! その方ら!」


 オレらが師匠達に追いついた時には、既に決闘は始まっていた。

 そしてオレらと同時に駆けつけた別の美少女が決闘を止めた。


「陛下!? なぜこのような場所へ!?」

「陛下?」

「バカ! 頭下げろ」


 とりあえず師匠のもとへ行くと、師匠に跪かされた。師匠が無傷で良かった。流石オレの師匠だ。


「その方ら、何故このような騒ぎを起こすか! 答えよ!」


 真っ先に騎士団長が答えた。こう言う時、身分高いのってずるいよな。自分に都合よく喋れるし。


「は! そこに跪くルル・ゲイナーズを、実力不足にもかかわらず竜騎士団へ入団させよ、と彼女の師匠であるバラルが申しており、引かぬ私に業を煮やしたバラルに決闘を持ちかけられた次第にあります」

「ふむ、相違ないか? バラル」

「いいえ! ルル・ゲイナーズの実力は充分であり、入団に対し何の差し支えはないと考えます!」


 陛下って王様だろ? ヤバいよ師匠! 逆らっちゃダメだよ!


「陛下、ルル・ゲイナーズの問題は現時点の実力ではなく、その将来性なのです。彼女の騎竜は竜族ではありません。今年は例年になく、彼女を除く全ての生徒が純粋な竜族を召喚しております。今後は皆との差が広がる一方かと」

「陛下! 現在、騎士団内にも竜族以外の騎竜は存在します。飛べない騎竜を加えればもっと多い、ルルの将来性は彼らになんら劣るものではありません!」

「ふむ、」

「陛下、彼らが入団した頃とは事情が違います。戦後の一時的な戦力不足解消の為、以前は来る者拒まず採用しておりましたが、既に必要最低限揃っております。

 加えて、今年はわが弟子のエインリッヒが幻想種を3体も召喚、また、4人の生徒が上位四竜を召喚しております。我ら竜騎士団は黄金時代に突入したと言っても過言ではありません。

 以降は無駄な人員を抱える意味は無いかと」


 上位四竜、か。師匠の氷竜もそうとう強いけど、そのひとつ上のドラゴン。それが4体かぁ。

 オレ、ホント場違いだよなぁ。


「ふむ、なるほど、よく分かった。

 では今後は竜騎士のリストラを行うと言うことか?」

「は、先ずは元帥に提言させて頂く所存」


 なんか王様がオレをじっと見てる。期待しちゃいそうだけど違うんだろうなぁ。


「うむ。

 そうだ、エーリ」

「なんだい? マーちゃん」


 何か1位の奴、妙に王様に馴れ馴れしいな。王様も愛称で呼んでるし。それに王様、1位の奴を見ながらオレの方もチラチラ見てくる。


「エーリから見てそやつはどうなのだ?」

「オレ? う~んそうだな、彼女には悪いけど、全く印象に無いな。むしろ今も、誰? って思ってるよ」


 ダメ押しの一言。まぁそうだよな。これでオレの竜騎士になる道は無くなった訳だ。


 たぶん王様は1位の奴を好きなんだろうなぁ。歳も家柄も近いし、たぶん幼馴染なんだろ?

 それで王様が嫉妬とか独占欲を感じて、オレと1位の関係を探る為に、わざわざ奴に話を振ったんだろうなぁ。明らかにホッとした顔してるし。

 人を、オレを色恋沙汰のだしにするな! そもそも今そんな場合じゃないだろ!


「うむ!

 よし! わらわが直接言い渡してやろう!」


 オレと1位の奴に接点がないと分かってゴキゲンだな。ノリノリのウキウキで人の将来を断ち切る訳だ。


「その方、ルル・ゲイナーズ」


 返事をするべきかオレには分からない。だから師匠を見た。師匠は「返事しろ」って顔してる。


「・・・・・・・・ はい」

「うむ! 実力、将来性、ともに不足! 故に貴様の竜騎士団入団は認めぬ! 以降の決闘や口論は私闘と見なす、心せよ!

 では解散!」


 王様はそのままどっか行くかと思ったら、1番の奴と談笑し始めた。

 まぁ偉い人には下々に生きる者の人生設計なんて関係無いし、興味も無いし、気にも留めないか。

 自分が将来を潰した奴の目の前でおしゃべりするくらいだし。

 前の王様は好きだったけど、こいつは嫌いだ。


 はぁ、つきあってられない。切り替え切り替え。

 オレも部屋に戻るか。寮の部屋を今週中に引き払わないといけないんだ。


「すまん、ルル。俺じゃ力不足だった」


 言葉以上に、師匠の全身から申し訳無さが滲み出てる。


「んーん、師匠は悪くないよ。みんな言ってたもん、オレの実力不足だって。

 だからね? あんな状況で師匠はよくやったよ、お疲れさん」


 肩でも叩いて労ってやろう。


「・・・・ く~! この生意気なガキめ! こうしてやる!」


 おかしい。労ってやったのにまた髪をぐしゃぐしゃにされた。

 でもこれで最後だしな。そう考えると、案外悪くない感じだ。


「寮はいつ出るんだ?」

「あさってだと思う。見送りに来る?」

「暇だったらな」


 これは来るな。「全く興味ない」って顔で澄ましてるけど、絶対来るな。

 しょうがない、3年間のお礼にお菓子でも焼いてやるか。道具や材料は全部寮の食堂で借りれるし。

 でもそれも全部、部屋の片付けが早く終わって時間が空いたらの話だ。




 そして寮から出る日の朝、やっぱり師匠が見送りに来ていた。

「暇なんだなぁ、師匠って」

「まぁな。出世街道外れて、雑務を押っつけられる下っ端が増えると急に暇になるんだよ」

「ふーん、

 あ、そうだ! 師匠、これあげる。自分用だったけど、調度いいから3年間のお礼って事で!」

「パウンドケーキか?」

「うん! オレこれだけは焼けるんだ! 材料全部同じ量だし、混ぜて焼くだけだしな!」

「え~? 大丈夫かよ? ホントに食べても良いやつ?」


 失礼な! 小麦と砂糖とバターと卵だから、焦げたり生焼けじゃ無いかぎりおいしいに決まってる!


「まぁ、お礼ってんならしょうがねえ。ありがたく貰っとく」


 まったく! 師匠も素直じゃないなぁ。


「ルル」

「ん?」

「俺はもう助けてやれねぇし、力にもなれねぇ。

 だから、頑張れよ。

 それで、少しでもヤベェって感じたらすぐ逃げろ。

 何の足しにもなんねぇけどよ、お前が犯罪に手を染めねぇかぎり俺はお前の味方だからな。分かったか?」

「うん。師匠がオレを大好きってのが分かった」

「へっ! バ~カ、早く行け。そろそろ馬車の時間だろ?」


 あれ? 王都を出るって師匠に言ってたっけ?

 師匠の顔を見ると、「全部お見通しだ」って書いてあった。

 この『分かりやすくて何でも顔に出ちゃうおじさん』ともお別れかぁ。

 よし! うっかり泣けてきちゃう前に行くか!


「じゃあね、バイバイ師匠!」

「おう! またな、ルル」


 師匠の声、ちょっと湿ってた。顔見ないで走って正解だったな。つられてうっかり、もらい泣きするかもしれないし。3年も一緒だと、つられやすくなって困る!


 師匠が追っかけて来ないように馬車まで走るか!


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