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 3話


「おかしいだろ! 理由を説明しろよ! 理由をよ!」


 師匠が怒ってる。オレのせいだ。上司である、竜騎士団団長の胸ぐらをつかんで抗議してる。


「理由など分かりきっているだろう? 彼女では我々についてはこれない。圧倒的な実力不足だ」


 何で師匠が荒ぶってるかと言うと、オレの竜騎士団入りが認められなかったからだ。騎士学院の卒業生は漏れなく騎士団に入れるって言うのに、だ。

 オレは圧倒的な実力不足らしい。授業にはちゃんとついていけてたのに。


「ふざけるな! こいつの成績が低いのは平民だからだ! 平民の成績は貴族とは別につけられるし、必ず貴族の下になるように調整されるって事くらい知ってんだろ!」

「だが平民は彼女だけではない。他にも10人ほど居た筈だ」

「平民同士でも入学金で差別される事くらい知ってんだろ? 

 こいつは『ゲイナーズ』。孤児院出身だ。入学金なんて払ってる訳ねぇだろ!」

「故に最下位だと? だが、実際に召喚したのは小さなアラクネ1匹。

 手のひらサイズのアラクネで、どう他の竜騎士と肩を並べるつもりだ? 答えたまえ、ルル・ゲイナーズ」

「あ、えと、・・・・ あの、」


 そんなのオレにだって分からない。昨日の昼に召喚して今日は昼過ぎまで卒業式。その後すぐの呼出し。考える時間が足りないし、そもそも竜族以外は相当珍しくて、まず無いって習ったし、まさか自分がハズレ引くなんて思ってもみなかったんだ。


「バカか!てめえは? あの儀式で竜族以外が召喚されるなんてほぼ無いだろうが! こいつも当然考えてなかっただろうよ。

 こいつなりに立ててた予定が全部パーだ! その対応に追われて、そのうえ卒業式もあった!

 こいつにいつアラクネの運用方法を考える暇があったってんだ?」


 師匠の言うとおり、召喚直後からオレは、アラクネの生態を調べたり、竜族用のお世話道具を取り替えたりで忙しかった。そもそもアラクネ用の道具なんて無かった。今だって全部手探り状態なんだ。

 でも騎士団の団長ともなると、そんな事しながらでも色々考えれちゃうんだな。

 オレなら1晩中寝ないで考えても、良い答えなんて出そうにない。


「寝る間を惜しんで考える。それが竜騎士だろう? それが出来ないのであれば、彼女を我々竜騎士団の仲間に迎える訳にはいかないな」

「そもそも、そういうのは騎士団入ってから考えるのが通常の手順だろうが!」

「フッ! 己の騎竜に誇りを持っていれば、召喚直後から考え始めるのは当然じゃないかな?」

「このっ!「まぁまぁ、お二人がケンカしてどうするんですか。ここは一旦落ちついて「るせえ!! ガキが大人の話に首突っ込むんじゃねえ!! すっこんでろ!!」


 1番の奴が何処からともなく現れて、師匠と団長の間に割って入った。

 何でこいつがここに? オレを笑いに来たのかよ。


「おい! 何でここに部外者がいる? 叩き出せ!」

「彼は俺の弟子だ。部外者じゃない。

 さて、ルル・ゲイナーズ。君達がごねるのは分かっていた。故に君に、チャンスをあげよう。

 このエインリッヒと模擬戦をしたまえ。君が勝てば、騎士団への入団を認めよう」


 むちゃくちゃだ! 勝てる訳がない!


「そんな勝ちの見えてる勝負、けしかけてんじゃねえよ!!」


 私のアラクネは手の平サイズ、向こうは幻想種が3体。どお戦えと? 子供の足でも踏み潰せるくらい小さいってのに。

 ・・・・・・・・

 ・・・・・・・・ いや違う。あの人はそうまでしてオレを竜騎士団に入れたく無いんだ。

 ・・・・・・・・ もういいよ師匠。


「読めてんだよ!! てめえの腹積もりは!! てめえがホントにやりたいのは俺だろうが!!

 乗ってやろうじゃねぇか!! 代理戦争だ!!」

「師匠、もういいよ」


 代理戦争とか駄目だよ。師匠まで騎士団に居られなくなっちゃうかもしれないよ。

 オレは師匠の上着の裾を引っ張って師匠を止めた。


「バカ言ってんな! お前の将来が、人生が掛かってんだぞ? ビビってどうする?」

「いいよもう、オレが駄目だったんだから」

「バカ! 理不尽言ってんのはあの馬鹿野郎だろうが!」

「でも、このまま入っても居心地悪いよ」


「フッ、弟子は諦めたみたいだが? 君はどうする?」

「やるに決まってんだろ!! ここまできたらもう関係ねぇ!! てめえをブッ飛ばす!!」


 駄目だよ!師匠!

 どれだけ上着の裾を引いても師匠が止まってくれない。

 やだよ師匠! やだやだやだ!

 また泣きそうになってきた。昨日からこんなんばっかりだ。


「君、離したまえよ。もはや男と男の意地の張り合い。女の君が口を挟むべきではない」


 1位の奴!

 羽交い締めで無理矢理師匠から引き離された。師匠が団長とどんどん行っちゃう。


「お前こそ離せ!! 部外者だろ! あっち行け! バカ! クソ野郎! くたばれ!」

「あ~あ、言っちゃったね」


 音もなく3人がオレの目の前に現れた。瞬間移動みたいだったのと、あまりの美しさに一瞬だけ見とれてしまった。


「くたばれだって。ボク聞いちゃったよ!」

「呪いの言霊の可能性。一応殺す?」

「一応って。殺るに決まってんだろ? 確殺決定!」


 3人の美少女がオレの目の前で、オレを殺す相談をしている。殺気が感じられず、現実感がまるで無かった。


「まぁまぁ、落ちついて3人とも。勢いで言っちゃっただけさ、そうだろ?」

「うるさい!! いいから離せ!! オレは師匠を止めなきゃいけないんだ!!」


 暴れてたらどこかに当たったんだろう、力が緩んだところをオレは見逃さなかった。

 早く師匠に追いつかないと! 中庭は結構人が居たし、たぶん校舎裏だ。よく決闘してる奴いるし。

 後ろからなんか聞こえてきたけど気にしてられない! 早く師匠を止めないと!


「アハハハハハ! オレっ娘だ~!」

「深刻なキャラ被りの発生を確認」

「マスター、あいつ殺すぜ? キャラ被りとかマジ許せねえ! オレっ娘はオレ1人で十分だ! あいつはオレが殺す!!」

「まぁ、殺すかどうかはともかく、追いかけようか。師匠の決闘も気になるしね」


 それから奴らは信じられな速さでオレに追いつき、オレを捕らえて師匠達を追いかけ始めた。

 オレは隣を走る奴からの殺気で生きた心地がしなかった。


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