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 10話


 オレとララは2日目も拘束され、解放されたのは3日目の昼だった。当然無罪だけど、いやがらせかってくらい時間が掛かった。

 あと、ここのご飯あんまりおいしくない。ララは食事中ずっと『こんなの食わせやがって』みたいな目でオレを睨んでた。

 

 とりあえずここを離れよう。それでまともな宿をとって、屋台巡りでもしよう。おいしいご飯にありつけばうちのお姫さまも機嫌を直すだろうし。

 当面の目標は、ララにオレの事噛まないようにしつける事だけど、先ずは宿。ペット、って言うかアラクネ平気な宿ってあるかな?


「こんにちは~。お部屋空いてませんか?」


 こことかどうだろ? 清潔感があって程々に狭い。あまり高くなさそう。


「うちは高いよ、小娘。

 外観からじゃ分からないだろうけどね、全ての部屋に空間拡張魔法がかけてあんの。

 格式高い、隠れ家的高級宿、それがうち『まどろみ』。

 で? 1拍10万リーンからだけど、どうする?」


 1拍10万!? 予算の100倍!? それなりの武器が買える額だよ! ムリムリムリ! ムリに決まってる!


「他当たります」

「そうしな!

 ああ、あんたハンター志望か? それなら迷宮局の北に行きな。ハンターや冒険者向けの安宿が揃ってるから」


 宿のお姉さんに教えられた北に向かおう。でもいつか泊まれたらいいなって振り返ると、お姉さんは接客中だった。一目で貴族って分かる客相手に、お姉さんはとても丁寧な仕事をしていた。

 オレは客と見られてなかったんだなぁ。

 まぁいいや、行こう。オレには無縁の場所だったんだ。




 で、宿のお姉さんが言う、迷宮局の北に来てみた。

 何て言うか、北の街全体がおもしろい造りになってる。

 屋根が三角じゃなくて、平らになってる。それにどの建物も2階建てで、同じ高さに揃えられてる。屋根の上も道になってるみたいだ。柵があるから危なくないだろうけど、高いのダメな人は住みにくそう。

 建物の脇に階段があるからたぶんあれで上に上がるんだと思うけど、住人は足音気にならないのかな? 

 まぁいいや、それよりも、


「やっど、やど~」

「キャッキャキャ~」


 ララも頭の上でご機嫌にしてる。やっぱり久々の太陽の下は気持ちいい。


「おじょうちゃん宿を探してんのか? それならうちはどうだ? うちは大通りに面した一等地だぜ~?」


 なんか知らないおじさんが話しかけてきた。

 このおじさん、小綺麗な服着てるし笑顔も板についてる。たぶん着いてっても大丈夫な人だと思う。ダメなら逃げれば良いし。


「ご飯は出る? あと、お風呂」

「どっちもねぇな。でも両隣が食堂で、5分も歩けば風呂屋があるぜ。どうする? 泊まるか?」

「ペットいるんだけどいい?」

「おう! 部屋を汚したり壊さねぇなら問題ねぇ!」

「じゃあ、おじさんとこにします」

「1名様ごあんな~い!」


 おじさんの宿を一言で言うと、騙されたって感じ。ちゃんと聞かなかったオレが悪いんだけどね。


 1階は全体がロビーになってて、おじさんからカギを貰ったオレは、さっそく部屋で休もうと2階に上がった。

 2階には10本の廊下があり、廊下に挟まれた壁には廊下の番号が書かれていた。


「なんだこれ!? 廊下だらけじゃん! てかこれ、部屋の大きさロッカーくらいしかないって事!?」


 もちろん、そんな事はなかった。

 この宿も最初の宿と同じで、部屋に空間拡張魔法を掛けてるらしく、それを利用し部屋数が膨大だったのだ。

 ドアの隣がすぐドアで、向かいにもすぐドア。廊下は人がギリギリすれ違えるくらいで、壁はドアを設置するためだけの存在。みごとな迄に部屋数に特化した宿だった。


 薄利多売ってヤツで、家賃は1拍500リーン。オレは1ヶ月分借りたので、1拍350リーンだった。


「部屋を汚すなって言われたけどさ、もう既に汚いよね」


 部屋の掃除は借り主の責任らしく、出ていく時にも掃除しない奴が多いらしい。

 つまり、多少汚くても、ゴミや酷い臭いが無いこの部屋はアタリみたいだ。


「嫌なくじ引きだなぁ、オレはキレイに使おう」


 先ずは部屋の掃除か? と思ったけどよくよく見ると、汚れが染み着いてるだけで埃は全然積もってなかった。前の人もキレイに使っていたらしい。

 これなら掃除は後にして、先に迷宮局に行こう!


「それじゃあハンターになりに、いざ、迷宮局へ!」

「キャー!!」

「痛い!」


 髪をララに引っ張られた。抜けはしないけど、このチクチクっとした痛みが絶妙につらい。


「今度は何? 何なの?」


 指を噛まれながら頭から下ろすと、ララはお腹を抱えて睨んでた。そう言えばそろそろお昼時か。


「あ~、はいはい、先にご飯ね」


 オレはララに操られながら屋台へ向かった。匂いでも感じ取ってるのか、違う道へ入ろうとすると髪を引っ張られるんだ。


 そうしてたどり着いたのは、屋台通り。道の両側に屋台がずらっと並んでた。


「どれにするの?」

「キャー!」


 いや、頭の上で指さされても分かんないよ。

 それでまた髪を手綱に、ララといろんな屋台をひやかしてまわった。


「これが良いの?」

「キャー!」


 最終的にララのお眼鏡にかなったのは、白いふわふわのパンみたいのだった。

 普通白パンは高いんだけど、これはなんかそんなに高くなかった。

 屋台のおばちゃんに50リーン払って1つ貰う。

 ララはまだちっちゃいし、オレもあんまり食べないから1つで十分。先ずはオレから。

 一口かじって分かった、これはパンじゃない。パンとは違うふわふわ感。それで中に肉のあんが見える。ララはたぶんこれに引かれたんだ、見えたとたん、頭の上でぎゃあぎゃあうるさいし。

 無視してあんのところをもう一口。


「あ、辛い。辛い辛い辛い! ララこれ辛い! おばちゃん!」

「そりゃあんた辛口カリーまんだもの、そっちのクモちゃんにはこっちの甘口カリーまんはどうだい?」

「キャー!」


 ララは勝手に受取り食べている。てか頭の上熱い! 迷わず人の頭の上に置くとか、あのおばちゃんひどい! 鬼畜ババア!


 結局オレは2個分払うはめになった。てかおばちゃん、最初から甘口くれたら良かったのに。

 ・・・・・・・・ いや、わざとか。ララが辛いのダメなのを見越して最初に辛口を渡したんだ。甘口を頭の上に置いたのも、オレに渡しても受け取らない可能性があったから。

 策士だなおばちゃん。


 近くにベンチを見つけて座り、ララと甘口カリーまんを膝におろす。

 頭焼けてないかなぁ。それに1週間以上お風呂入れてないんだけど、ララはそんな頭に載ったの食べて平気なのかなぁ。っていうか残ったのオレが食べなきゃじゃん! やだなぁ。

 辛くてつらい、甘くてつらいお昼ご飯を終えて、オレ達は迷宮局に向かった。



 最後まで読んでいただきありがとうございます。


 半端と言うか、「さあ、ここから!」と言った場面ではありますが、情熱が切れたのでここで一旦完結とさせていただきます。楽しんで頂けたでしょうか?

 まだまだ設定や書きたいエピソードが残っているので、何時かまた情熱が再燃した時に続きを書こうと思います。

 その日まで一旦完結と言うことで。

 最後まで拙い文章におつきあい頂き、ありがとうございました。

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