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最後の日

あの日はなんの変哲もない、それでいて特別な週末だった。

しっとりと色付いた空、赤く照らされた彼女の寝顔を横目に、俺は山道を走るバスに揺られていた。

友人から見れば、俺達ほど歯がゆい関係は無いだろう。彼女は俺を愛してくれてるし、俺は少なくとも彼女を愛していた、今ならはっきりとわかる。


しかしそれを一度も口にしたことはなかった。

誰かに関係は?と尋ねられれば「わからない。」の一点張りだ。そんな質問をしてくる人はたいてい、俺達の間に漂うただならぬ空気を察知していて、だからこそ早く収まるところに収まれというのが言い分らしい。

俺だって残り半分の高校生活を名実ともに華やかなものにしたいし、そろそろ関係を進展させることも必要だとは思うが、お互いにこの絶妙な距離感こそが心地いいのだろうとも思う。こんな風に本当は言い訳を探してるだけの自分がいることにも気付いているから嫌になる。


言うべき言葉は分かってた。


「愛してる。」


彼女もこの言葉を心の奥底で待ち望んでいたのだろう。恐怖心はないし迷いもない。そのあとの彼女の返事も分かってるつもりだ。しかしただ単に、恥ずかしさから言い出せずにいたんだ。


そしてその週末も例にもれず、この問題から逃げるための、俺にとって最善の方法を実行した。それは彼女と出かけること。二人きりで他愛もない会話をしている時や、こうして彼女を見つめている時だけは直面している問題を忘れられる。なにより幸せな現実があるんだ。言葉にする必要はない。そう思っていた。


そんなことを思い浮かべながら、俺は窓の外に視線を移した。

道路のセンターラインを追いかけてしまうのは子供の頃からの癖だ。

とぎれとぎれの白線が、前から後ろへと流れてゆく。

そして何か大きな音がした気がしたが、そこからは無音だった。

気付けば白線は消え去り、代わりに冷たい山の岩肌が見えたんだ...

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