2話
木漏れ日が差して目を覚ました僕が最初に見た物は、子供のころに恐竜図鑑で見たような原生林とでも言うのだろうか? シダやワラビなどの植物が多く手付かずのままに生い茂っていた
そんな太古の景色の中に僕はひとり地面に横たわっていた
不思議と状況は把握している。名無しになったけど
まず僕は試したい事があった
それは、本当に死なないのかという事だった
そんな時に運が良いのか悪いのか茂みがガサガサと音がなりその中から体長にして3m程のワニの様な爬虫類がゆっくり出てくる。というかワニだ
敵意が無いのかと思ったが違うらしい、僕を見るや口を大きく開け威嚇する。映画の様に鳴いたりはしない。当たり前か
僕が立ち上がると短足の4足歩行とは思えないスピードで距離を詰めてくる
そして……
僕の首に食らいついた
そのまま引きちぎろうと回転する
肉のブチブチ千切れる音がダイレクトに耳に鳴り響くが千切れたそばから再生していく
ここで分かったのは死ぬほど痛いという事だけだ
やはり僕は死ねないらしい
となると、何時迄も噛み付かれて痛い思いをするのは御免だ
僕はワニの目に指を突っ込んでそのまま掌を入れて中をかき混ぜた
暫くしてワニが痙攣をして動かなくなった
痛みに疲れた僕はそのまま眠りについた…………
「んぅ」
目を覚ましたら当たりは灯りなどは有る筈も無い。闇が広がっている。簡単に言えば夜らしい
隣を見ると色々な生き物が僕が殺したワニを漁っていた
というよりは僕も色々な生き物に漁られていた
虫などは耳や鼻から入り腕や足は爬虫類に噛み付かれている
この森に入る哺乳類は僕だけなのかもしれない
腕や足に噛み付いている小さいトカゲやワニに蛇などを無理やり引き剥がし虫は無理やり耳に枝を突っ込んで殺した
痛みは体の回復と同時に治るようだった
僕はとりあえず喉が渇いた為に水場を探す事にした
死のうとしていても味はしなくても腹は減るし喉は渇く。睡眠はしなくなるけど。
でも、不思議と今日は眠れた。何ヶ月ぶりだろう……随分と懐かしさを覚える程前という事実が残る
右も左もわからないままに森の奥へ奥へと進んでいった
そして辿り着く
辿り着いた先は水が湧き出ている場所。要するに川の始まりだった
そこにはひとつの卵が放置されていた。その卵には50cm程の小さな人が覆いかぶさって寝ている。妖精のように背中には羽根があった
安らかに寝ているが、そんな事も御構い無しに僕は両手で水を掬い顔を洗いそのまま顔を突っ込んで水を飲んだ
人生で一番美味い水だった
飲み終わって落ち着くと卵の上から文句が聞こえてくる
「酷いじゃない! 魔力を注ぎ込んで安定したからやっと寝れてたのに!」
怒られる理由は分からなかったがとりあえず謝ることにした
「ゴメン」
「謝ってくれればいいのよ」
許されたようだったのでもう一度水を飲みその場を離れようとする
「ねえ、聞いてもいい?」
妖精に声をかけられる
「ん?」
「私が見えるのよね? それに言葉も分かるの?」
「見えるし分かるね」
「人間……いや、魔族ね。でも私が見えるなんて……」
「魔族?人間だと思うけど?まあ、なんでも僕は罰で死ねないらしくてね。この世界に来るときに言葉を教えてもらったんだよ。だから君の言葉が分かるのかもね。でもなんで見えるかは分からないかな」
「そんなに魔力を纏った奴が人間な訳ないじゃない。見えるのは多分その右目ね。魔眼になってるよ。ほら」
妖精は水を空中に浮かし薄くのばすと鏡のように僕の前に持ってくる
僕の右目は深紅に染まっていた…………
最後に渡された赤い宝石の様に