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アストガルド・ファンタジー  作者: みゃも
【第三期】、第3章《りなりぃ~》
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-4-

「たっだいまぁ~」

「あら、おかえりなさい、アリス。あら、もしかして真中ちゃん?」

「はい。お久しぶりです、おばさんっ」


「はい、お久しぶりぃ~♪ あと、それから……」

「は、はじめましてっ! 花藤璃奈(はなふじ りな)です。アリスさんとは、同じ高校の同級生で、友達でっ、『ゲーマー』仲間ですっ!」

「こらこら……りなりぃ~…」


 真中が最後の言葉を聞いて困り顔で苦笑ってる。

 それにしても、りなりとは思えないくらいの緊張ぶりで思わず微笑ましくなるよ。


「あはは♪ ゲーマー仲間かぁ、さすがはアリスのお友達ねーっ。ささっ、とにかく中へ入ってってぇ~っ。アリスが同じ年頃のお友達連れてくるとか、うちでは珍しいことなんだから嬉しいの。何か冷たいお飲み物を用意するから、部屋で待っててねーっ」

「あ、はいっ! どうぞお構い無くっ!」

「おばさん、お邪魔しまーす♪」


 それから二人を自分の部屋へ案内しようと階段へ向かってると、誰かがトタトタと勢いよく後ろから走って来てタックルを決めてきたっ!?


 誰かと思えば弥鈴ちゃんだ。


「あ、もしかしてあの時のチビかあー? 久しぶりだなぁーっ♪ お姉さんのこと、覚えてるかあー?」

「…………」


 りなりが笑顔で弥鈴ちゃんの頭をなでなでしながらそう聞くと、弥鈴ちゃんは振り返り見上げ、目が点の真顔でこう言った。


「お前っ、誰だぁ?」

「…………」

「「……」」


 どうやら、りなりは凄いショックだったらしく、その場で見事なほど氷ついてた。



 ◇ ◇ ◇


 わたしの部屋へ入ると、間もなく弥鈴ちゃんもトテトテと素早く入り、いつものように棚からAFセットを取り出し、仮面ライダーポーズをシャキーンと決めてた。


 ……これこれ。


 思わずそれをやりたくなる気持ちは分かるんだけどね? わたしもたまにやってるし。

 間もなく母さんがやって来て、冷茶と羊羮とお菓子をテーブルの上に置いて、「ごゆっくり~っ♪」と笑顔で言い、にこやかご機嫌に出てった。


「それで、コレが今までに試したスキルの一覧って奴かぁ?」

「うん。何か気づくことがあれば教えて欲しいんだけど。どうかなぁ?」

「これだけ試して、どれ一つ発動してないの?」


「うん、そう。自分でも信じられないくらいに全滅でさぁ~っ」


 わたしはノートパソコンを起動し、エクセルで作ったスキル発動表を真中とりなりに見てもらってた。二人に見てもらったら、何か気づくことがあるかな?と思って。

 スキル発動表には、成功も失敗も記録し、出来るだけ精神力を無駄にしないようにしてた。何しろわたしはリフィル貧乏ですからっ!


「う~ん……。見た感じ、これで一度も発動しないという方が寧ろ奇跡というか信じられないくらいだなぁ~……モグモグ」

「だね。本当に悲惨すぎ……ゴクゴク」

「うあっ、やっぱりぃっ!?」


「そうだな……これはかなり悲惨だ。これでまだ発動前に『そのスキルは発動できません』とか出るんなら、救われるんだけど……そうじゃないんだろう? ポリポリ」

「実際には、精神力消費したあとで『ミス』の一言だけだもんねっ? このゲーム……ングング」

「うん。問題はそこなんだよねぇーっ……おかげで思うように開拓が進まないから、かなり参ってるよぉ。モグモグ……」


 そういった仕様は他の職種クラスも同じだから共有できる話題になる。つくづくどんだけ鬼仕様なんだと思うよ。


「最近手に入れたスキル同士の組み合わせは、もう試してみたのかぁ?」

「あー……トレラント・ブレイクは試してみたけど、アルカマアローとメテルフォルセはまだ。あとの2つは合成召還魔法だからさぁ~っ。流石にそれは無いかな、と思って」

「合成魔法同士だと発動しないの?」


「そういう訳じゃないんだけどさぁ、そうなるとかなり精神力使うことになるでしょっ? 幾らなんでもそこまで鬼じゃないだろうなぁ、と思ってさぁ~。あはは♪」

「「…………」」


「えっ? あれっ??」


 わたしがそう言って困り顔に空笑いってると、真中とりなりが顔を合わせてた。


「あのさ、アリス。相手はあの運営だよぉ?」

「ああ、あの運営だけに十分にあり得るよなぁ?」

「あ、わー……言われてみると、確かにッ!」


 これは意外な盲点だった。二人に相談して良かったかもっ!


「となると、え~っと……組み合わせ的にはどうなるんだっけぇ?」

「このエクセル使って、ここから普通に拾ってけばいいんじゃないかぁ? 今からテキトーに切り取って張り合わせてみるから、ちょっと待っていなぁ」


 りなりがそう言って、カチカチとマウスを動かし、必要な箇所だけコピーし張り合わせまとめていった。そうして出来上がった組み合わせパターンを見てわたしは思わず言葉を失いそうになる。



「こ……これっ、発動してくれたら助かるけど。もし発動しなかったらわたし、そこで完全に積むんですけどっ!?」

「仮に発動したとしても、魔聖水の消費量半端ないよね、これっ?」

「…………だろうなぁ。つくづくどんだけSなんだろうなぁ、あの運営は」


「は、ハハ……」

 これが正解だとしたら、とても笑えそうにないよ、コレは。


「これから試すにしても、ここで精神力使いきると決戦開始時間までに精神力回復出来そうにないよなぁ。どうする? 回復系余ってるならいいけど」

「う~ん……そうなんだけど。その時になってやっぱり使えませんでしたぁ~っ、っていうのも困るよねぇ? だから今、可能なら試してみたいかな」

「だけどアリス、昨日壊れた装備品とカムカ実を買い揃えたから、リフィルにもう余裕が無いんでしょっ?」

「え? そうなのかぁ??」


「あ、ハハ……。それっ、正解っ!」

「だったらここで精神力無駄に使うのも上手くないよなぁ? だっていつもギリギリなんだろう?」

「だよねぇーっ」


「……あは、ハハ…」

 それを言われちゃうともう何も言い返せない訳で。


 そんな訳で結局、一か八か決戦の時に試すことに決めた。何にしても仲間って本当に良いよねっ。あれだけ独り悩んでいたことも今ではあっさり笑い話ほどで。しかも、もしかすると解決できたのかも知れない。

 もっともこれが正解なら正解で問題があり、今後前途多難になるのがもうから予想される訳なんだけどね?


 はぁ~っ……。


 今晩決戦ということもあり、真中とりなりは夕方には手をふりふり笑顔で帰ってった。そのあと夕食時になってから気付いたんだけど、弥鈴ちゃんも今晩は居なかった。

 よくよく考えてみたら真中たちが帰る時に弥鈴ちゃんも何故か一緒に満面笑顔で並んで手をふりふりやっていたのを今頃思い出す。


「あー……」



 ◇ ◇ ◇


「ライアスさん、こんばんはぁ~っ」

「お、アリスちゃんいらっしゃい。頼まれていた装備用意しといたよ」


「わおー! ありがとうございますっ!」

「だけど本当にこんなもので良かったの?」


「ハハ……何せ予算が微妙なものでぇ~」


 昨日壊れた装備分の仕入れをライアスさんにお願いしていたのだ。前のよりも性能は更に落ちるけど、無いよりはマシ。

 ライアスさんとは笑顔で手をふりふりそこで別れ、道具屋のボルテさんのところへと寄った。


「こんばんはっ! ボルテさん」

「お、アリスちゃん、今夜は特売だよ~っ」


「わおっ! 特売ぃっ!!」

「カムカの実が一つたったの10リフィル!」


「…………」

 それ、普段の2倍なんですけどぉっ?


「魔聖水に至っては、たったの500リフィルっ!」

「……。すみません、いつもの値段でお願いします」


「えぇ~っ」

 ボルテさんはガッカリそう言うけど、そんな値段で買ったらこっちが破産しますからっ。



 それからギルド拠点へとトテトテ走り向かい中へ入ると、もうみんな集まってた。


「やほっ、みんな早いねーっ」

 わたしが笑顔でふりふり声を掛けると何故かみんな暗く沈んでた。


「あれっ? どうかしたの??」

「ア、アリス……これ」


「へ?」

 カテリナから渡された電子掲示板を見てわたしは驚いた。


「天山と対天山のランカー同士が……っ!?」


 これは、いよいよヤバい展開なのかも知れない。



 【第三期】、第3章《りなりぃ~》おしまい。


 本作品をお読みになり、感じたことなどをお寄せ頂けたら助かります。また、評価などお待ちしております。今後の作品制作に生かしたいと思いますので、どうぞお気楽によろしくお願い致します。


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