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アストガルド・ファンタジー  作者: みゃも
【第三期】、第3章《りなりぃ~》
98/213

-3-

 デュセオルゼ=ヴォルガノフスは、南西シャインティアの首都フェル=ベルから遥か北東に住み着く巨龍王で、このゲームではもうお馴染みのレアボス。

 わたし達はそんな凶悪この上ないヴォルガノたんを速攻で3回も倒し、レアアイテムをようやくひとつだけ拾えた。これを売れば、装備の修理代と失った装備品をなんとか買い揃えられると思う。


「よぉーしっ! 保険は用意出来たなっ。お次は幻聖獣アルケミたん討伐といくかあ~っ」

「えぇっ!? もう今からっ? このあと直ぐに??」


「そんなの当たり前だろう?」

 カテリナさん、今日はやけに力が入ってる。こちらはもうヘロヘロなのになぁ~……。


「アリス、お前を明後日の決戦までに強化するんだからなぁ。例のスキルにしたって、使用方法がまだ不明なままなんだろう?」

「あ、まぁ……そうなんだけどさ。は、ハハ…」


 例のスキルというのは、ついこの前手に入れたばかりの進化型カルマ派生スキル〔メテルフォルセ〕のことで。何回試しても発動しない最高位・召還魔法。最高位スキルだけあって、その消化精神力も桁外れで半端ない。それだけに試すにしてもそんな連続でやるのは簡単なことじゃなく、結果として使用方法は解明できていない。


 カテリナさんはそこでニンマリ顔を明るくイタズラっぽく見せてから口を開いた。


「少しでも余裕があったら試してみろよっ。運良く発動出来たら儲けもんだろう?」

「あ……そっか。うん、それもそうだよねっ!」


 なるほど納得してわたしがそう力強く頷いていると、真中ことマーナが心配顔を見せ、間に入ってきた。


「カテリナ、もう続きは明日でもいいんじゃない? アリスだって、疲れてるんでしょ? それならそれで素直にそう言いなよ。そんな無理する必要なんてないんだからさ」


 マーナが凄い真剣な眼差しでそう言ってきた。わたしは思わずびっくり眼。


「……足手まとい。そうなのかぁ? 本当に疲れているのなら、マーナの言う通り無理はしなくたっていいんだぞぉ?」

「あ、いや大丈夫、大丈夫っ! ぜんぜんっ、疲れてないから!」


 それに、

「今回のことはわたしに責任がある訳だし、実際足手まといな訳だし、メテルフォルセも未だに使いきれてないからもう少し頑張ってみるよ」


 わたしがはにかみながら笑顔でそう言うと、二人は顔を見合せ、それから同じく元気よく笑顔を見せてくれた。


「よっしゃ、いい根性だっ! じゃあーちゃちゃっといくぞぉーっ!」

「おー!」

「おうー! にゃにゃん♪」


「「「にゃにゃん♪」」」



 わたしたちは元気一杯に掛け声を合わせ、アルケミフォス討伐に向かった。



 ◇ ◇ ◇


 幻聖獣アルケミフォス討伐のため、わたし達は《大樹海》の最奥地にやってきた。そこでトレラント・ブレイクを駆使して、どうにかこうにかアルケミフォスを討伐できた。


 ただ、その際に装備の大半が大破崩壊…………ぐふっ!


 今や『幻獣アルケミフォスのサッシュ+3』と『黒龍王の法衣+4』『フォーティナーバングル+7』……これと白銀のマントしかない悲惨ぶり。


 早い話、耐久力のないモノは見事に全滅った。耐久力があるモノにしてもかなりボロボロ…………げふんっ!



 言葉だけでは分かりにくいと思うので、以下に今の装備状況を簡単にまとめてみる。



 

───《アリスの悲惨装備ステータス》───


手:『邪龍神の杖』+4 ⬅これだけは凄い!



頭:ティルフェスモの羽帽子+4 ⬅大破…


胴:『黒龍王の法衣』+4 ⬅中破(ぐふっ!


小手:ティルフェスモリング+4 ⬅大破…


脚:チュラントショース+5 ⬅大破…


足:チュラントレギンス+6 ⬅大破…


腰:『幻獣アルケミフォスのサッシュ』+3 ⬅中破(ぐあっ!


アクセサリー1:『フォーティナーバングル』+7 ⬅小破(フォティたん、お前もかっ!


アクセサリー2:ティルフェスモリヤリング+3 ⬅大破…ぐほっ


───────────────



 大破した装備品は外すまではこんな感じで残骸として表示される。そして外した途端にその場で完全に燃え尽きてしまうので、その寂しさはひとしお……。


 因みに《メテルフォルセ》の使用方法は最後の最後まで未解決のまま、これで解散った。本当に謎のスキルで参るよぉ……。何がどうダメなんだかさっぱりなんだもんなぁ~っ?



 そして次の日も、メテルフォルセの使い方は分からないまま終わった…………ぐはっ!




「はぁ~……。《フェルフォルセ》と同じ2セット枠なので、使い方は同じだと思うんだけどなぁ~っ。何がどうダメなんだか、もはや意味不明過ぎて参るよぉ~っ…」

「仕方ないよアリス、実際見てて大変そうだったし」


 次の日の土曜お昼、《決戦》当日となるこの日。照りつける真夏の日射しを避けつつ、真中と近くのコンビニで待ち合わせ涼みって本屋って立ち読みながら愚痴を聞いてもらってた。


「ありがとう、真中っ! わかってくれて!

さすがに最高位スキルだから、まさかあれ自体がカススキルな訳ないと思うんだけど。何をどう組み合わせても何一つ発動しないから、もう訳がわかんなくてさぁ~…」

「うん、昨日もかなり連続で失敗してたもんね? 少し心配になるくらいだったからびっくりしたもん」


「あはは♪ 実を言うとカムカの実だけじゃ足らなくて、つい勢いに任せて魔聖水まで使っちゃったから。今やもぅ破産状態だしさぁ~……」

「あらら……」


 まあ実際には、昨日もまたみんなの協力で手に入れた黒龍の宝玉を売れば何とかなると思うんだけど。これだけ試して何一つ成果がないというのが、やはりどうも……心配になる。


「──あ、まさかっ!」

「ん? まさか??」


「あの運営のことだから……『実はここだけの話、スキル設定をまだやってないんですよ!』なぁ~んてことは…………まさかないよねぇ?」

「あはは! それは流石に幾らあの運営でも…………あり得るかもっ?」


 真中は最後、真剣な眼差しで悩み顔で言う。


「うっわあーっ、マジですかあ~っ。もしそれが本当だったら、あのゲームそっこーで辞めてやるぅ~っ」

「うんうん、その時は私も一緒に辞めるから安心なさいっ」


 そうやって真中と漫画コーナーでそうやってクスクスと楽しく戯れていると、入り口に花藤さんの姿が見えた。それとなく小さく猫招きでにゃんにゃん手をふりふり振ってみると、向こうもそれに気づいて笑顔で軽く手を振りテクテクとこちらへやってくる。



「よっ! アリスに真中、奇遇だな。お前らもここへ涼みに来たのかぁ?」

「うん、流れとしてはまぁ大体そんなとこ?」

「そうなるのかな? ねねっ、りなりぃ~っ! このあと何か予定とかある?」


「いや、特になにも。家に帰っても弟が面倒なだけだし。親は親で、エアコンの電気代がもったいないから昼間くらい外に出てろ、ってうるさいし」


「「──あっ、それっ、あるあるっ!」」


 そうそう花藤璃奈さんのあだ名がこの前遂に決まった。『りなり』何となくだけどね?

 それにしても……急に本屋に居た男の人たちがりなりを横目に見つめ頬を染め、ソワソワし始めている。その視線の先は、りなりだった。

 だけど、りなりの方はそれに気づいた様子はない。というよりも、まったく気付いていないっぽい? 前にそのことが少し気になって本人に聞いてたことがあるんだけど。


「ん? そうかぁ? これが普通だろう??」


 ……とのこと。きっと、りなり的にはこれが普通なんだろうなぁ? しかも、

「……いや、私はまったくモテないぞぉ?」とガックリ肩を落とし苦笑い言い切ってた。実はモテてること自体、本人は気付いてないっぽい?

 これは友人として、一度ハッキリと教えてあげるべきなのだろうか。


 

 羨ましいッ……と! ⬅(いや、そこ違うっ!



「よっしゃあっ! りなりぃ~っ、このあと何も予定ないんだったら、私たちと一緒しない?」

「いいけど、どこへ行くんだぁ?」

「どこ、って訳でもないんだけどさ。りなりと一緒に居ると、なんか楽しいからねぇーっ♪」


 わたしがそう言うと、りなりは頬を染め目を横に泳がせながら照れくさそうにしてキラキラ上目遣いでこう言った。


「…………アリス」

「ん?」


「悪いけど、私にはそんな趣味はないぞぉ?」

「へ? いやっ! ちょっ、それ違うしっ!」

 

 その意味にわたしは遅れて気がつき、気恥ずかしさから頬を染め慌てそう返した隣で、真中がその様子を見て大いに吹き出し笑い、結局わたし達は本屋に居ずらくなって一緒にクックッと笑い合いながら真夏の暑いギラギラ太陽の日差しの中へと元気よく飛び出し、そこでもまた三人仲良く顔を見合せ肩を並べ大いに笑い合った。




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