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アストガルド・ファンタジー  作者: みゃも
【第三期】、第1章《マイハニー》
89/213

-3-


「ただいまぁ~」

「あら、お帰りなさい、アリス。お祭りはどうだったの? 

…………って、その子は?」


「へ? その子って??」

 急にわたしの背後から弥鈴ちゃんがひょっこりと現れ、母さんにニコニコ顔で頭を深々と下げ挨拶をする。


「はじめまして、おばさまっ♪ 神家弥鈴(かみやみれい)と申します。それにしましても流石はアリス様のお母様だけあって、とてもお綺麗ですねっ!」

「は?」

「あら……あらあら! なんだかとても素直で可愛い子ねぇ~、良かったら中へ上がってって。ささ♪」


 母さんてば頬を染め上機嫌に、すっかり弥鈴ちゃんにやられちゃってる。それにしても……。


「はいっ! お邪魔しまーす♪」

「え? いや、あのっ、ちょっ、ちょっとぉーっ!!」


 弥鈴ちゃんとは確か駅で別れた筈なのに、何で此処にいるのか謎過ぎる。


 そうこう思っている間にも弥鈴ちゃんは嬉しそうにトテトテと居間の中へと入ってゆき、ちょこんと座る。それからわたしに、隣へ座るようニコニコ顔で手招きしてきた。


 わたしは肩をすくめ、弥鈴ちゃんの隣にソッと座り口を開く。


「それにしても弥鈴ちゃん、よくうちが分かったね?」

「そんなのは簡単な理屈ですよ、アリス様。アリス様の家がどこなのかどーしても知りたかったので、コソコソとあとをつけてきたんです」



 ──す……ストーカーですかっっ!?



 いや、可愛いので……まあいっか? 悪気もなさそうだし。


「あらあら、弥鈴ちゃんはうちのアリスのことが好きなの?」

「はいっ! もう大好きです!!」

「………………」


 何だかそういうことを面と向かって言われると、流石に照れちゃうなぁ~。思わず頬が赤く染まってしまうよ。


 母さんはそんな弥鈴ちゃんが気に入ったのか微笑ましく見つめ、お菓子とオレンジジュースをテーブルに置き、にこにこ顔で向かいに座る。


「あ、そうだ。もうこんな時間だし明日は祭日だから、良かったら今晩だけうちに泊まってく? 

あ、でもそうなると……お家の人にも伝えておかないといけないわよね?」

「大丈夫です! 始めからそのつもりで、家に手紙を置いてきましたので!」



 ──い、いつの間にっっ!?

 というか、そんなの書いて置いてくる時間なんてあったっけ?? しかも、何気にお泊まりセットまで用意して手に持ってるし……。


 

 そんな素朴な疑問はあったものの、結局のところ「でも、家の人が心配してるといけないから、念のため連絡しておきましょうね?」と母さんは笑顔で言い、弥鈴ちゃん家の電話番号を聞いて話をつけてくれた。



 それからわたしと弥鈴ちゃんは一緒にワイワイ風呂って、お互いに背中を洗いっこる。



「そういえば弥鈴ちゃん、ずっと気になってたんだけど。わたしのこと様付けしてるでしょ? それさ、辞めよう。せめて、さん付けにしない?」

「──だ、ダメなんですかあっっ?!」


「あ、えーと、ダメってことはないんだけど……なんだか、江戸時代にでもタイムスリップしたみたいな感じがして、なんか微妙だからさ。はは♪」

「…………そうですか、わかりました。ではせめて、アリスお姉さまで…」


「あ……うん。それでいいよ♪」


 なにせ弥鈴ちゃん、たまにあのミレネさんとイメージが被る時があるんだよねー。お二人とも、弓の使い手だからなのかもしれないけどさ。


 そのあと湯船の中に2人で仲良く浸かり、ゆっくりと百まで数えて上がる。だけど弥鈴ちゃんは濡れたまま脱衣所に向かい寝間着を着ようとしていたので、わたしは慌てて弥鈴ちゃんを止め、頭やら体をバスタオルでふきふき拭いて、一緒に仲良く着替え、二階へと上がる。


 既に弥鈴ちゃんの分のお布団も用意されてあった。


 弥鈴ちゃんは嬉しそうにお布団にダイブして遊んでいる。わたしはそんな無邪気な弥鈴ちゃんを困り顔に見つめながらベッドの端に座った。


 そういえばうっかり忘れていたけど、今夜はA・Fに入れそうにないので、わたしは急ぎスマホを使いそのことを岡部くんと太一と真中に事情を含めLINEグループに書き込み伝える。

 3人はそれを確認して、ちょっと驚いたような書き込みを返してきたけど、直ぐに分かってくれた。今日のところは何とかしてくれるらしい。とても助かる。


「…………あ! こ、こらこら!」


 わたしがそうこうやってる間に、弥鈴ちゃんは棚からわたしのEEGセットを取り出して、装着し、仮面ライダーごっこよろしくシャキーンとポーズを決めていたので参る。


 まあもっとも、わたしもたまに同じことをやってるんだけどねぇ~。それにしても可愛いなー! もしも妹が居たら、こんな感じなのかな??



 わたしはそんなことを苦笑いつつも思い、弥鈴ちゃんを微笑み見つめた。





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